幼稚園・保育園の行事写真の撮影から販売まで
幼稚園や保育園で行事があると、カメラマンが同行して撮影を行い、数日後にカメラマンが撮った写真の販売が行われるケースが多い。以前は、廊下の壁に張り出された写真を確認して番号を控えて発注するという方法が主流だったが、近年は異なる方法が増えている。
それは、携帯電話やPCなどからインターネット上で写真を確認し、そのまま購入できるという仕組みだ。発注ミスも少なく、じっくりと選ぶことができるうえ、価格が特別に高くなることもない。プリント写真に加えてデジタルデータも購入できるなど、現代的な感覚で利用できるサービスだ。関東において、この分野の市場でトップシェアを誇っているのが千だ。
千株式会社では、写真サービス「はいチーズ!」を7年前から提供しており、この分野の開拓者的存在だ。顧客は幼稚園や保育園が主体だが、独自に撮影・販売ビジネスを行っている写真館向けに販売システムのASP提供も行っている。
「はいチーズ!」は、千が自社で擁しているカメラマンを契約した幼稚園や保育園の行事に派遣し、撮影から販売までをトータルで行う。カメラマンの派遣費用や撮影費用、システム利用料などを利用団体が負担することはなく、あくまでもエンドユーザーによる写真の購入費用だけでまかなうのが特徴だ。
顧客&営業情報共有のために導入したSalesforce.comに不満
ASPでの利用も含めて、「はいチーズ!」のユーザー数は1,500団体だが、さらに顧客を増やすべく、千では営業活動を積極的に行っている。
「電話営業が主体なのですが、異なる担当者が同じ幼稚園や保育園にそれぞれ電話をしてしまうといったことが起きていました。そのため、情報共有の必要性を強く感じていたのですが、なかなかうまく行かず、悩んでいたところに出会ったのがZoho CRMです」と語るのは、広報を担当する室根大作氏だ。
千では、以前からExcelを利用したデータ管理を行っていた。しかし、ここでは個々人が営業記録を残すことが主体となっており、営業チーム内での情報共有は行われてこなかった。そこで最初に導入したツールが「Salesforce.com」だったのだが、1年ほど利用した結果、Zoho CRMへの乗換えを決断している。
「料金が高いにもかかわらず、使いこなすことができなかったことが乗換えの最大の理由です。実は、現場からはSalesforce.comの処理速度が遅くて使っていられないという声が多かったのです。結局、"普段はExcelで入力しておいて時間がある時にSalesforce.comにコピーする"といった使い方になってしまい、当初の目的だった情報共有は実現できていませんでした」と振り返るのは、営業本部の飯島明日香氏だ。
飯島氏は営業本部全体のシステム面をサポートする役割を担っており、Salesforce.comのチューニングなども依頼していたが、思うような速度にはならなかったという。
機能面ではSalesforce.comと同等でありながら、もっとスムーズに利用できて安価なもの――この条件で新たなサービスを探すなか、2011年秋頃に出会ったのが「Zoho CRM」だったというわけだ。
ほぼ1人、1~2ヵ月で移行作業を完了
「1ヵ月の試用期間があったので、いろいろと試してから乗り換えることができました。Zoho CRMを使い始めてみたところ、Salesforce.comで感じていた速度の問題はまったくありません。コストも従来の半分程度になったと思います」と飯島氏は語った。
移行作業は、ほぼ飯島氏が1人で行っている。移行期間は1~2ヵ月程度だったそうだが、まだ完全に移行しきれていないという印象もあるようだ。
「わからないことはフォーラムで質問しながら進めました。質問すればすぐ答えが返ってくるので、作業自体はそれほど難しくはなかったですね。ただ、終わったつもりでも、作業の漏れが見つかるので、フォローしながらの利用している状況です」と飯島氏。
特に難しかったのは、商談の詳細な記録だという。これはCRMにおいて重要な情報だけに手作業での移行などでフォローを行った。「できれば他サービスからの移行ツールなどがあるとありがたいですね」と飯島氏。
機能改善にも期待しつつ工夫して活用
千では、Zoho CRMに活動履歴という扱いで稟議の情報も入力するなど、多彩な情報を集約させている。利用団体側の年間行事予定などはPDFファイルにして顧客情報に添付することで、現場に派遣されるカメラマンも参照できるような工夫をしているという。
「Zoho CRMはSalesforce.comが備えている機能はほぼありますが、スプレッドシートを利用してきめ細かに情報を管理できるのは、Salesforce.comにはないよい機能だと思います。一方、Salesforce.comではできたのにZoho CRMではできないことは"更新された情報などのメール通知"で、ユーザーとして登録したアドレス以外のアドレスを自由に登録して送信することですね。今は個別メールで対応していますが、カメラマンなど多くの関係者に同報したいので、この機能はぜひ提供してほしいと思っています」と飯島氏は語る。
Zoho CRMでは、Web上でインタラクティブな表計算シートを作成、共有できるツール「Zoho シート」 と連携することができるため、商談などのデータのメンテナンス性が高い。
まだ導入初期段階であり、十分な活用に向けては課題も残っているが、Zoho CRMのコストや使い勝手には十分満足しているようだ。また、成長途中のサービスであることから、機能追加などへの期待も大きく、今後の活用が期待される。