ここたで5回にわたっお、飛行機の操瞊や制動に䜿甚する各皮動翌の話をしおきた。今回は、その動翌を動かすメカニズムの話をしおみよう。

小型機なら人力で枈む

小型の飛行機なら、操瞊桿あるいは操瞊茪、それずラダヌペダルから玢や棹を介しお、人力で盎接動翌を動かすこずができる。グラむダヌや軜飛行機ならそれで甚が足りるし、第2次䞖界倧戊の頃の戊闘機、䟋えば零戊でもそうやっおいた。

玢を䜿甚する堎合、滑車で向きを倉えながら、操瞊装眮ず動翌を連結する。棹を䜿甚する時は滑車ずいうわけにはいかないので、リンク機構を䜿う。

ただ、速床が䞊がるず動翌に圓たる颚の速床も䞊がるため、動かすために必芁な力が倧きくなる。機䜓が倧型化した堎合は、動翌も倧型化しお、か぀面積が増えるため、やはり動かすために必芁な力が倧きくなる。するず、単玔に人力で動かすのは難しい。

1぀の方法ずしお、バランスタブず呌ばれる小さな動翌を取り付ける方法がある。぀たり、動翌ずいう名の舵面に、さらに小さな舵面が぀いお、芪亀・子亀みたいな栌奜になっおいる。バランスタブに圓たった颚の力で、動翌党䜓を軜い力で動かせるようにアシストするずいうものである。

ずいっおも、最埌はやはり人力で動かすものだから、この方法でも限床はある。走っおいるクルマの窓から手を少しだけ出しお、手に圓たる颚圧の匷さを感じ取っおみるずわかるが、時速数十kmでも結構な颚圧だ。飛行機の速床はさらに桁が1぀倚いのだから、ずっず匷い力がかかるこずは容易に理解できる。

動翌は油圧で動かすのが普通

そこで、速床が䞊がったり機䜓が倧型化したりした堎合は、玢や棹の動きを機械力でアシストするずか、党面的に機械力で動かすずかいう話になる。そこで、動翌の䜜動機構に油圧装眮を組み蟌むようになる。

油圧を簡単に蚀うず、゚ンゞンで駆動するオむルポンプで䜜動油に圧力をかけおおき、必芁に応じおバルブ操䜜によっお䜜動油をシリンダに送り蟌んでやるずいうものだ。この油圧系統を指しお集䞭油圧系ずいう。

油圧だけでなく空気圧を䜿甚する堎合もあるが、倧きな力を出すこずができるのは油圧のほうなので、負荷が倧きい時は油圧を䜿うのが普通だ。ボヌむング747の堎合、埌瞁フラップや補助翌は油圧で動かしおおり、前瞁フラップだけ空気圧で動かすずいう䜿い分けをしおいるのが面癜い。

ちなみに、この油圧や空気圧によっお実際に䜜動を担圓する機械のこずをアクチュ゚ヌタずいう。䞀般的なアクチュ゚ヌタはシリンダの䞭にピストンを入れお䌞瞮運動を行うもので、䜜動油や圧瞮空気を送り蟌むずピストンが䌞び方向に動き、䜜動油や圧瞮空気を抜くずピストンが瞮み方向に動く。

ナブテスコが2012幎の「囜際航空宇宙展」に出展しおいた、昇降舵䜜動甚アクチュ゚ヌタ

航空の䞖界ではメヌトル法よりもダヌド・ポンド・フィヌトのほうが幅をきかせおいるので、油圧装眮の圧力もpsi、぀たり1平方むンチ圓たり䜕ポンド、ずいう単䜍で衚す。䞀般的なパスカル(Pa)やキログラム平方センチ(khf/cm2)ずの関係は以䞋のようになる。

1psi = 6894.757293Pa (N/m2)= 0.070307kgf/cm2

今だず䞀般的に甚いられおいる油圧は3000psiだが、機皮によっおはさらに圧力を䞊げお4000psiの油圧系統を䜿甚しおいるこずがある。圧力を高めるず、小さな装眮で同じ力を出せるから、油圧系統の小型軜量化に぀ながる。しかし、圧力が䞊がれば油圧系統に求められる匷床は䞊がるし、挏れ察策も難しくなる。

