マーケティング担当のみなさん、次のような悩みはありませんか?
「MQLは増えているのに、商談化率が上がらない」「セールスから"質が悪い"と言われ続けている」「MA(Marketing Automation)を導入したのに成果が出ない」――。

MQL(Marketing Qualified Lead)とは、マーケティング部門が商談に値すると認定し、セールスやインサイドセールスへ引き継ぐ見込み顧客を指します。リード→MQL→商談化(SQL:Sales Qualified Lead)→成約の流れです。

せっかくパスしたMQLがなかなか成約に至らないのは、B to Bマーケティングにおける暗中模索とも言える、出口の見えにくい課題です。なぜMQLは成約しないのか。そこには、乗り越えなければならない2つの関門が存在するからです。

成約の前に立ちはだかる2つの関門

すべてのMQLが商談化するわけではなく、すべての商談が成約するわけでもありません。

第一の関門:MQLが商談(SQL)へと転換するか
第二の関門:商談化した案件が成約するか

いわば、行く手に閻魔様が二度現れるようなものです。この厳しい閻魔様の審査をかいくぐって初めて、ビジネスは実を結びます。今回の記事では、特に最初の関門であるMQLが商談にならない理由とその対策について深掘りします。

MQLが商談につながらない理由は、大きく分けて「そもそもMQLとしての質が低い」か、「インサイドセールスの選別基準が曖昧である」の2つに集約されます。

MQLの質が低い理由と対策

よくある失敗は、eBookや製品資料をダウンロードした直後の顧客や、展示会で名刺交換したばかりの層をそのままMQLとして即パスしてしまうケースです。ダウンロード直後の顧客は「まだ情報収集の段階」に過ぎず、展示会での接点は「たまたまブースに立ち寄っただけ」の可能性が高いのです。

こうしたリードが商談化する確率も決してゼロではありませんが、極めて低いのが現実です。ここで安易にパスする前に、ちょっと待った!と立ち止まる必要があります。ただ、これらの活動は、タッチを増やすために、無駄な努力ではありません。

この失敗の裏にありがちなのが、マーケティングのKPIがリード数になっているケースです。リード数がKPIだと、数を追求してしまうため、質の低いリードをパスしがちです。

対策としてのリードスコアリング

この課題を解決するのが、MAによるリードスコアリング(Lead Scoring)の実装です。これは、見込み客の役職や企業といった属性や行動を数値化し、自社にとっての理想度や検討意欲を客観的に評価する手法です。

リードスコアリングによって、マーケティングのKPIはリード数ではなく、MQLや作成された商談の数になります。リードスコアリングには主に次の2つの実現方法があります。

方法①:ロジックベースのスコアリング

現在、最も一般的なのが「加点・減点方式」による手動設定です。
・行動評価:資料ダウンロード、ウェビナー参加、展示会での接触など
・属性評価:企業種別、企業規模、業種、役職など

これらを事前に定義し、合計値が一定の「閾値(しきい値)」を超えたものだけをMQLとして認定します。この運用の定石は、インバウンドの問い合わせ(見積依頼など)には一撃で閾値を超える高いスコアを与え、それ以外は複数回のタッチを条件にすることです。展示会の名刺スキャンなどはとても低い点数をつけます。

ただし、ロジックベースは試行錯誤が必要で、運用負荷が高いという側面もあります。最適なスコリングモデルを作るのはなかなかやっかいな作業なのです。

方法②:AI・機械学習による予測スコアリング

今後主流になると期待されているのが、AIを活用した予測スコアリングです。過去の成約データのパターンをAIが学習し、「成約した顧客と似た挙動」を見せるリードを自動的に判別します。

予測スコアリングは、データ量が多い企業には非常に有効で、最近のMAツールでもオプション提供され始めています。手動設定の限界を超える"期待大"のテクノロジーといえるでしょう。

リードスコアリングで同時に重要になるのがリードナーチャリング(育成)です。リードスコアリングでは質の高いMQLしか通さないので、一回のタッチで終わらせず、何度もタッチポイントを作る必要があります。

リードナーチャリングによって、MAによる自動案内やマニュアル対応を含めて、見込み顧客に対して複数のタッチを促します。また、ここでは、どの施策が有効だったかを検証するためにアトリビューション分析(どのタッチがどれだけ貢献したかの分析)を組み合わせるのが理想的です。

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心理を動かすコンテンツ作成の重要性

質の高いMQLを創出するには、顧客の購買プロセスに合わせたコンテンツ作成が不可欠です。AIDMA(Attention:知る、Interest:興味をもつ、Desire:欲する、Memory:記憶する、Action:行動する)などが代表的です。

ここでは、いきなり製品説明をしてはいけません。顧客の購買プロセスに合わせて、未認知から認知、認知から考察、考察から欲求へと、ステージごとに見込み顧客の心理を変化させていく必要があります。

まずは顧客の切実な痛み(課題)をグサッと突き、その解決方法を伝授し、事例で裏付ける。この順序を守らなければ、営業プロセス全体でアンカー効果が働き、単なる安価な製品屋さんだと認知されてしまいます。そして、コンテンツをステージごとに準備することで、複数のタッチを促進できるのです。

B to Bでは、顧客はベンダーに声をかける前に、購買プロセスの57%を終えていると言われています。つまり、リードを獲得した時点ですでに比較競争に巻き込まれている可能性が高いのです。この57%に達する前に、自社をショートリスト(候補)に入れてもらうため、Webやイベントで質の高い課題解決情報を提供し続けることが極めて重要になります。

インサイドセールスの選別基準が曖昧である理由と対策

この場合に最も多い理由は、どのような状態になったらセールスにパスしてよいかという合図が、インサイドセールスとセールスの二者間で合意できていないことです。合意があっても形骸化している場合も多いです。

これでは、インサイドセールス担当者の「なんとなく良さそう」という主観に頼ってしまう、また、セールス側が「忙しいから今は確度の高いものしか欲しくない」など、その時の気分で受け取り基準を変えてしまいがちです。

この対策は、明確なパスのルールとSLA(Service Level Agreement:品質水準)を決めます。パスのルールで一般的なのは、みなさんご存知のBANT情報です。BANTとは、Budget(予算)、Authority(決裁権)、Needs(必要性)、Timeframe(導入時期)の頭文字です。これらのうち、最低限どれを確認すべきかをルール化します。

例えば、「BとAは不明でもNとTが明確ならパスする」などです。セールスはこれを受けて、残りの未確認の項目を確認するのがよいです。また、この条件を満たしたリードは、セールスは必ず受け取り、○日以内に初回接触するという約束事をガイドラインやプレイブックとして文書化します。

他にも、さらに踏み込んだMEDDICC(Metrics:測定指標、Economic Buyer:決裁権者、Decision Criteria:意思決定基準、Decision Process:意思決定プロセス、Identify Pain:抱えている問題、Champion:自社サービスの擁護者)というフレームワークもあります。

BANTをヒアリングするために、さらに詳細なヒアリング項目を定型化するのも効果的です。例えば、Needsのところでは、CEOの交代や合併などの避けられないイベントである「Compelling Event(避けられない出来事)」があるかを確認します。これによって、商談化の確度は飛躍的に高くなります。

まとめ

このように、MQLを成約につなげるためには、マーケティングがコンテンツで心理を動かし、スコアリングでタイミングを計り、インサイドセールスが共通の物差し(BANT)で選別するという、一連の連携、すなわちオペレーションが不可欠です。次回は、第二の関門である「商談化した案件が成約するか」について対策を述べたいと思います。