今日の企業にとってデータ活用が競争力向上のカギとなっていることは言うまでもない。BIは企業のデータ活用を支える有用な手段だが、BIに対し「コストが高い」「システム構築に時間がかかる」「導入したらIT部門の負荷が高くなる」などのイメージを持っている人も少なくないだろう。本連載では、ビジネスパーソンが簡単かつ自由自在に分析できる環境作りのコツについて考えてみたい。

BIに必須とされている要件定義やキューブ作成のためのチューニングといった作業がすべて不要なデータ分析ツールが「QlikView」だ。同ツールはIT部門の手を煩わせることなく、ビジネスパーソンが誰でも自由にデータ分析を行える環境を提供してくれる。今回は、BIに苦手意識を持っている人、懐疑的な人にこそ試して欲しいツール「QlikView」の特徴を紹介しよう。

「遅い」「不自由」――従来のBIツールの課題をすべて解決

クリックテック・ジャパン 代表取締役社長 垣田正昭氏

的確かつ迅速な経営判断を行う際、業績をはじめとする各種データの分析は必須だ。したがって、経営の観点からデータを分析できるツールとして国内でも導入が進んだBIだが、実際に使いこなせている企業はそれほど多くない。

BIの利用を難しくしている原因の1つは、エンドユーザー(例えば、経営層)が、生の明細データから分析結果を目にできるダッシュボードを構築するまでに膨大な手間と時間が必要な点だ。

これまで、BIは経営層のためのダッシュボードと考えられてきたが、それを作るために、IT部門や経営層を支える部門は多大な苦労をしてきた。例えば、分析を行うにあたり、複数のデータから用いるデータの組み合わせを決定してキューブを構築するまでに、さまざまな検討とチューニングを行わなければならない。

さらに調整が終了しても、最新の明細データからの加工には一定の時間が必要である。IT部門が長時間かけてダッシュボードを構築して、ようやくエンドユーザー(例えば、経営層)が見れたとしても、その時には違った視点が必要になることが一般的だ。その新たな視点にあわせたダッシュボードを構築するためには、またデータの調整・加工が必要となる。

「そもそも、どの切り口でどんなデータを組み合わせれば効果的な分析ができるのかがわかっていれば、時間をかけてBIツールを使う必要はありません。効果的な分析を行うには、手探りでキューブを作り、検証しては何度も作り直すことになります。なかには、6年の歳月をかけても、満足に使えるレベルのBIシステムを構築できなかったという企業もあります」と、クリックテック・ジャパン 代表取締役社長である垣田正昭氏は語る。

BIは本来、経営層だけでなく、企業の中のあらゆる社員が自身にとって必要な判断をするために使われるべきものであるはずだ。しかし、前述したように、従来のBIツールは時間と手間がかかりすぎて、これを実現するのは至難の業なのだ。

こうした背景より、データ分析において唯一使えるツールが「Excel」だった。実際に、多くの企業がいまだにExcelを使っているという現状がある。というのも、Excelは要件定義を行う必要がなく、データを入力した後に自由に角度を変えてデータを見ることが可能だからだ。しかし、Excelは大量のデータを扱うことはできず、かつ、Excelで分析データを見る場合は生の明細データをリアルタイムで見るわけではないため、「そのデータがいつ作られたものなのか」という時間的な信頼性が低い。

連想技術とインメモリ処理で超高速分析を実現

QlikView最大の特徴は、データを読み込んでからグラフなどにするまでの高速性と、それにより実現する情報探索の自由度である。製品としての高速性を生かし、画面を操作するその瞬間に、その場で生の明細データから必要な情報が表示される。よって、あらかじめどのようなグラフを見たいかなどを決めず、現場で、見たい視点や分析軸によって表示を切り替えたり、グラフを作ったりすることが可能だ。ちょうどExcelがデータを入れてから見方を考えられるのと同じ感覚だ。

