今回は、DevTest Labsの仮想マシンでAzure IaaSのオプション機能を利用について紹介します。

DevTest Labsに足りない機能は通常の「Virtual Machines」ブレードで

前回まで説明したように、DevTest Labsのラボの利用者はラボ内に最小限のパラメーターの指定で簡単に仮想マシンをデプロイし、少ないステップでリモート接続できます。仮想マシンを削除すれば、関連するリソースのクリーンアップも自動的に行ってくれて便利です。

しかし、操作が簡素化されている分、通常のAzure IaaSの仮想マシンに対して実行できる操作のほとんどがラボ環境では利用できません。ラボ環境では、仮想マシンの開始、接続、再起動、停止(シャットダウンして割り当て解除)、解放(他のユーザーが利用可能な状態で割り当て解除)、成果物(ゲストへの拡張機能の追加)、削除といった最小限の操作しか行えません。

  • Azure“超”入門 第19回

    DevTest Labsのラボ環境は操作が簡素化されているが、通常のAzure IaaS環境と比べると機能不足

一方、通常のAzure IaaSの仮想マシンでは、「Virtual Machines」ブレードでブート診断、シリアルコンソール、バックアップ、更新プログラムの管理など、さまざまなオプション機能が利用可能です。

実は、Azureサブスクリプション管理者とラボの利用者が同じであれば、DevTest Labsのラボ環境で作成した仮想マシンを「Virtual Machines」ブレードからも通常の仮想マシン(リソースマネージャーデプロイモデル)として参照、および操作することができます。

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    「Virtual Machines」ブレードで仮想マシンを開けば、ブート診断機能を有効化して、コンソールのスクリーンショットやシリアルコンソールにアクセスできる

なお、ブート診断(およびシリアルコンソール)を有効にするには、既存または新規に作成したストレージアカウントを指定して機能を有効化する必要があります。その他の機能を利用する場合も、その機能を提供するサービスの構成が必要な場合があります。

仮想ネットワークの詳細なカスタマイズも可能

DevTest Labsのラボ環境に作成された仮想マシンはすべて、DevTest Labsのラボ作成時に作成される仮想ネットワークの同じサブネットに接続されます。

「仮想ネットワーク」ブレード、または「Virtual Machines」ブレードの仮想マシンの「ネットワーク」から接続先の仮想ネットワークの場所を開けば、IPアドレスの動的(既定)または静的な割り当て、仮想ネットワーク全体または仮想マシンごとのDNSサーバのIPアドレスの設定、およびその他の仮想ネットワークの構成が可能です。

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    DevTest Labs用の仮想ネットワークのサブネットに接続された作成済み仮想マシンのネットワークインタフェース

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    ネットワークインタフェースごとにIPアドレスを動的(既定)または静的に割り当てることができる

なお、Azure IaaSでは仮想マシンのゲストOS側でIPアドレスやDNSサーバを構成することをサポートしていません。例えば、ゲストOS側でこれらの設定を静的に設定した場合、ネットワークの接続性が失われる可能性があります。

また、仮想マシンのネットワークインタフェースは起動時にリセットされるため(停止からの起動時、メンテナンスや障害に伴う移動時など)、その意味でもゲストOS側で設定することは避ける必要があります。

仮想マシンのネットワーク構成は、必ずDHCPで自動構成するようにしておく必要があり(DHCPサーバ機能はAzureが提供)、カスタム構成はAzureポータル側で「仮想ネットワーク」や「ネットワークインタフェース」に対して行う必要があります。

DevTest Labsのラボ環境でActive Directoryドメイン環境を構築するには

DevTest Labsのラボ環境であるかどうかに関係なく、仮想ネットワークを適切に構成すると、Azure IaaS上の仮想ネットワークのサブネットに仮想マシンを利用してActive Directoryドメインを展開することができます。

それには、1台のWindows Server仮想マシンにIPアドレスを静的に割り当て、その仮想マシンをドメインコントローラーとしてセットアップします。その後、仮想ネットワーク全体のDNSサーバとして、ドメインコントローラーのIPアドレスを設定します。

これでDevTest Labsのラボ環境に作成した他のWindows仮想マシンは、DNSサーバとしてドメインコントローラーの仮想マシンのIPアドレスを参照するようになり、Active Directoryドメインへの参加設定が可能になります。管理者がActive Directoryのドメイン環境を仮想ネットワーク上に準備しておくことで、ラボの利用者がドメイン環境を利用できるようにすることが可能です。

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    DevTest Labsのラボ環境でActive Directoryドメイン環境を構築した例

著者プロフィール

山市良
Web媒体、IT系雑誌、書籍を中心に執筆活動を行っているテクニカルフリーライター。主にマイクロソフトの製品やサービスの情報、新しいテクノロジを分かりやすく、正確に読者に伝えるとともに、利用現場で役立つ管理テクニックやトラブルシューティングを得意とする。2008年10月よりMicrosoft MVP - Cloud and Datacenter Management(旧カテゴリ: Hyper-V)を連続受賞。ブログはこちら。

主な著書・訳書
「インサイドWindows 第7版 上」(訳書、日経BP社、2018年)、「Windows Sysinternals徹底解説 改定新版」(訳書、日経BP社、2017年)、「Windows Server 2016テクノロジ入門 完全版」(日経BP社、2016年)、「Windows Server 2012 R2テクノロジ入門」(日経BP社、2014年)などがある。