「言葉のチョイス」は人として大事なこと

『引き寄せの法則』(マイケル・J・ロオジエ著/石井裕之監修/講談社)。「ポジティブに願えばすべて叶う」と説いている

前回に続き、今回も『引き寄せの法則』(マイケル・J・ロオジエ著/石井裕之監修/講談社)について、実戦向けに読み解いていきたいと思います。

スピリチュアルや自己啓発ではなく、問題解決メソッドとして『引き寄せの法則』を読むと随所にヒントが隠されています。例えば、引き寄せの法則において「言葉」はとても重要とされており、「できない」「ダメだ」という否定形の言葉をタブーとしています。

これは、「世界は普遍の質量を持っており、自分の願望を「宣言」により世界に押し込む」という質量保存の法則に照らせば、発する言葉と同質のエネルギーが世界から押し出されるからでしょう。自分の発したエネルギーと同質のエネルギーが戻ってくるので、「ダメだ」と言えばネガティブなエネルギーが、「できる」と発すればポジティブなエネルギーが返ってくるということです。そして、そもそも否定形の言葉を使わないということは精神論ではありません。さらに、実戦向けに「カスタマイズ」します。

「できない」「難しい」とネガティブな発言が口癖の人と、「できます」「任せてください」と笑顔で答える人のどちらと仕事がしたいかを想像してください。スピリチュアルでもオカルトでもなく、発する言葉は人格を表すのです。もちろん、友人でも恋人でも同じです。ポジティブな発言を心がけることで、人が集まり情報が寄せられ、協力者が現れやすくなります。その結果として、幸運も「引き寄せ」られるのです。つまり、「言葉」を大切にすることは、「引き寄せの法則」というより「人として大切なこと」なのです。

常識を覆すためロールモデルを探そう

言葉遣いに代表されるように、「引き寄せの法則」を発動させる絶対条件が「ポジティブ」です。しかし、これこそ言うは易く行うは難しの典型であって、実戦活用するうえで最大の難関です。なぜなら、ほとんどの人が成長の過程で「ネガティブ」に支配されているからです。学校、受験、アルバイト、就職という生活の中で、「できない自分」を何度も刷り込まれています。その正体は「常識」です。

アイドルになる、漫画家になる、社長になる――子どもの頃は素朴に語れた夢も、年月の中で成長した「常識」が言葉を止め、行動を制限するのです。しかし、その常識は必ずしも正しくありません。「常識」とは自分が知っている世界だけの出来事で、あなたが経験したことがない世界には、今この瞬間もまったく異なる「常識」が存在するからです。

ここで最後のカスタマイズ。

「ロールモデルを見つける」

新しい常識を身につけるための「お手本」を探すのです。

「できる」にフォーカスする

ロールモデルは誰からも尊敬する人物である必要はありません。むしろ手に届くぐらいの一般人レベルで良いでしょう。

「こいつにできたのなら、自分だってできる」と思う「お手本=ロールモデル」を見つけることが、新たな常識との出会いとなります。できた人にとっては「できる世界」が常識であり、その人の存在を認めることにより「できない」という常識が過去のものとなるからです。

例えば「アイドル」でも、テレビ画面を席巻するAKB48ではなく、「ご当地アイドル」ならグッとハードルは下がります。また、YouTubeなどで歌と踊りを披露する「ネットアイドル」なら、いつでも誰でもすぐになることができます。もっとも、AKB48のメンバーも、「原宿でスカウトされてデビュー」というアイドルの王道を歩んできたわけではないので、ロールモデルとしては決して「高望み」ではないのですが。

最初の引き寄せ体験

コミックマーケットで同人誌を売っても「(同人)漫画家」と名乗ることは可能で、前回に述べたように「社長」ぐらいなら誰でもなれます。定年退職後に会社を興した人もいれば、12歳で社長になった少年どころか、特別な才能や特殊な技能がないまま社長と呼ばれている人など何十万人いるか想像もつきません。

とにもかくにも、自分と重ねることができる「ロールモデル」を見つけ、「(自分にも)できる」と常識に書き換えれば、必然的に「ポジティブ」になれるということです。

ハードルを下げても、そんな人がいない……これもネガティブな言葉。これから「会える」と考えるのが「引き寄せの法則」です。仮に、現在ロールモデルに適した人がいないのでしたら、ロールモデルとなる人物を引き寄せるところから始めます。最初のカスタマイズの「宣言」を使います。

私の場合、独立する前に在籍した会社の前はフリーターをしており、そこから社会復帰をした最大の理由は「社長」になることでした。大志や野望ではなく、人生で一度ぐらいは「社長」と呼ばれたいという浅はかな理由です。ところが、潜り込んだ広告代理店は既得権にあぐらをかいたビジネスモデルで、そこから起業を学ぶのは困難でした。社内での昇進を期待しても年功序列の組織形態では、上がいる限り出世は制限され、だからといって上司の不幸を願うほどの傲慢さは持ち合わせてはいません。

その人が現れる

保守的な組織で「社長になりたい」と宣言することは無謀です。中間管理職は我が身を脅かす害虫と見ますし、社長からは寝首を刈る「明智光秀」として潰されること必至です。フリーターは組織の「底辺」であり、そこから見上げた「会社組織」から学んだ処世術です。

そこで、「広告制作の仕事がしたい」と捻りを加えて宣言しました。新しいことにチャレンジすることで、解決への糸口を引き寄せる狙いです。

すると、先輩社員が印刷ブローカーを紹介してくれました。ブローカーは元社員で、退職後に会社を立ち上げており、彼に教わると良いのではという提案です。エネルギッシュに仕事をこなす彼の姿に憧れ、初めは自分が同じことができるとは想像もできませんでした。ところが、実際に彼と組んで仕事をしてみると、実態はルーズで杜撰、行き当たりばったりの末に、その場限りの約束を交わすことが多く、迷惑を被ることも多々ありました。そして気づきます。

「こんな人でも社長なんだ」

ロールモデルがすぐそこにやってきていたのです。

法則を使いこなすためのメソッドを学べ

今回紹介した私の体験談は『引き寄せの法則』を読む以前のものです。同書では「引き寄せの法則」を「自然の法則」と位置付けます。それに照らせば、私の経験はもちろん、誰でも「引き寄せ体験」をしているということになります。それでは読む必要がないというのは早計です。その「自然の法則」を使いこなすためのメソッドが記されているのですから。

だから、同書を手に取った際は、「成功体験」を思い出しながら読み進めてください。すると、すでにあなたに働いていた「引き寄せの法則」に気が付きます。

すべてを「偶然」と片付ける人もいるでしょう。「抗って信じろ」と言うつもりはありません。しかし、その素敵な偶然は数学的確率を超え、三流のドラマのようなご都合主義の展開で問題を解決してくれます。それを「引き寄せの法則」と呼ぶのなら、私はそれを選ぶということです。

宮脇 睦(みやわき あつし)
プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。営業の現場を知る強みを生かし、Webとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供している。コラムニストとして精力的に活動し、「Web担当者Forum(インプレスビジネスメディア)」、「通販支援ブログ(スクロール360)」でも連載しているほか、漫画原作も手がける。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)がある。

筆者ブログ「マスコミでは言えないこと<イザ!支社>」、ツイッターのアカウントは

@miyawakiatsushi