「『どんな種類の弁当がどの地域で売れているのか』という切り口でキューブを作り、思うような結果が出なかったとしましょう。次に弁当の価格帯と地域で分析しようと考えた場合、従来のBIツールではキューブの作り直しまで戻らなければなりません。しかし、QlikViewにはキューブという考え方がありません。生の明細データを直接引き出して、その場で高速計算し、分析します」と垣田氏。

特許取得済みの連想技術により、QlikViewはデータの保持方法が他製品と異なる。重複するデータを排除しつつ、残った固有のデータ同士を物理ポインタで結びつけておくことで、元の明細データを欠落させずに10分の1程度にまで圧縮している。これにより、2GB程度のメモリを搭載したノートPCでも十分に数百万件レベルのデータを扱うことができる。

さらに、この圧縮データをメモリ上で扱っていることにより、高速な処理速度を実現する。従来のBIツールはHDDにデータを格納し処理を行っているが、メモリはHDDよりも処理速度が速い。高速に処理できるメモリにすべてのデータが格納されているため、待ち時間が発生しないのだ。

垣田氏は、「QlikViewでは、重複するデータを1つしか保持しません。例えば下図のように、色の項目に赤という値を持つデータが3つ、車種の項目に普通車という値を持つデータが5つあったとしても、この時、赤という値と、普通車という値は、それぞれ1つしか保持されません。しかし、それぞれの固有のデータとそれに関連する固有のデータとを連想技術によって双方向で結びつけるため、明細をそのまま保持しているのと同じ状態なのです」と、同社のウリである連想技術について語る。

連想技術の仕組み

1ユーザーなら無償ですぐに使える

QlikViewの採用によって最もメリットを享受できるのは、一般のビジネスパーソンだ。事前の要件定義やキューブ作成が不要なため、IT部門に負荷をかけることもなければ、BIツールが複雑で使いこなせないと感じていた人たちにもぴったりだ。

1度データをQlikViewに取り込んでしまえば、エンドユーザーは自在に切り口を変化させながら分析を行うことが可能だ。処理が非常に速いこともあり、思いつきを次々と試しながら結果を探っていくこともできる。

しかも、分析結果を共有しないスタンドアロンで利用できるQlikView Personal Editionは、無償でフル機能を無期限で使用できる。機能制限はデータ共有機能のみであり、自身のPCにデータを読み込んでローカルで使う分にはすべての分析機能を利用可能だ。レポート機能やグラフデータのエクスポート機能も利用できるから、分析結果をExcelやPowerPointに貼り付けて提案書や報告書に活用することもできる。

「Excelを駆使してデータ分析に取り組んでいる方にぜひQlikViewを試してもらいたいですね。すでにExcelで利用しているデータがあるなら、それをそのまま使ってみてください」と垣田氏は勧める。使用してみれば、QlikViewでは、HDDに保存したデータをExcelで扱うよりもずっと軽快に多彩な分析を行えることがわかるはずだ。

モバイルデバイス対応で広がる活用シーン

QlikViewの利用が有償となるのは、グループで本格的な利用を行う場合だ。例えば、自分以外のユーザーが作ったデータを共有・閲覧するには有償のアカウントが必要になる。サーバのメモリ上に展開したデータを用いた分析を多人数で行う際も有償となる。有償のアカウントはブラウザ上での分析作業にも対応している。

「外出先からネットワーク越しにデータを読み出し、その場で分析することも可能です。また、モバイル対応も始まり、有償アカウントを持っているユーザーなら追加料金なしでiPhoneやiPadなどからも利用できるようになりました」

前出の6年かけて満足な結果にたどり着けなかった企業がQlikViewを利用したところ、8週間で満足の行く結果を出せたという。また、スウェーデンやイスラエル警察はQlikViewで犯罪データを分析することで犯人逮捕につなげたという例もある。企業の経営指針を決めるための分析だけでなく、手持ちのデータを多角的に検証することで新しい結果や気づきを得ようとするすべてのビジネスパーソンにとって、QlikViewは有効なのだ。