みなさん、こんにちは。前回はどんな時に障害が起きているかについて、実例をもとに少しご紹介しました。今回は障害が起きてしまった時に、自分で出来る事、出来ない事を紹介していこうと思います。

「まずは、落ち着いて」

「突然動かなくなった」「間違えてファイルを消した」「初期化した」など、やってしまったときは誰でも慌ててしまうものです。私どもの事務所でも稀に「おわ~」と言うような奇声が聞こえる事もあります。ただ、ここからの進め方でこの後の状況は大きく変わってきます。

例:Shiftキーを押しながら削除を選択した場合、ゴミ箱に行かずに消失します。(通常、サーバのファイルを消す場合も同様のダイアログが出ます)

ここで一番大切な事は、「落ち着いて」の一言に尽きます。何が発生したのか、何をしたのかをまず見直して見てください。ただし、変な音がする、異臭がする場合は直ちに電源を切ってください、火災の危険、物理的な損傷を引き起こす事があります。

次に、状況を把握します。ここで、物理的な不良か、論理的な問題かの切り分けを行いましょう。

明らかに人為的なもの 作業ミスにてファイルを削除した場合など、明らかに人為的な原因にて発生したか?
明らかな媒体の物理的損傷 ハードディスクから異音がする、媒体を認識しない、火災、浸水など明らかに物理的な原因にて発生したか?
不明な場合 起動(通常)の速度が極端に遅くなった、あるファイルが無いと出て止まってしまう、突然未フォーマットと出るなど、どちらか判別がつかない

状況把握後の処置

落着いて考えた結果、明らかな物理的障害と判定した場合ですが、自分で出来る事はほとんどありません、私どもような復旧業者にお任せ頂くのが最も賢明な方法と考えます。

ハードディスクの場合は、外部基板の交換で直る事があるとネット等で書かれていますが、5-6年以上古いものならその可能性も高かったのですが、最近のものではメーカー、機種によっては交換した側の基板も破損する物が存在します。また、起動動作を繰返す事により、どんどん状態が悪化していく可能性が大きいことを覚えておいて頂ければと思います。

論理障害(人為的な原因)の場合ですが、必要とするデータの所在についてよく思い出してみてください。ファイルを入れているフォルダの場所を勘違いしている場合もあります。 

削除した場合

サーバのデータを削除してしまった場合については、サーバ管理者の方が設定していない限り、即時にファイル情報(以前のコラムの目次部分)が消去されます。それに伴い、ファイル本体部分も他のファイルが書込まれる度に上書きされてしまう危険があります。

全社で使用中のサーバを停止するのは非常に困難かと思いますが、管理者の方と至急に相談されることをお勧めします。 

クライアントに入っていた物を削除してしまった場合は、直ちに使用を中止してください。その後、私どもような業者に相談頂くか、データ回収ソフトを使用し、自身で回収を試みるかを判断していただければと考えます。ただし、そのクライアントにデータ回収ソフトをインストールすると、削除したデータ部分にデータ回収ソフトのファイルが書き込まれてしまい、それが原因で回収不能になってしまう可能性があります。また、フォルダ全体の削除などで、複数のファイルを削除してしまった場合は、ソフトを使って回収したファイルは、別のドライブに書き込むようにしないと、回収したファイルが、これから回収する必要のあるファイルのデータ部分に書き込まれ、回収不能になってまうこともありますので、注意が必要です。

初期化した場合

サーバのボリュームを初期化する事はほぼ無いかと思いますが、初期化した時点であれば回収出来る可能性はあります。クライアントについても同様で、初期化だけであればかなりの確率で回収が可能です。

デジタルカメラ等で使用しているメモリーカードについては、カメラ上で初期化した場合、メーカーによってはすべての部分を上書きしてしまい、全くデータが残らない物がありますので注意が必要です。メモリーカードの規格上では、全くデータを残さないことになっていますが、バッテリーの寿命を長くするなどの目的で、データを残すようにしているものがあるのが本当のところなので、メーカーや機種、場合によっては製造時期によっても状況が違ったりします。

作業について自信が無い場合は、業者の方にお任せするのがいいでしょう。

データ回収ソフト

数社からデータ復旧ソフトと呼ばれている物が販売されています。今回は弊社取り扱い商品である「EasyRecovery」をもとに説明しようと思います。

まず、既に書いたように「データ回収ソフトを回収するファイルが入っている場所(ドライブ)に、ダウンロード/コピー/インストールしてはいけません。これはお約束として必ず守ってください。同じ場所(ドライブ)にインストールしたり、回収したいデータを上書きしてしまう事があります。

