Googleは2025年11月18日、「Gemini 3」シリーズを公開しました。Gemini 2.5からの世代交代にあたり「推論性能」と「エージェント的な自律行動」、そして「コーディング能力」の3点が大きく強化されました。

Gemini 3の中心的な機能の1つ「Canvas」

Gemini 3 Proは最大100万トークンの入力コンテキストと最大64Kトークンの出力に対応し、テキスト・コードだけでなく画像や動画も含めたマルチモーダルな解析が可能です。

特に、Gemini 3 Proは「コード品質」と「フロントエンド生成」の面で、Gemini 2.5 Proに比べてベンチマークで解けたタスク数が50%以上向上したとされており、Googleは「これまでで最も優れたコーディングモデル」と位置づけています。この「プロンプトからアプリまで」を実現する中心的な機能の1つが「Canvas」です。

Gemini 2.5でも似たことはできましたが、Gemini 3では長大なプロンプトを一度に扱えることとプランニング能力の向上によって、実務でそのまま叩き台として使えるレベルのアプリが出てくるケースが増えました。AIで生成したアプリはエラーを出すことが多いですが、Canvasが自動的に修正を試みてくれるのも心強いところです。

試しに触ってみたところ、今まで簡単にはできなかったアプリが次々と完成して驚きました。筆者はプログラミングがほとんどできないので、コードのレビューはできないものの、欲しかった機能が具現化されていくのには感動しきりです。

アプリ1:人物の顔を判別して自動でモザイクを入れる「AI Face Mosaic」

例えば、人物の写真をアップロードしたら顔にモザイクをかけるアプリを作ってもらいました。これまでは、子どもの写真をSNSで共有する際に、いちいち大げさなフォトレタッチソフトを起動してモザイクをかけているので面倒なのです。

そこで、Geminiの「Canvas」をオンにしてプロンプトを入力してみました。なぜか途中で止まってしまいましたが、「完成させて」と入力すると、すぐに右側にアプリが起動しました。

  • プロンプト
  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第22回

    「画像をアップロードしたら、AIで中身をチェックし、人物の顔部分にモザイクを入れて、ダウンロードさせてくれるアプリを作ってください」と入力

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    アプリが完成した

おそるおそる筆者の写真をドラッグ&ドロップすると、瞬時にモザイクがかかった写真が表示されました。指示はしていないのですが、モザイクの大きさもゲージで調整できるようになっています。凄い!

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    一度追加で指示を出しただけでアプリが完成しました

しかし、寂しい頭頂部にまでモザイクがかかっていません。そのことを指摘すると、AIは眉から顎までを顔と判断するので、上方に50%領域を増やせばいいと改善案を出し、あっけなく望むアプリが完成しました。こんなに簡単でいいのでしょうか?

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    頭頂部までモザイクをかけるように要望するとすぐに対応してくれます

これは、今後も使い続けたいので、ローカルにファイルとして保存したいというと、コードをコピーしてHTMLファイルとして保存すればいい、と教えてくれました。見事、ローカルで動作するモザイクアプリの完成です。

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    ローカル動作なので子供の写真も安心して処理できます

アプリ2:ウイスキーボトルの写真をアップしたら情報を表示する「Whisky Lens」

次は、かねてから欲しかった、ウイスキーのラベル分析アプリ。普通に日本語で指示したところ、こちらもあっけなく完成してしまいました。

  • プロンプト
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    「写真をアップロードしたら、映っているウイスキーのボトルをAIで判別して、カテゴリ、商品名、蒸留所名と場所、特長、テイスティングノートなどの情報を表示するアプリを作ってください。AIはGeminiのAPIを利用してください」と入力

ウイスキーの写真を読み込ませると、ウェブを検索し、情報をまとめて表示してくれます。指示通り、それぞれの要素をデザインしてくれて、大満足と言うよりも衝撃が凄いです。

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    テイスティングノートもしっかりと調べてくれます

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    限定品を読み込ませてもきちんと認識し、定番商品と混同することはありませんでした

