Copilot in Windowsの連載は今回が最終回だ。最終回は「Copilotの未来と展望」をテーマとし、これまでの連載を振り返りながらCopilotがどのように進化し、どのようにユーザーの体験を変えてきたのかをまとめる。また、今後のアップデートや新機能の可能性、AI技術の進化がもたらす未来についても考察するとともに、他の生成AIツールとの比較や、ユーザーにとってのCopilotの位置付けを再確認することでシリーズ全体の締めくくりとする。

連載「Copilot in Windowsを使ってみよう」のこれまでの回はこちらを参照

Copilot in Windows/Edgeでできること

本連載ではこれまでCopilot in Windowsについてまとめてきた。連載後半ではMicrosoft Edgeで使うCopilotにも焦点を当てている。これまで取り上げてきた主な内容は次のとおりだ。

  • Copilot in Windowsの登場、説明、インストール方法
  • Copilot in WindowsによるWindowsの操作や設定変更
  • Copilot in WindowsによるWebページ内容の要約、翻訳、校正支援、自動化方法
  • Copilot in Windowsによる画像生成、ロゴ生成
  • Copilot in Edgeの説明
  • Copilot in Edgeを使ったインターネット検索、要約生成、動画概要生成、オンラインショッピング、論文読み
  • 他の生成AIチャットサービスとの簡単な比較
  • Copilot

    Copilot

Copilot in WindowsとCopilot in Edgeでできることはとても似ている。どちらも汎用生成AIチャットサービスが基盤としてあり、前者はそこに多少のWindowsの操作や設定変更ができるようになったもので、後者はMicrosoft Edgeで閲覧しているWebページとの連携を強化したものと考えることができる。

登場以降それほど変わらないCopilot in Windows

Copilot in Windowsの発表当初、MicrosoftはCopilot in Windowsを使うことであたかもWindowsを自由自在にCopilot経由で動作できるようになる、設定変更できるようになるといったニュアンスを含ませていたが、連載開始以降2024年9月中旬までの段階では、そうした操作が実現することはなかった。Copilot in Windowsが一般公開されるようになってから最初はそうした取り組みが見られたが、結局現時点(2024年9月中旬)でも実現していない。Copilot in Windowsから操作できるWindowsの内容や設定変更は限られている。

一方でMicrosoftはMicrosoft 365といったプロダクトとCopilotとの統合を積極的に進めている。Copilot in WindowsもCopilot in Edgeも無償で提供しているサービスだ。Microsoftとしては無償で提供しているこれら生成AIチャットサービスの機能は最小限に抑え、よりエンハンスドな機能はMicrosoft 365といった有償プロダクトに投入していくというのは営利目的の企業として当然の選択と言える。

現状を見る限り、この状況はしばらく変わらないように思える。ライバルと言えるOpenAI ChatGPTやGoogle Geminiの無償版が大きく機能の引き離しを実現しない限り、無償で提供されているCopilot in WindowsやCopilot in Edgeも現状からそれほど大きく変わることはない可能性が高いだろう。

Copilotの進化とその影響

インストールと使い出すまで

Copilot in Windowsは徐々にロールアウトしていき、現在では新しいパソコンでは当然有効になっているし、既存のパソコンであってもその多くでCopilotが機能するようになっている。Windowsで生成AIを使うことができるというのは当たり前というところまで状況は変わった。

環境によってはタスクバーにCopilotアイコンが表示されないものもある。その場合でもMicrosoft StoreからCopilotアプリケーションをインストールすれば似たような使い方ができる(なお、その場合にはアプリのCopilotからWindowsの操作はできない)。

Edgeでの新しい使い方

喧伝されていたほどは機能が実現しなかったCopilot in Windowsだが、Microsoft Edgeに統合されているCopilot in Edgeの方は少しずつ使いやすくなっている。インターネット検索との親和性は向上し、最近では特定のビデオの要約も生成できるようになっており、表示しているPDFの要約も生成することができる。Microsoft EdgeにとってCopilotはなくてはならない存在になったと言えるだろう。

  • Copilot in Edge

    Copilot in Edge

主要Webブラウザにおいて生成AIチャットサービスのUI/UXを全面的に統合しているのは今のところMicrosoft Edgeのみであり、大きなアドバンテージになっている。

他のAIツールとの比較とCopilotの独自性

Copilotの特長と強み

Microsoft CopilotはOpenAIに出資している立場にあることから、技術的にOpenAIと近しいポジションにある。OpenAIが投入する新しい技術はCopilotでも使えるようになっていく可能性が高く、その面で言えばCopilotは常に最先端の生成AIサービスが使える状態になりやすいと推測することができる。

