前回は航空機をはじめとするプラットフォームのメーカーを取り上げたが、今回は電子機器やミサイルといった中身を手掛ける企業を取り上げる。

電子機器・ミサイルからシステム屋へ

昨今のウェポン・システムでは車輌・艦艇・航空機といった「ドンガラ」よりも、そこに搭載する兵装やセンサーといった「アンコ」のほうが手間がかかり、価格も高い。そうした状況を反映して、相対的にアンコを手掛ける企業の発言力や立場が強くなった。

そして、アンコを主体とする事業から総合ウェポン・システム屋へ業容を拡大してきたのが、レイセオン社、タレス社、L-3コミュニケーションズ社といった面々になる。

レイセオン社の場合、冷戦崩壊後の業界再編に際して、ゼネラル・ダイナミクス社、ヒューズ社、テキサス・インストルメンツ社(TI)からミサイル部門を買収、現在の主力製品はミサイル、レーダー、各種電子機器となる。代表的な製品としては、イージスBMDで使用するSM-3艦対空ミサイル、パトリオット地対空ミサイルなどがある。TIというと半導体屋の印象が強いが、ベトナム戦争の頃にレーザー誘導爆弾・ペーブウェイを開発したのもTIだったりする。

海上自衛隊のイージス護衛艦「こんごう」が、弾道ミサイル要撃試験のためにSM-3ミサイルを発射しているところ。このミサイルはレイセオンの製品(Photo : Missile Defense Agency)

一方、タレス社というと馴染みが薄いかもしれないが、元はフランスのトムソンCSF社だ。オランダのシグナール社(現タレス・ネーデルランド)、イギリスのショート・ミサイル・システムズ社(現タレス・エア・ディフェンス)、オーストラリアのADI社(現タレス・オーストラリア)など、多数のグループ企業を擁しており、ブランディングの共通化を図って現在に至っている。もともとの出自の関係で、特に電子機器に強い。

L-3コミュニケーションズ社は、マーティン・マリエッタ社(ロッキード社と合併してロッキード・マーティン社になった)からスピンアウトする形で発足した企業だが、電子機器メーカーなどを中心として積極的なM&Aを推進し、大手の一角に食い込んできた。傘下には、フライト・シミュレータを手掛けるL-3リンク社、航空機の整備・改造を手掛けるL-3ヴァーテックス・エアロスペース社、民間軍事企業であるMPRI社(Military Professional Resources Inc.)などがある。

システム屋がプライム、プラットフォーム屋がサブ

こうしたシステム屋から発展したメーカーの場合、航空機・車輌・艦艇といったプラットフォームは手掛けていないことが少なくない。その場合、システム系のメーカーが主契約社になり、その下にプラットフォームを手掛けるメーカーが副契約社として入ることになる。

米海軍のLCS(Littoral Combat Ship)計画に応札しているロッキード・マーティン社は造船部門を持たない。そこで、造船所のマリネット・マリーン社などと組んでいる。一方のゼネラル・ダイナミクス社は傘下にバス鉄工所(BIW : Bath Iron Works)を擁しているが、さらにオースタルUSA社(オーストラリアのオースタル社の米国現地法人)も加わる体制をとっている。

米海軍の新型沿岸戦闘艦(LCS)、フリーダム。手前の桟橋に置かれている黒い物体は、機雷探知・処分用の無人水中艇。こうした戦闘システムは、船体やエンジンよりもずっと高価につく。そのため、戦闘システムを手掛けるロッキード・マーティン社が同艦の主契約社になっており、造船所はその下請けという構図になっている(Photo : US Navy)

昨今のウェポン・システムはシステム構築が主体で、プラットフォームはそのパーツという状況になってきている。そうした事情もあり、プラットフォーム専業だった企業はM&Aによる業容拡大で体質強化を図るか、システム屋と組んで足りない部分を補うのが通例だ。

ヨーロッパでは、HDW(Howaldtswerke-Deutsche Werft)やB+V(Blohm + Voss)といった同業者を傘下に入れたTKMS(ThyssenKrupp Marine Systems)は前者、国営艦艇建造所のDCNとタレス社の艦艇建造関連部門を一本化して発足したDCNS社は後者だ。TKMSはシステム関連部門を欠いているように見えるが、実はBAEシステムズ社からアトラス・エレクトロニク社を買収している(EADSと共同実施)ので、問題はない。