ChatGPTを活用するにあたり、プロンプトはとても重要です。明確に指示を出し、必要な情報を提示する必要があります。本連載で紹介しているように、プロンプトを構造化したり、例を入れることで出力の品質を向上させることができるのです。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。
しかし、今は2022年の時と比べてChatGPTの性能が格段に向上しており、プロンプトの理解力も上がりました。そこまで凝ったプロンプトを構築しないでも望む出力が得られるようになってきているのです。
とは言え、1行しか入力しないプロンプトでは、あまり中身のない出力しか得られません。いい感じの内容に見えても、それは他の人も10秒で得られるものです。
そこで今回は、ChatGPTにプロンプトを改善してもらうプロンプトを紹介します。ユーザーは、シンプルな1行のプロンプトだけ考えて入力すれば、ChatGPTがよりよい出力が得られるように改善してくれるのです。あとは、ユーザーが新規チャットを開いて、改善されたプロンプトをコピー&ペーストすればいいだけです。
プロンプト案を改善してもらい、その理由も教えてもらう
試しに、ブログ記事を作成する際の構成案を考えてもらいましょう。もちろん、オウンドメディアの記事でもいいですし、SNSの投稿でも、プレゼン資料の構成でも、見出しのアイデアでも構いません。
シンプルに「リモートワークするなら椅子にお金をかけろ、というブログを書きます。構成案を書いてください」と入力したところ、7ブロックの構成を出し、それぞれ2~3項目の内容をリストアップしてくれました。
さらに、2章から5章はそれぞれの項目の詳細な内容も記載してくれています。「ChatGPT-4o」モデルを使いましたが、章立ての構成や詳細の出力、文字数などを指定していないのに、ここまでの出力をしてくれるようになっています。
では、このプロンプトをChatGPTに改良してもらいましょう。ChatGPTのロールは「凄腕のプロンプトエンジニア」で、よりよいプロンプトを作ってもらいます。その際、後学のためにどこをどのような理由で改善したのかも教えてもらいましょう。
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プロンプト
あなたは凄腕のプロンプトエンジニアです。生成AIに入力するために###プロンプト案を改良し、よりよい出力を得られる詳細なプロンプトを作成し、教えてください。ChatGPTにコピーして入力するので、プロンプトのみを日本語で出力してください。その際、改改良したポイントの理由も教えてください。
###プロンプト案
リモートワークするなら椅子にお金をかけろ、というブログを書きます。構成案を書いてください
プロンプトと出力
生成された改良プロンプトで構成案を作ってもらいました。
改良されたプロンプトでは、各セクションに見出しと説明、サブセクションを付けるように指示していました。また、読者の興味を引き付けるような内容、という指示も入っています。
実際に出力させてみると、一目で構成の解像度が高まっていることがわかります。すべてのセクションに説明が入っています。
シンプルプロンプトでは、6ブロック目に「椅子選びのチェックリスト」というちょっと意味不明な内容が入っていましたが、改良プロンプトではチェックリストがなく「椅子に投資することの心理的効果」というブロックが入っていました。もちろん、改良プロンプトの方が良い内容になっています。
文字数では品質を判断できないものの、シンプルプロンプトでは686文字、改良プロンプトでは870文字と1.3倍のボリュームになっていました。とりあえず、入力するプロンプトをちょっとよくしてから出力させたい、という時に利用するとよいでしょう。
複数バリエーション&想像を超える提案をしてもらう
ChatGPTの仕組み上、何かを依頼した時には優等生的な模範解答を出してくる傾向が強いです。当然、そのような内容が欲しい時にはいいのですが、自分でも何が欲しいのかわからないようなときには想像を超える出力が欲しくなることもあります。
ただ単にバリエーション豊かな構成案にしてください、の一言では思うような結果が得られません。そこで、ChatGPTに考えてもらいましょう。
比較対象が欲しいので、ここでは2パターン同時に出力してもらうことにします。複数パターンを出してもらい、良い方だけを採用するというのも生成AI活用の基本です。人間相手だとパワハラですが、ChatGPTならいくら生成させても文句を言いません。
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プロンプト
以下の、生成AIに入力する###プロンプト案を分析し、よりよい品質の出力を得られるように改善した、ChatGPTに入力するプロンプトをAとBの2パターン提示してください。Aはより詳細に具体的な出力が得られるように改善してください。Bはユーザーが想像しないような突飛でバリエーション豊かな出力が得られるプロンプトを作成してください。プロンプトは詳細に、日本語で出力してください。
###プロンプト案
