立秋も過ぎましたが、まだまだ夏。夏といえばヤブ蚊。ということで、今回は蚊取り線香のはなしをいたします。何かのネタにして、夏を楽しんでいただければ。
残暑お見舞い申し上げます。太陽が春分点から135度を通る“立秋”を過ぎ、曆のうえでは秋に入りましたが、まだまだ夏ですねえ。
さて、この暑いさなか、先般の連載第307回の記事から、私、さらに万博経験値をあげて、海外パビリオンは全クリアとなりました。
そうして見てみると、やはり国際博覧会、いままで意識したことがない各国の自然や文化の一端を知ることになります。いやしらんかったよという部分、めちゃくちゃ多くておもしろいですな。
たとえば、ヨーロッパのモナコ公国は、F1グランプリとカジノだけでなく、海洋保護や海洋資源開発に力を入れている海洋国家だなんてこと、私は知りませなんだ(知らなかっただけでその道の人には常識だそうです)。へええ。もちろん、モンテカルロのホテルの一部を持ってきたようなワインバーもよかったですよ。SNSでは、ルクセンブルグは全公共交通が無料であるなんてことが話題になっていましたな。個人的にはバー文化と、ボーリングがおもしろかったけど。
さて、ボーリングのような遊びというと、セルビア共和国でございます。2027年の認定万博(まあ3ヶ月実施の半分規模のミニ万博)の開催が同国のベオグラードということで、気合いが入った立派なバビリオンをかまえております。
テーマは2027年ベオグラード万博の「Play for Humanity: Sport and Music for All(人間にとっての遊び、みんなのスポーツそして音楽)」の導入であるプレイです。ビー玉のピタゴラ装置やら、影絵やら、音声遊びやら、キャラメークやらいろいろな遊び場になっております。遊びこそ創造、そして産業などの源だということでございます。スポーツもプレイ、音楽もプレイということで、こちらもでございますが、いわゆる遊びが全面にでている感じで、子供たち大喜びでございましたな。
ということで、にわかにセルビアに興味を持って、夏のネットサーフィンを楽しんでいたら、おもわぬ日本とのつながりを発見しました。
蚊取り線香は、セルビアに咲く花からやってきた。
これは知りませんでした。
蚊取り線香の発明は、“日本の夏”をCMのキャッチにしていたKINCHOさん、「創業者・上山英一郎、米国植物会社社長H・E・アモア氏に面会、珍しい植物種苗の交換を約束」からスタートだと思っていましたからね。それから除虫菊のタネを入手し、その除虫菊の粉をすでによく使われていた、ノミ取り粉、ついで線香加工をする「蚊取り線香」として売り出し成功。除虫菊の安定供給のために栽培を奨励し、農家を保護しながら……なんて話は、まあよく聞くわけでございます。そして、除虫菊はアメリカ原産だとかってに思っていたのです。
が、おなじKINCHOのホームページに「除虫菊の原産国はセルビア」、とあり、え、そうなの? でございました。14~15世紀に、部屋に飾ってあった枯れた除虫菊の花束のまわりに虫が死んでいたことから、殺虫効果が発見され、広く使われるようになったということなのだそうです。そして、除虫菊を乾燥させた粉を、ノミ取り粉として使われたというお話です。その後、セルビアは除虫菊の大生産地となっていたのですが、日本のKINCHOが国内での生産量を増大し、輸出も行い、ついには追い抜くほどになったのだそうです。
さて、その除虫菊ですが、現在は産業用の栽培は下火になっています。KINCHOなどが除虫成分ピレトリンの類縁物質群ピレスロイドの化学合成に成功し、さらに人体に無害、虫には有害というこれら物質群の研究と量産が行われ、ほぼ取って代わったからです。ピレスロイドは昆虫、魚、両生類などにとって神経毒として強く作用し、人間などにはほとんど作用しないという都合のよい物質なので現在でも使われ続けています。
ただ、ごく一部、有機農法の世界では、農水省のガイドラインでは、「飛んでいる蚊などを処理するのに、家庭用の殺虫剤や、蚊取り線香(化学合成の成分のもの)などを使用することは認められない。」とあり蚊取り線香は禁止なのですが、「化学合成の成分」でなければよいということになり、除虫菊から抽出したピレトリンによる蚊取り線香が、生産されています。
また、ピレスロイドは魚には猛毒でございます。これは天然だろうが合成だろうが同じことで、ピレスロイド系殺虫剤の影響で魚が死んでしまうという事故はチョイチョイ起こっております。
ただ、魚に影響が少ない殺虫剤も当然ながら開発されています。これまたKINCHOさんが開発した「シラフルオフェン」は、比較的魚への影響がすくなくなっています。またフマキラーさんは「エトフェンプロックス」を使った、ヤブ蚊がいなくなるスプレーを作っていますが、こちらもまいても魚への影響は小さいとのことです。
まあ、もう1つの大手であるアースさん、最近存在感のあるライオン、ピレスロイドの合成に最初に成功した住友化学さん、保土ケ谷化学工業さんなどなど、日々研究が重ねられているわけですな。
なお、海外の除虫剤のメーカーはどんなのがあるのか? Copilotに聞いてみたところ、ドイツのBASF、バイエル、アメリカのデュポン、FMC、スイスと中国のシンジェンタなどがあがりました。BASF、バイエルやデュポンは化学産業の王様クラスの会社ですが、手広くやってますね。バイエルは除草剤や組み替え遺伝子製品などで有名になったモンサントの事業を吸収したそうです。いろいろニュースに注意しようっと。
ということで、虫除けはセルビアからスタートし、現在は日本のメーカーも優れた製品を作っているってなこと、調べ学習をいたしました。なお、除虫菊の生産拠点としては、KIMCHOの創業社長の出身の和歌山県は有田市が有名で、現在でも小さな蚊取り線香のメーカーがたくさんあるのだそうです。これまたみかんだけでなくちょっと注目したいなと思った次第です。
ではでは。