B to B営業は近年では「チームセリング」と言われる場面も多く、役割としてセールス(人)が営業活動をリードするにしても、マーケティング、インサイドセールス、プリセールスの技術者、法務など、サポートするさまざまな役割の人がコラボレーションし、セールスという一連の流れはチームによる活動になってきています。
チームといえばスポーツを思い浮かべますよね。チームとしての営業活動は、案件の成約やLTV(Life Time Value)の最大化をゴールとして、それぞれの役割の人がボールをつないでいくのです。
なぜ、このチームセリングが大事かというと、英語の書籍『Revenue Operations』(Wiley 著者: Stephen G. Diorioら)では、共通ワークフロー上で売上中心チームを組織化することにより、以下が達成できると述べているからです。
・セールスの生産性が10%から60%改善
・売上が19%から31%改善
・新しいセールスの立ち上げスピードが最大60%アップ
・セールスの退職が75%ダウン
・ターゲット達成の改善
では、具体的なチームセリングをみていきましょう。筆者が以前執筆した記事『外資で実践されるB to B市場のためのフレームワーク「Go To Market戦略」とは』で記載したように、現在のB to B企業では「Go To Market戦略」がセールスやマーケティングの起点となっています。Go To Market戦略では、どの業種に、どのソリューションで、いくら狙いにいき、そのためのリソースがどれくらい必要かを定義します。
それぞれの役割を明確にする「スイムレーン」
B to Bでの営業全体の体制には古くから「スイムレーン」という考え方があり、これがGo To Market戦略の実行には不可欠です。スイムレーンは、プールで泳ぐレーンのように、セールスやマーケティングなどのそれぞれの役割が自分のレーンを必死になって泳ぐことを表しています。要するに、それぞれの役割が明確になっており、プロとしての最高の仕事が求められるということです。
個々の役割を持つ人は決して他の人のレーンには行かず、自分の仕事に集中してパフォーマンスを出すのです。他の人のパフォーマンスを見て、他のレーンに行ってしまいたい気持ちを抑える必要があります。もし行ってしまうと、自分の役割においてのパフォーマンス低下にもつながります。また、本当に必要な役割のリソース量がわからなくなり、適切な投資がされないという不幸な状況を作り出してしまいます。我慢です。
そして、Go To Market戦略から、セールスの組織や個人にその戦略の一部をカスケードダウンすることが重要です。カスケードダウンとは、個々のセールスに、売上に関する目標数字と自分が担当するテリトリー(ターゲットとなる企業のグループ)、そして、使えるお金や人というリソースが割り当てることです。
営業戦略では目標を達成するために、テリトリーでの営業プランを関係者全員で作ります。合宿形式で作ることもあります。これはチーム戦の面での戦略で、ある意味コラボレーションツールになります。このプランがあるので、スイムレーンの体制をとっても、チームとしてコラボレーションができるのです。
そして、そのテリトリーの中で、攻める顧客の優先順位を決めます。面から線への移行です。例えば、以下のような分類をして、優先順位をつけます。
1.すでにパイプライン上に案件があり、期中にクローズすべき企業(見込み企業や既存顧客)
2.毎年検討されるが、意思決定が延ばし伸ばしになっている企業
3.コンタクト情報はあるが、案件が確認できていない企業
4.テリトリーに入っているが、まだコンタクトもない企業
5.コンタクトしているが、当面は案件がないと思われる企業
このうち2~5についてはセールス自身、もしくは、インサイドセールスやマーケティングが分担して案件を作っていきます。近年のマーケティングは、テリトリー内の企業を個別に狙うABM(Account Based Marketing)が主流になっているので、セールスとマーケティングは共通のターゲットに対してがっちりタッグを組みます。
案件ができた後のチームセリング
案件ができた後も、スイムレーンで成約に向けてチームでの活動を実施していきます。この段階ではマーケティングはすでにお役御免で、技術的に案件を支えるプリセールスや、提示価格を算出するディールマネージャ、契約をサポートする法務などが適切な時期にプールに飛び込んで必死に泳ぎ、セールスを支援します。
このためには、パイプラインのステージを明確化して、各ステージでだれが何をして、どういう条件にいけば次のステージに移行できるかを明確に定義します。それをCRMに実装するとより効果的です。
パイプラインとてして案件ができたら、その案件が最重要な場合はセールスがチームをリードして、案件の流れを管理していきます。そのために大事なのは、アカウントプランというターゲット企業ごとの営業戦略です。アカウントプランでは、その対象となる企業のプロファイルや課題、中期経営計画をみて戦略や優先事項などを理解して、また、意思決定に関わる組織や人物の組織図を書き、どのようなアクションと取るか記載していきます。
組織図で大事なのは、どの人が意思決定をする人なのか、社内に営業をしてくる人なのか、社内の事情を話せる人なのか、敵になる可能性がある人なのかを特定し理解することです。
開拓したい戦略的なアカウントに対してもアカウントプランは作成します。アカウントプランは、いわば営業活動の地図です。これはセールスだけでなく、関係者が全員で作る作業であり、チームセリングの基盤になります。アカウントプランはコラボレーションツールの別の一つになります。アカウントプランは以前はPowerPointのような静的なファイルで作っていましたが、ここも近代化されてCRMと連携するクラウドアプリケーションが浸透してきています。
以上のように近代の営業はチーム戦になっており、その中でセールスは強いリーダシップが要求されます。それが勝つための必須条件になっています。頑張れセールス!