そうしたCopilotと他の生成AIとの最大の違いは、CopilotがMicrosoftの製品やサービスと統合されやすいという点にある。すでにMicrosoftは同社のポートフォリオの多くにCopilotの機能を統合しており、さまざまなシーンで生成AIを活用した機能が利用できるようになっている。Copilot最大のポイントはここにあると言えるだろう。無償で使えるCopilot in EdgeもいわばこうしたMicrosoft製品とCopilotの統合のひとつであり、現在の主要Webブラウザの中で生成AIとの連携という面では頭一つ抜きんでている。

Google Geminiとの違い

GmailやGoogleカレンダー、Google Meet、Googleドキュメント、GoogleスプレッドシートなどのGoogle WorkspaceといったGoogleのサービスとの連携は、CopilotよりもGoogleの生成AIであるGeminiの方が統合が優れている。当然ながら各社はそれぞれのサービスと生成AIの統合を進めており、その会社のポートフォリオにおいて力を発揮する方向へ舵を切っている。

GoogleもMicrosoftも生成AIに関しては同じようなポジションにあるように見えるが、両社にはビジネスモデルから根本的な違いを抱えている。Googleはインターネット検索が大きな収益源になっているため、生成AIサービスを前面に押し出してインターネット検索を回避してしまうと広告収入が得られなくなるという問題を抱えている。Googleが依然としてChromeにGeminiを統合しない点にもそうした姿勢が表れているように見える。

一方、Microsoftにはそうした問題がない。良くも悪くもMicrosoft Bingのシェアは低く、Microsoft BingからEdge in Copilotにユーザーが移行してもMicrosoftにとって大きな痛手にならない。むしろCopilotを通じてBingの認識が向上することでよい効果が期待できる可能性もある。

トップを走るOpenAI

MicrosoftやGoogleのように既存製品やサービスといったポートフォリオを持たないOpenAIだが、生成AI技術としてはOpenAIが頭一つ抜きんでているのが現状のように思える。OpenAIの提供する生成AIはなんといっても汎用性が高く、会話によって多くの問題を解決することができる。これひとつあれば専用の生成AIは必要ないというケースも多く、その有能さが際立っている。しかもOpenAIは今後もChatGPTの性能を向上させる可能性が高い。

MicrosoftやGoogleのようにサービスとの統合という面では弱いが、それを超える実力があるのが現在のOpenAIというポジションだと言えるだろう。

Copilotの改善の余地?

生成AIそのものの性能を向上させるというのは各社が当然取り組むことだと思うので外すとして、それ以外の面で今後のCopilotに求める改善点というと、やはりCopilot in WindowsにおけるWindows操作性の向上ではないだろうか。Microsoftの発表当初、多くの方がCopilotを使ってWindowsの操作や設定変更ができるようになると期待したのではないかと思うが、未だにそれはほとんど実現していない。設定アプリケーションは便利になっているが、それでも会話で設定を変更してもらえるならその方が面倒が少ない。ぜひとも実現してほしいところだ。

Copilotの将来展望

リアルタイム翻訳機能

翻訳機能は現時点のCopilotも提供しているが、今後さらに対応する言語の数が増えるほか、リアルタイムで翻訳する機能が強化されていくことが見込まれている。特定の業界向けに翻訳機能の強化が図られることも考えられ、オンラインミーティングや国際会議のようなビジネスシーンでの利便性が向上する可能性がある。どの時点で実現するかは分からないが、複数の自然言語が飛び交う国際会議でリアルタイム翻訳などが実現する可能性があるだろう。

ビデオ自動要約機能の拡張

すでにCopilotは動画コンテンツに対して要約を生成する機能を提供しているが、現時点では要約を生成できるビデオコンテンツに制限があり特定の条件を満たしている場合に限られている。今後はこの機能がさらに拡大され、要約を生成する対象が拡大することが予測されている。記録したオンライン会議からの議事録作成や、セミナー動画からの要約資料の作成などがより簡単になるものとみられる。

現在であれば動画コンテンツの要約を作成するには人間が動画を閲覧し、内容を理解し、そこから要約をまとめる必要がある。しかし、テキストコンテンツと同じように動画コンテンツに関してもCopilotが要約を生成することができるようになれば、その手間をかなり削減することができる。2時間や3時間の発表動画などの要約作成が自動化できれば、かなりの時短を実現することが可能だ。

Microsoftアプリケーションとの連携強化

有償サブスクリプションの一環として提供されるCopilotについてはMicrosoft 365やTeams、Outlookなどの生産性ツールとの統合がさらに進むことが予定されている。特にリアルタイム性の高い機能との統合が進むはずで、例えばMicrosoft Teamsでの会議中にリアルタイムで要約の生成やアクションの提案、フォローアップの実行が行われたり、Outlookメールの内容をリアルタイムに理解してスケジュール焼成や返信作成などを行ったりする機能の強化がなされるものとみられる。

