宇宙人。ドラマや小説ではすっかりおなじみの存在ですな。しかし、実際は、地球外では微生物すら見つかっていないのです。なのに、最近宇宙人や宇宙生命にからむ、研究活動が活発になっているんですね。なんと、日本でも、国立天文台内にアストロバイオロジーセンター(ABC:宇宙生命センター)が誕生、海外ではFacebookの社長も出資した宇宙探査計画もはじまっています。宇宙人を探すなんて、できる? 最近のお話をまとめてみましょー。
宇宙人。地球外出身の知能をもった生命体のことですな。「地球も宇宙の一部だから、地球人も宇宙人だよー」という人もいて、それが科学者だったり、科学館のお姉さんだったりするわけですが、どーも、納得できないのです。やはり、地球外出身でないとね。ということですね。
日本では1000年も前の平安時代に「竹取物語(かぐや姫)」という、月出身の宇宙人が主人公のお話があるわけですが、世界的には、タコ型の火星人が登場した19世紀末に発表された英国のSF小説「宇宙戦争」が嚆矢ってやつでしょうね。ただ、かぐや姫は、まあ神様が月からやってきたみたいな話ですけど、宇宙戦争のタコ火星人は、火星は引力が小さくて空気が薄く、太陽から遠くて暗いので、足はヒョロヒョロだが耳と目は大きいなんて、ちょっと科学風味の描写があったりするわけですね。
実際「宇宙戦争」が描かれた100年前には、火星にはなんらかの生き物がいると考えられていたようです。50年くらい前の学習まんがでも、火星にはコケくらいは生えているとなっていて、古い本をそのままにしていた図書館で読んでドヒャーと思った次第です。いや、古い本は置いといてほしいけど、最新情報だと子どもが思ったらどうするよってなもんです。
その火星も1976年に、アメリカのバイキング探査機が着陸すると、ひたすら岩だらけの写真が公開されて、コケなんかねーよ、ってな感じになってしまいました。実際、大気が薄い火星では、太陽からの紫外線が非常に強く、細菌をまいても、殺菌されてしまうんですな。その後も、何機もの火星探査機が火星に着陸しているのですが、生命を直接見つけたって話はでてきません。いまは、水ならあるとか、(紫外線の届かない)地中には見込みがあるとかそんな話をやっているところでございます。火星人? いやせめてそれなりの大きさの生命? ウームってなもんでございます。
一方で宇宙人はというと、UFOの流行とともに、世界各地で目撃されるようになるわけですが、どうもある人には見えて、ほかの大多数の人には見えないとか、陰謀のなかにかくされていたりとか、そういう曖昧な存在ってことになってしまい、これまた絶滅危惧種になってしまいましたね。いまどきの子どもに宇宙人といっても、正直、そんなに受けないんですよー(体験者)。
ただ、そんな状況のなかで、科学者は意外と? マジメに宇宙人に迫ってきているのです。UFOで飛んでくるなんてことは考えずに、まずは宇宙人がいるなら、何をするかと考えて、1960年頃からSETIというのをボチボチはじめたんですな。これは、地球人が放送で電波をまき散らしているのと同じように、宇宙人も似たようなことをしているという前提を考えたものですな。宇宙人が発している電波を、大型のアンテナでキャッチしようというわけです。当時急速に発達した、通信技術を宇宙に向けて活用した「電波天文学」の応用でございました。電波天文学そのものは、天体が自然に放射する電波(たとえば雷からも電波は出る)をとらえるというもので、天文学の主要ジャンルになっています。
ただ、SETIをやみくもにやっても、成果はなかなかあがりません。やみくもに宇宙をさぐってもねえという感じです。だいたい、地球のような惑星があるかどうか、その証拠も見つかっていなかったんですな。ということでSETIも、まあ、なかなか本調子にはならなかったわけです。
ところが1990年ごろから、急速に風向きが変わってきました。ひとつは、宇宙に生命体がいる可能性が具体的に高まる発見が相次いだからなんでございます。地球では、深海潜水艇によって、太陽の光が届かない深海の温泉に、豊富に生物がいることがわかりました。400℃の高温でも、有毒な環境でも生きられる生物がいるのです。このジャンルは盛んに研究が続けられています。日本ではJAMSTECの活躍で成果をあげていますな。
一方で、宇宙探査では、地球にくらべてずっと寒い、木星や土星の衛星の内部が、熱くなって、海や湖がありそうなことがわかってきました。これは、衛星同士が引っ張りあうことで、互いに揺すぶられ、加熱することなどが原因になっているようです。有力な候補として木星の衛星のエウロパや、土星の衛星のエンケラドスやタイタンなどがあげられています。環境的には地球の深海に近いものがあるので、期待されるんですね。火星の表面よりよっぽどよいというわけです。
火星の地下もふくめ、こうしたところで実際に生命が発見されるかどうかはもう、実際に宇宙探査機を飛ばして調べればよいというレベルまできています。で、そんな計画もあったりするんですな。NASAのエウロパ計画などがそうです。こうした探査で実際に生命が発見できれば、宇宙でどの程度生命って発生できるのか? というのがサイエンスになるわけです。で、なんと日本でも、国が! アストロバイオロジーセンターを2015年に設置し、こうした研究を推進するようになったのでございます。
さて、しかし、ここまでだと宇宙人に届かないですね。まあ、生命レベルなら希望が見えてきていますが、知的生命というとウームでございます。であれば、太陽系の外ならどうだという話になりますな。実際1995年に、太陽系の外の恒星に、はじめて惑星が発見され、その後、惑星探査専用のケプラー望遠鏡をつかってこれまでに1000個単位! で新惑星が発見されています。なかには、地球と環境がよくにた惑星も発見されていて、ときどきニュースになっていますな。
こうして発見された惑星については、ものによって大気の成分なども調べられます。そうした成分で、たとえば酸素が沢山あれば、それは植物活動によるものだと考えられるわけですな(最近、植物がなくても酸素が大量に発生できるなんて研究がでてきて、そう簡単じゃないようですけど)。さらに、人間が大気汚染をするように、なんらかの影響が大気に現れていれば、わかるんじゃね? という話も具体的にでてきています。ということで、宇宙人の存在証拠を、そんな形でさがすなんて話にもなってきているんですね。なんか地味なイメージですけど、少しずつステージに近づいてきているわけでございますなー。
そういう話がもりあがっているためか、Facebookを作ったIT長者なども、こうしたジャンルに参加するというニュースがでてきました。CNNなどが報じた計画では、著名な科学者のホーキング博士なども参画し、従来の1000倍以上高速な探査機を開発、となりの恒星であるケンタウルス座アルファ星を調べるのだそうです。IT技術をつかって超軽量にした探査機に、日本のイカロス探査機で実証された光帆船技術を使用。強力なレーザー光線で加速し、20年間で太陽系外の惑星などの探査をするというものですね。とりあえず100億円の資金で、技術的な検証をし、最終的には1兆円くらいかかるかもー。という話です。で、最初の100億円をFacebookの社長などが出資するっていうんですな。1兆円というと途方もなく感じますけれど、IT長者の資産は3兆円とか、ビル・ゲイツになると8兆円というレベルなので、まあ不可能ではないのでしょうな。ちょっとため息ですけどね。日本の資産家は、こういうのはやらないのかな? ホリエモンがロケット開発ってのは聞いたことがあるような気がしますが。あ、これですな。
ホリエモンはより実用的なロケット開発のようですが、世界では、なんだか、ファンタジック宇宙人探しが、急速に現実味をおびてきている昨今なのであります。
著者プロフィール
東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。