前回はMBZUAIによるプロンプトに効く「26の原則」のうち、半分を紹介しました。今回は、残る13の原則について紹介します。→過去の「柳谷智宣のChatGPTプロンプトクリエイティブラボ」の回はこちらを参照。
推論が必要なタスクで中間のステップを提示して出力の質を向上する「CoT」
14. 出力に必要な情報をChatGPTに質問してもらう
必要なアウトプットを提供するのに十分な情報が得られるまで、ChatGPTに質問してもらうように指示することもできます。
例文は「From now on, please ask me questions until you have enough information to create a personalized fitness routine.(これから、パーソナライズされたフィットネスメニューを作るために必要な情報が揃うまで私に質問してください)」
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プロンプトと出力
15. ChatGPTに問題を出してもらい理解度をテストする
ChatGPTに答えを見せずに問題を出してもらい、回答したら添削してもらうことができます。簡単なプロンプトで様々なeラーニングを行えます。プロンプトを作りこめば、点数を出したり、ミスをした項目の詳細な説明を確認したりできます。
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プロンプトと出力
16. ChatGPTの役割を指定する
例えば「If you were an expert economist, how would you answer: What are the key differences between a capitalist and a socialist economic system?(あなたが専門の経済学者なら、資本主義経済システムと社会主義経済システムの主な違いは何ですか? という質問にどう答えますか?)」のように、役割を指示すると、そのように振る舞い、出力してくれます。
「あなたはベテランのライターです」「あなたはプロのコンサルタントです」といったロールを指定するのは、ChatGPTでは基本です。簡単にクオリティを向上できるので、活用しましょう。毎回入力するようであれば、「カスタム指示」に登録しておく手もあります。
17. 区切り文字やかっこを使用する
フォーカスする部分に区切り文字やかっこを使用することで、プロンプトの指示が明確になります。例文は「Compose a persuasive essay discussing the importance of 'renewable energy sources' in reducing greenhouse gas emissions.(温室効果ガス排出削減における「再生可能エネルギー源」の重要性について論じた説得力のあるエッセイを作成してください)」です。
18. 特定の単語やフレーズを複数回繰り返す
通常の文章であれば省略するような場合でも、ChatGPTが明確に理解できるように繰り返すことで、狙った出力を得られることがあります。
例えば「Evolution, as a concept, has shaped the development of species. What are the main drivers of evolution, and how has evolution affected modern humans?(進化は概念として、種の発展を形作ってきました。 進化の主な推進力は何ですか?また、進化は現代人にどのような影響を与えましたか?)」といった感じです。
19. CoT(Chain-of-Thought)
一般的なCoTと呼ばれるテクニックです。推論が必要なタスクにおいて、中間のステップを提示することで、出力の質を向上します。
例文は「10を2で割ると答えは5です。20を4で割ると5です。30を6で割ると?」となっています。以前のChatGPTは計算が苦手でしたが、現在では普通に正解を出せるようになっています。とは言え、CoTは通常の文章でも有効です。
例えば「ポケットとキュウリのそれぞれの最後の文字を繋げてください」と入力しても、「トイ」など、間違った回答をしてきます。そんな時は、まず例を与えて、推論できるようにしてあげましょう。
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プロンプトと出力
プロンプトに正解はないが必要に応じて利用すべき
20. 応答開始部分でプロンプトを切る
出力して欲しい部分でプロンプトを切ることで、その続きを生成してもらうテクニックです。まさに、19番で使ったプロンプトのような使い方です。
21. 必要な情報をすべて追加し、詳細な○○を書いてもらう
記事のような文章を出力して欲しいときは、「必要な情報をすべて追加し、詳細な段落を書いてください」のようなプロンプトにすると、漏れのない長文を得やすくなります。本連載でも、「詳細な」は頻出プロンプトですね。
22. 原稿を文体を変えずに校正する
自分で書いた文章をChatGPTに校正してもらう際は、文体はそのままに文法や語彙を自然に修正してもらいたいところです。
そんな時は、「ユーザーから送信されたすべての段落を改訂するようにしてください。ユーザーの文法と語彙を改善し、それが自然に聞こえるようにするだけです。カジュアルな文章を形式的にするなど、文体を変更してはいけません」 と入力するとよいとのことです。試してみたところ、相当うまく動作してくれます。ぜひ試してください。
23. 複数のファイルにまたがるコーディングプロンプト
異なるファイルに存在する複雑なコーディングプロンプトがある場合、コードを生成する際に自動的にファイルを作成するスクリプトを生成してください。
例文は「Generate code that spans more than one file, and generate a Python script that can be run to automatically create the specified files for a Django project with two basic apps for different functionalities.(複数のファイルにまたがるコードを生成し、異なる機能の2つの基本アプリを含むDjangoプロジェクトの指定されたファイルを自動的に作成するために実行するPythonスクリプトを生成してください)」となっています。
24. 歌詞や物語を作るなら最初のフレーズを入れる
歌詞や物語を作成する際は、最初にフレーズを入れることで、その後も一貫したトーンで文章を出力できます。例文では、「霧のかかった山々には、誰も知らない秘密があった」という文章を提示し、幻想的な物語の続きを書くように指示していました。
25. 出力に必須の要件をキーワードとして追加する
コンテンツを作成するためにChatGPTに入れ込んで欲しい要件をキーワードやヒント、または指示の形式で明確に書きましょう。
例文は「Create a packing list for a beach vacation, including "sunscreen," "swimsuit," and "beach towel" as essential items.(必須アイテムとして「日焼け止め」「水着」「ビーチタオル」などを盛り込んだ、ビーチバカンスの持ち物リストを作成してください)」でした。
ただし、テストした限りでは、それほど大きな差は出ませんでした。必須アイテムをプロンプトに入れるくらいなら、出力テキストに自分で追加しても手間は変わらないと感じました。
26. 狙った文体でエッセイを書いてもらうためにサンプルを提供する
エッセイや小説をChatGPTに書いてもらう際、サンプルテキストを提供し、「提供されたテキストに基づき、同じ文体で●●を描写してください」と指示すると、望む文体の文章が生成される可能性が高まります。
以上が、プロンプトに効く「26の原則」です。ChatGPTではあまり効果がない項目や内容が似ていて重複している項目もありますが、確かに効果があるリストとなっています。筆者としては、ペナルティを課すと脅したり、チップをあげるとすかしたり、するエモーションプロンプトが面白かったです。
ChatGPTは本当に人間のように振舞いますね。特に役立ったのは、22番です。内容は普通ですし、否定形の指示まで入っているのに、これまで筆者が使っていたプロンプトよりも良好な結果が得られました。
もちろん、プロンプトに正解はありません。この26個の原則も、ChatGPTとチャットでやり取りする中で、必要に応じて使ってみましょう。効果があれば儲けもの、くらいに考えて、何度もトライ&エラーを重ねることで狙った出力が得られる可能性が高まります。