アプリ3:プレスリリースのURLからニュース原稿を書く「Press2News」

次は、プレスリリースのURLを入力したら、即ニュース原稿を生成するアプリを作ってみました。ChatGPTやGeminiのチャットUIで会話する必要がなく、URLをコピペするだけでいいなら、誰でも利用できるようになります。

同じように、欲しいアプリをそのまま書きます。ただし、原稿を執筆する際のプロンプトはあらかじめ指定しておきました。

なぜか、URLを取得できなかった場合に備え、テキストを貼り付けるエリアを用意してしまいました。さらには、URLを入力してもテキストを取得しません。そこで、頑張ってテキストを取得するように指示しました。

  • プロンプト

    プレスリリースのURLを入れたら、ウェブページを読み込み、ウェブ媒体用のニュース原稿を作るアプリを作ってください。出力はプレーンテキストでコピーできるようにしてください。スタイリッシュなUIで簡単に使えるようにしてください。
    原稿を作る際に利用するプロンプトは以下です。
    ###プロンプト
    (欲しい原稿の体裁に関する指示を書く)

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    「プレスリリースのURLを入れたら、ウェブページを読み込み、ウェブ媒体用のニュース原稿を作るアプリを作ってください。出力はプレーンテキストでコピーできるようにしてください。スタイリッシュなUIで簡単に使えるようにしてください」と入力

あっけなく、何とかしてくれたのですが、今度はAIモデルが見つからないというエラーが出たので、そのエラーをコピペして、「○○とエラーが出ます」と入力します。

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    エラーが出たので、何とかしてくれ、と指示しました

再度、修正され、アプリが完成しました。URLを入力し、「ニュース記事を作成する」をクリックすれば、数秒でニュース原稿が出力されました。

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    エラーの修正指示に、素早く正確に対応してくれます

原稿のクオリティは執筆用プロンプトをチューニングすれば向上します。5分もかからず作成できるという手軽さは、ライターとしてはちょっと怖いですね。

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    ニュース原稿の自動執筆アプリが完成しました

アプリ4:Wordpress用のプラグインを作ってもらう

筆者はプロフィールサイトをWordPressで作っています。その中に、執筆履歴を投稿しているのですが、すべて手作業なのでとても手間がかかります。URLを入力したら、記事のタイトルと媒体名、本文の要約、記事へのリンク、画像の設定などを行い、下書きとして保存してくれるプラグインを探したのですが、ありませんでした。

そこで、Geminiで作ろうとしたのですが、プラグインの作り方を指示する知識がありません。そこで、まずは、要望を伝えて、どんなプロンプトをGeminiに渡せばいいのか相談してみました。「不足している情報があれば聞いて」と入れると、会話する中でプロンプトが完成します。

  • 柳谷智宣のAIトレンドインサイト 第22回

    プラグイン作成の指示の方法をGeminiと一緒に考えます

続けて、GeminiのCanvasをオンにして、そのプロンプトを入力すればいいのです。コードが生成されたので、ファイルにコピペして保存し、WordPressにアップロードします。

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    Canvasを有効にしてプロンプトを入力します

また、AIモデルが見つからないというエラーが出たので、そのエラーを貼り付けて修正してもらったところ、完成。

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    ファイルをアップロードし、プラグインを有効化します

WordPressのメニューに「URL概要作成」という項目が現れ、URLを入力すると下書き画面に飛ぶことができます。シンプルながらもやってほしいことが実現できました。

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    URLを入力して、「記事を生成」をクリックします

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    下書きが作成できました。後は確認し、「公開」をクリックするだけです

正直なところ、これほど簡単に、しかも実用レベルのアプリが作れてしまうとは思いませんでした。エラーが出ても「ここを直して」とチャットするだけで、目の前でアプリが修正され、動くようになる体験は感動的ですらあります。

専門知識がないからこそ味わえる、「自分の言葉がそのまま機能になる」という全能感。Gemini 3は、私たち非エンジニアにこそ、モノづくりの純粋な楽しさを教えてくれるツールなのかもしれません。皆さんもぜひ、日頃の「あったらいいな」をGeminiにぶつけてみてください。