Microsoftがどこまで無償のアプリケーションやサービスへこうした機能をバックポートするかは分からないが、他のベンダーの動きを見ながら多少なりとも無償版へのポートも行われていくものと考えられる。

マルチモーダルの強化による生産性の向上

現在の生成AI技術はマルチモーダルの強化へ向かっており、テキストのみならず画像、音声、動画といった異なるデータを同時に扱えるようになっている。この機能は今後も強化が進むものとみられる。

こうした機能はMicrosoftのアプリケーションやサービスとの統合促進によって活用が進むことが予測される。例えばドキュメントやプレゼンテーション資料の作成中に適切な画像の提案や動画の生成、画像の生成なども行ってくれる可能性がある。また、音声による指示も現在よりも拡大する可能性が高い。

基盤として使われる大規模言語モデル(LLM:Large Language Model)もバージョンアップが進むことは間違いないので、時間が経つごとに生成AIが賢くなっていくのも期待できる。この点での機能向上はCopilitを使用する全てのサービスやアプリケーションにおいて優れた体験の提供につながるものとみられる。

AIの進化のスピードと経済的限界

生成AI技術が人間の経済活動に劇的な改善をもたらすことはすでに明らかになっている。このためこの技術への投資は今後も続くことが予測される。しかしながら、その投資や進化のスピードがどこまで維持できるのかはよく考える必要がある。

まず、生成AIサービスは学習にも運用にもスーパーコンピュータークラスのコンピューティングリソースが必要になる。より賢く、より包括的に機能するようにしようとすればするほど、学習対象データ量は広大になり、コンピューティングリソースも莫大になってくる。これはひいては莫大な電力消費と資金の消費を意味しており、無限に賢くし続けることはできないことを意味している。

Microsoft、Google、OpenAI各社がすでにサブスクリプションモデルの生成AI機能の提供を行っているが、こうした背景を考えると今後利用料が高騰する可能性があることも可能性として知っておく必要がある。

Copilotの進化による仕事の未来

現状でもすでに便利なツールであるCopilotだが、今後アップデートが行われていくことで便利なツールという位置付けから「必要不可欠なパートナー」というポジションになっていくことが予測される。すでにCopilotといった生成AIを日常的に使っている方であればもはや生成AIの存在していない状態での仕事は考えたくない状態になっていると思うが、今後はそれがさらに進むことが考えられるだろう。個人においても企業においても、Copilotは欠かせない存在になりそうだ。

生成AIがもたらす効率化はそれだけ高い効果がある。時短効果や現実達成において生成AIサービスを利用するのとしないのとでは雲泥の差が生じる。今後は生成AIを使うかどうかではなく、生成AIをどうやって使いこなすか、どのようにその能力を最大限に引き出していくかがビジネスパーソンのスキルということになってくることは想像に難しくない。

Copilotを試して体験したことをこれからも模索していこう

本連載を通じて多くの方がCopilot in WindowsやCopilot in Edgeを試したのではないかと考えている。その中でも特に便利だと感じた機能は何だっただろうか。一般的に高評価を得ている機能は要約機能や翻訳機能、校正機能などだろうか。こうした機能を活用すると日常的な事務作業時間を短縮することができる。動画の要約機能なども便利だ。会議録の作成やセミナーの要約資料の作成などにも使うことが可能である。

本連載ではプログラミングとの関係については取り上げなかったが、Copilotが得意とする作業のひとつがプログラミングだ。すでにプログラミングでCopilotを活用しているプログラマーや開発者は、この支援機能なしの開発は考えられないと思う。

これからも日々の業務でどのようにCopilotを役立てられるが模索してくことが大切だ。

ユーザーへのメッセージ

本連載は登場したばかりのCopilot in Windowsに焦点を当て、この機能をどのように使いこなしていくかを取り上げてきた。これまで連載を通じて取り上げてきたCopilot in Windowsを使ってみてくれたことに感謝するとともに、これからも活用していってもらえればと思う。

Copilot自体は日々進化している。昨日はできなかったことでも今日になったらできるようになっていたということもある。Copilotをはじめとする生成AIは現在もっとも注目されている分野であり、投資や開発の対象になっている。今後のアップデートで機能の追加や性能の向上が期待できることから、今後もアップデートを楽しみにしつつ、引き続き活用してもらえれば幸いだ。

付録: ショートカットキー

ショートカットキー 内容
「Windows」+「C」 Copilot in Windowsの表示・非表示を切り替え
「Ctrl」+「Shift」+「.」(Microsoft Edge) Copilotパネルの表示・非表示を切り替え

付録: 対応バージョン

OS バージョン
Windows 11 Windows 11, version 22H2以降
Windows 10 Windows 10, version 22H2以降のProおよびHome

参考