リモートワークするなら椅子にお金をかけろ、というブログを書きます。構成案を書いてください
プロンプトと出力
Aは具体的に、Bは想像を超えるように出力するように指示しました。Aのプロンプトも具体的でしっかりした指示ですが、Bも指示通り変わった切り口で出力してきました。椅子をパートナーと見て、関係性を掘り下げる内容になっているのです。実際に、読んで面白い記事になるかどうかはさておき、突飛なプロンプトであることは間違いありません。
実際に、このプロンプトを入れてみたところパートナーとしての内容は3分の1くらいしか出ず、残りは椅子のデザインや選び方といった普通の内容になっていました。しかし、それでもオリジナリティのある構成案になっていたのでチャレンジした効果はありました。
やって欲しいことを入力するだけでよいプロンプトを作ってもらう
シンプルなプロンプトさえ考えるのが面倒であれば、必要事項をChatGPTから聞いてもらうようにしてしまいましょう。汎用的に使えるテンプレートのようなプロンプトを作り、使い回してしまえばいいのです。
まずは、ユーザーに何をしたいのか質問させます。情報が足りなければ質問させます。そのうえで、プロンプトを考えさせ、それを分析して改善させたプロンプトを出力させるようにします。
「ChatGPTに入力するプロンプト」という文言が頻出していますが、こう書かないとプロンプトを出力せずに、直接その回答を出力してしまうことがあるからです。また、複雑なプロンプトにすると、出力フォーマットが毎回違って使いにくいので、フォーマットも指定しておきます(以下のプロンプトは「ChatGPT」で動作確認をしているため、そのほかのGPTベースのツールでは動作しない可能性があります)。
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プロンプト
あなたは凄腕のプロンプトエンジニアです。ChatGPTが処理しやすい詳細なプロンプトを作成してください。ステップバイステップで実行してください。
1.私に「ChatGPTにやって欲しいことは何ですか?」と聞いてください。
2.よりよいプロンプトを作るために追加の情報が欲しい場合は「可能なら○○の情報を教えてください」などと私に聞いてください。
3.入力されたやって欲しいことや情報を元に、ChatGPTに入力する詳細なプロンプトを考えてください。
4.次に、そのプロンプトを分析し、よりよい出力を得るために追加すべき内容を考えてください。内容は熟考して、最低5つ以上は考えてください。要素を見逃さないように徹底的に分析してください。
5.追加すべき内容を参照し、ChatGPTに入力するための詳細なプロンプトを最終版として出力してください。冒頭で、ChatGPTにどんな処理をさせるのかを明確に指示してください。また、入れるべき要素を省略せずすべて入れ込み、ChatGPTが理解しやすいように構成してください。
###条件
・ステップ3とステップ5はChatGPTに入力すべきプロンプトだけを表示してください。
・出力するのはChatGPTに入力するプロンプトで、勝手に回答しないようにしてください。
・プロンプトはChatGPTへの命令形で丁寧語で書いてください。
・プロンプトにすべての構成案は入れないでください。
###フォーマット
■プロンプトのたたき台
ステップ3で生成した出力
■分析結果
ステップ4で生成した追加すべき内容を箇条書き
■最終プロンプト
ステップ5で生成したプロンプト
では「ChatGPTにやって欲しいことは何ですか?」と聞いてください。
やって欲しいことを聞かれたので、わざと「プレゼン資料を作って」だけ入力します。すると、テーマや対象者、含める内容、利用するデータ、スライドの枚数などを質問されました。ここでは、「生成AIのビジネス利用について」というテーマとスライド枚数は12枚とだけ回答しました。
すると「生成AIのビジネス利用について、30分間で説明するプレゼンテーション資料を12枚のスライドで作成してください」というシンプルなプロンプトのたたき台が生成され、分析結果が5つ表示されました。その後、「最終プロンプト」が表示されました。
基本的な命令を書いた後に、入れる要素をいくつか箇条書きにしたように見えます。そこで、たたき台と最終版のプロンプトを入力して出力を比べてみましょう。
シンプルなプロンプトを入れたところ、確かに12ページ分の内容が生成されました。しかし、4~6ページが「ビジネスにおける利用事例」の1、2、3と明らかな手抜きになっていました。内容もさらっと見出しの後ろに一言書いてあるだけです。
最終プロンプトを入れてみたところ、きっちり12枚分の構成が作成されました。内容も1~2ポイントの箇条書きになっています。生成AI利用のメリット・デメリットや市場動向といった内容が入っていました。もちろん、こちらの方が使えるスライドになっています。
以上が、ChatGPTにプロンプトを改良させてより高品質な出力を得るプロンプトとなります。プロンプト作りに悩んだら、まずはChatGPTに聞いてみる癖を付けましょう。トライ&エラーの時短になりますし、プロンプト構築の勉強にもなります。