厳密に言えば、PCの停止や再起動を行っただけでも、レジストリファイルや仮想メモリ(スワップファイル)の更新により、必要なデータが上書きされてしまうこともありますので、別のPCにつないで作業することが必要です。

媒体が内蔵ハードディスクでOS起動用の場合 OSが起動しないと当ソフトは使用いただけません。PCよりHDDを取外し、他のPCへつないでください
HDDのインタフェースとPCのインタフェースが違う場合
(パラレルATA,シリアルATA等)
変換基板を使用するか、USB外付けの拡張BOXを使用してください

インタフェース変換ボードの一例

変換ボード使用例(IDEポートへのSATAドライブ接続)

「EasyRecovery」による回収手順

・PCを起動し、接続したハードディスクが見えているか確認します。
・「データ復旧ソフト」を起動します。
・ソフトの指示に従い、ファイルを回収します。
(本ソフトウェアには「DATARECOVERY版」と「PROFESSIONAL」があります。簡単な構造破損の場合はDATARECOVERY版をお使い下さい。なお、無料で検査・回収可不可の判定まで可能なトライアル版が弊社WEBサイトよりダウンロードできます。

オントラックEasyRecovery プロフェッショナル版の起動画面

データリカバリ(回収)メニュー画面。上記各メニューの内容・詳細な使用方法はWEBサイトよりダウンロードできますのでそちらをご覧ください。大まかに紹介するとと、上記メニューより削除回収、初期化(FORMAT)後回収、ファイルデータ内部検索による回収、ユーザ設定による解析・回収を行う事ができます。

・回収後、必要な処置がある場合処置を行い、元のPCに繋ぎファイルを戻します。

サーバ(RAIDを含む)の場合

サーバで削除・誤操作にてファイル構造破損等が発生した場合は、可能な限り早く停止させる算段を取って頂きたいと思います。実際問題として稼働中のサーバを停止させるのは困難かと思いますが、アクセスされている訳ですので、書き込みが発生する度に上書きが進行してしまう事になります。

RAIDの場合ですが、ドライブの故障か、システムまたはファイル構造の破損かの切り分けが難しい所もありますが、こちらも早めに停止させ、LOGファイルなどを参考に落着いて切分けを行った方が、いい方向へと行くものと考えます。

サーバ・RAIDに関しては、弊社の場合はサーバに各ドライブのイメージデータを回収し処理を行いますので、読み出し終了後に先にドライブを返却し、サーバ再構築と同時進行する事が可能です。

どちらだか判然としない

このケースが悩んでしまうケースです。今までの経験上、このケースの場合軽度の物理不良である事が多いです。ただし、中には同じ症状でファイルが壊れていた事もあります。

よくご相談頂く事例として、「Windowsが起動しない」ということがあります。ここでの「起動しない」の意味ですが、「黒い画面で*.DLLファイルがありません」と出るとか、「起動中に青画面(ダンプ画面)になって止まってしまう」などを指しています。みなさんはこの情報からどちらの原因と推定されますか? 実際問題として物理・論理両方の不具合が存在しています。論理的な破損(本当にファイルが破損してしまった等)であれば何度もトライできますが、OS起動に必要な領域が物理的に読み出せない状態に陥っているとどんどん状況が悪化してしまう事が考えられます。

以上、取りとめも無く書き連ねてきましたが、一番大事なのは「一呼吸置く」事かなと個人的には思っております。次回は立場上書いて良いのか? と思いつつ 「データ破損を防ぐには」を予定しています。

(ワイ・イー・データ オントラック事業部 尾形)

ワイ・イー・データ オントラック事業部

1994年末、データ復旧サービスの世界最大手である米オントラック社と独占的技術導入契約を締結し、ストレージ機器の製造・開発技術・経験・設備を活かしたデータ復旧サービス事業に進出。1995年、国内で最初のデータ復旧専用ラボを埼玉県入間市に開設し、国内及びアジア地区の拠点として、デジタルカメラ用メモリーカードからHDD、大規模サーバ、NAS等データなどの復旧サービスを提供している。業界で唯一の東証上場会社でもある。
参照:ワイ・イー・データ データ復旧サービス