スカルピーを混合して造形開始
安藤賢司 |
前回描き起したイメージイラストを参考に、実際の造形作業に入ります。商業ベースの原型仕事の場合は、クライアントから造形のサイズを指定されます。例えば、1/8スケールだと全高18cmなど、条件を遵守して制作します。今回はそれとは違いますが、制作前に大体のサイズを決めておきます。最近作り慣れている、全高20cmくらいを目指して制作することにします。
原型は、全身を「スカルピー」という樹脂系粘土で作ります。ご存知の方も多いと思いますが、簡単に特徴を説明します。
●粘土なので、盛ったり、削ったりが自由
●硬さが最適で、伸びもいい
●焼くまでは固まらないので、いつまでも造形していられる
●焼いた上からも盛り付けられる
●焼いた後でも、加工が容易
スカルピーは良い事尽くめのような気もしますが、実際は焼き加減にコツがあり、上手く焼かないと本来の特性を発揮出来ません。それどころか、焼き過ぎると煙を出して倍ぐらいの大きさに膨らんだり、表面がボコボコになったり、黒焦げになったりします。逆に生焼けだと、ラッカーで塗装してもいつまでも乾かない等、悲惨なことが起きます。
スカルピーの扱いのコツを文章化するのは大変難しいので、個人の試行錯誤にお任せするしかありませんが、温度調節機能のあるオーブンを使うと、スカルピーに添付の説明書どおりに過熱できることが多いので、失敗が少ないです。さらに、以下の部分も踏まえつつ、作業を進めます。
●切削は容易でも、サンドペーパーが使いにくい等、仕上げがしにくい
●意外ともろい
●ある程度の大きさの物を作る時は、ある程度大きいオーブンが必要なのだが、大きなサイズのオーブンを用意するのは困難
●焼くまで固まらないため、際限なく悩み続けて完成しない事もある
●焼く時の匂いが臭い
ちなみに、模型店などで、入手できるスカルピーは現在大きく2種類あり、それぞれ特徴があります(※ラバースカルピーと言うスカルピーもありますが、今回の作業には不向きなので割愛します)。
スーパースカルピー | プレモ |
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比較的安価 焼いた後意外ともろいが、ヤスリは比較的かけやすい なんとなく生地が荒い |
スーパースカルピーに比べて、随分値段が高い 焼いた後ソフビのようで丈夫、ゆえにヤスリがかけづらい なんとなく木目が細かい 色が豊富 |
両方のスカルピーの良いとこ取りをしたいのでこの2つを混ぜ合わせて、使いやすいスカルピーを作ります。その際、折角なので形やモールドが分かりやすいグレーに調色します。混合比率はプレモ黒(1):プレモ白(2):スーパースカルピーグレー(3)ぐらいが最適です。ちなみに、グレーのスーパースカルピーは、肌色のスーパースカルピーより割高なので、肌色でも代用可です。
要するに、プレモ(1):スーパースカルピー(1)の割合が、バランスのいい自分好みの配合です。これが好みの色になっていればOKです。 今回は厳密なスケールが必要ないので、オーソドックスな「頭を作ってから、全身のバランスを決める」作り方で進めていきます。スカルピーは厚盛りすると、クラックが入りやすくなったり、芯まで火がとおりにくくなるのと、それ自体が柔らかいので保持しにくいという欠点があります。そこで、硬い物を芯にしてその上に盛り付けていきます。芯になる物は、耐熱性があれば何でもいいのですが、形を出しやすいものの方が使いやすいので、粘土状のエポキシパテを使います。
今回は、別の作業で余って固まった物に、ピンバイスで穴を開け、3mm径のアルミ線を刺して持ち手にします。
それに、調色したスカルピーを盛り付けます。この時に、前回までのラフ画の作業が生きてきます。
大まかなアウトラインはすでに絵を描いた事によって、頭に入っています。確認のために、イラストと資料を作業台の周りに配置して肉付けを始めます。大きめのスパチュラ(スクリントーン貼り用)で荒盛りします。
小さめのスパチュラ(彫金用)でディテールを入れ、資料と首っ引きで盛り削りを繰り返します。
こうして頭部が完成しました。似てますかぁ? CATMANというキャラクターを劇中からイメージして、中に入っている骨格を「CAT」というより「MAN」寄りになるよう意識して手を動かしてみました。
これで焼こうかと思ったのですが、もう暫く眺めるために埃が付かないようにラップをかけて保存します。スカルピーって、便利です。
次回、さらに造形加速。安藤賢司の超絶造形作法炸裂予定!