今回は、2025年8月9日〜8月21日に発表されたAI関連の注目すべきトピックを紹介する。AnthropicはClaude Sonnet 4のコンテキストウィンドウを拡大したほか、Claudeチャットに学習モードを追加した。Googleはオクラホマ州のクラウド・AIインフラ拡充に、米国科学財団(NSF)とNVIDIAはAi2研究所のAI基盤構築プロジェクトへの大規模な投資を発表。MicrosoftはExcelへのAI機能統合をさらに進めた。

それぞれ詳しく見ていこう。

Claude Sonnet 4のコンテキストウィンドウが最大100万トークンに拡大

8月12日、Anthropicは同社のAIモデル「Claude Sonnet 4」のコンテキストウィンドウを最大100万トークンに拡張したと発表した。従来の制限から5倍の拡張となり、これによって7万5000行以上のコードベースや複数の研究論文を、単一のリクエストで処理可能になるという(参考記事:Claude Sonnet 4が100万トークンに対応、大規模プロジェクトを丸ごと解析可能に | TECH+(テックプラス))。

最大100万トークンは、競合するOpenAIのGPT-4.1などと同等レベルであり、企業の顧客や大規模開発に対して高い訴求力を持つだろう。この拡張は、Anthropic APIおよびAmazon Bedrock上ではすでにパブリックβ版として利用可能で、Google Cloud Vertex AIにも近日中に提供を開始するとのことだ。

  • Claude Sonnet 4 now supports 1M tokens of context

    Claude Sonnet 4 now supports 1M tokens of context

Googleがオクラホマ州で90億ドルの投資、クラウドおよびAIインフラを増強

8月13日、Googleが今後2年間でオクラホマ州に追加で90億ドルの投資を行うと発表した。この投資には、同州スティルウオーターに新たなデータセンターキャンパスを建設するとともに、プライヤーにある既存施設の拡張が含まれている。これによって、GoogleはクラウドおよびAIインフラ能力を強化し、技術基盤の信頼性とスケールを向上させる戦略だ。

Googleはこの前週に、米国内の高等教育機関と非営利団体のAI研修向けに3年間で10億ドル相当を提供する方針も明らかにしている。オクラホマ大学およびオクラホマ州立大学がこのプログラムの初期参加校に選ばれ、学生たちは無償でGoogle Career CertificatesやAIのトレーニング講座を受けることができる。Googleのこの投資は、オクラホマ州には高品質な雇用や教育機会、長期的な経済成長などのメリットをもたらすと期待されている。

  • 今後3年間でオクラホマ州に90億ドルを投資する 出典:Google

    今後3年間でオクラホマ州に90億ドルを投資する 出典:Google

Ai2研究所がオープンなAI基盤構築プロジェクトに1.52億ドルの資金を獲得

8月14日、米国の非営利研究機関「Ai2(Allen Institute for AI)」は、米国科学財団(NSF)とNVIDIAから総額1億5200万ドルの資金提供を受けることになったと発表した。この資金は「Open Multimodal AI Infrastructure to Accelerate Science(OMAI)」という中規模研究プロジェクトに活用される。OMAIは、科学研究向けに特化したオープンソースの大規模マルチモーダルAIモデルを開発・提供する国家プロジェクトである。

Ai2は、すでに「OLMo」や「Molmo」といった高性能かつ完全にオープンなテキスト・マルチモーダルモデルを開発している。OMAIではこれらを基盤に、科学分野向けに特化した新モデルを構築していく予定となっている。OMAIではオープン性を重視しており、モデルのパラメーター数、トレーニングデータ、コード、評価手法、ドキュメントといった要素はすべて公開される。これによって透明性と再現性を保証し、AI研究の信頼性の向上を図るという。

ClaudeでChatGPTと同様の「学習モード」が利用可能に

8月15日、Anthropicは同社のAIチャットサービス「Claude」において「学習モード」(Learning mode)を一般公開した。学習モードを有効にした場合、AIはユーザーの質問に対して直接回答を提示するのではなく、段階的な解説や追加の設問を返すことで、そのトピックに関するユーザーの学習を手助けする。これまで教育機関向けに提供してきた機能だが、それを一般向けに公開した形だ。

学習モードを利用するには、Claudeのプロンプトの設定で「スタイル」を「学習」に設定するだけでよい。あとは通常通りチャットに質問を入力すれば、学習に必要となる追加情報の入力などをClaudeが誘導してくれる。OpenAIも7月29日にChatGPTに学習モードを追加したが、Claudeの学習モードもこれと同様の機能を提供する。

  • ClaudeでもChatGPTと同様に「学習モード」が利用可能に

    ClaudeでもChatGPTと同様に「学習モード」が利用可能に

Microsoft ExcelにCOPILOT関数が登場

8月19日、MicrosoftはExcelに新たに「COPILOT関数」を導入すると発表した。この関数は、ExcelのセルにAIチャットへのプロンプト入力を組み込むことができるというもの。例えば、セルに自然言語で「このフィードバックを分類して」と入力すれば、AIが自動的に分類・要約などの処理を実行できるようになる。

COPILOT関数には、自然言語によるプロンプトと同時に、任意のセル範囲(コンテキスト)を指定する。他のExcel関数(IF、SWITCH、LAMBDA、WRAPROWSなど)と組み合わせることもできる。

COPILOT関数は、Windows(バージョン2509以降)およびMac(バージョン16.101以降)向けに、Insider ProgramのBetaチャネルで提供されている。Web版も近く対応する予定。ただし、現時点ではCOPILOTは学習済みモデルのデータに基づいて動作するため、インターネット上の最新情報や社内の資料にはアクセスできない。また、使用回数には制限がある。Microsoftでは、将来的にデータソースの拡充や形式の向上を計画しているという。

  • ExcelでCOPILOT関数が利用可能に 出典:Microsoft 365 Insider Blog

    ExcelでCOPILOT関数が利用可能に 出典:Microsoft 365 Insider Blog