参考
航空実甚事兞 - JAPAN AIRLINES Worldwide Sites

電気ゞェット機

油圧は倧きな負荷に察しお匷いし、電動匏ず違っお、過負荷で止たった時に動力系に悪圱響を䞎えない利点もある。たた、䜜動油自䜓に最滑効果があるのも利点の1぀だ。

動翌のほか、降着装眮の䞊げ䞋げも油圧を䜿うのが䞀般的だ。身近なずころでは建蚭機械、䟋えばブルドヌザヌのブレヌドやパワヌショベルのバケットを動かしおいるのが油圧である。

そう蚀えば、坂井䞉郎氏の著曞『倧空のサムラむ』の䞭で、零戊で蚓緎飛行に䞊がった時に油圧配管が砎れお䜜動油が機内に挏れ出しおしたい、降着装眮を降ろせなくなる話が出おくる。

実は、飛行機の油圧系で䜿甚する䜜動油は䞀目でそれずわかるように、着色しおある。だから、もしも䜜動油が機䜓の倖郚たで挏れ出しおいれば、離陞前の機䜓倖郚点怜の際に目芖確認できる(はずだ)。

その点、電動匏なら電線を匕くだけで䜿えるし、䜜動油の挏掩あるいは挏掩察策ずも無瞁だ。ただ、油圧ず比べるず螏ん匵りが効かないずか、過負荷で停止したずきの動䜜に問題があるずかいう理由で、長いこず油圧が䜿われおきた。

しかし最近、技術開発が進んだこずで、郚分的にだが電動匏アクチュ゚ヌタを䜿甚する機䜓が出おきた。民航機だずボヌむング787ドリヌムラむナヌや゚アバスA380、軍甚機だずF-35がそれだ。

電動化の目的は、たず、油圧に぀いお回る挏れ察策などの問題がないこず。結果ずしお構造がシンプルになるし、敎備点怜にかかる手間や費甚の軜枛も期埅できる。そしお、油圧ポンプや油圧配管を匕き回す代わりに電線だけで枈たせるこずができれば、機䜓の軜量化にも぀ながる。

たた、電動匏にするず運甚䞭に自己蚺断機胜を働かせるこずができるメリットもあるそうだ。するず、䞍具合が発生した時に、それがすぐにわかる。

ただし、電動匏ずいっおも1皮類ではない。A380やF-35が䜿っおいるのはEHA(Electro-Hydrostatic Actuator : 電気油圧匏アクチュ゚ヌタ)ずいい、䜜動の指什が来るず、電動機が動いお油圧ポンプを䜜動させる。぀たり、実際に動翌を動かすのは油圧ポンプだが、その油圧系統はアクチュ゚ヌタの䞭で完結しおいるから、集䞭油圧系の配管を匕き回す必芁を枛らせるわけだ。

ただしA380の堎合、予備系統ずしおEBHA(Electro-Backup Hydrostatic Actuator : 予備電気油圧匏アクチュ゚ヌタ)も甚意しおいる。通垞はモヌタヌぞの電力䟛絊を遮断しお集䞭油圧系で駆動しおいるが、集䞭油圧系が故障するず電力を䟛絊しお電動機で動䜜する。これがあるので、集䞭油圧系がなくなったわけではなく、枛っただけである。

EHAに察しお、EMA(Electro-Mechanical Actuator : 電気機械匏アクチュ゚ヌタ)ずいうものもある。芁するに䜜動そのものを電動化したもので、電動機が盎接、䜜動機構を動かす。もちろん、所芁の力を発揮できるような匷力な電動機がなければ成り立たない。

ボヌむング787の堎合、車茪の回転を止めるブレヌキを油圧匏からEMAに倉曎しおいる。党面電動化により、過熱や発火の歳に䜜動油に匕火する危険性はなくなった。

F-35では、EHAやEMAを䜿甚する操瞊系統党䜓を指しお "Power-by-Wire Architecture" ず称しおいる。担圓しおいるのはムヌグ瀟(Moog Inc.)で、同瀟のWebサむトに解説ず図が茉っおいるので玹介しおおこう。

System Integrator for Lockheed Martin F-35 http://www.moog.com/markets/aircraft/military-aircraft/fighter-trainer/system-integrator-for-lockheed-martin-f-35/◆

この図を芋るず、フラッペロンず方向舵は2重化したEHA、氎平尟翌は単䞀系統のEHA、前瞁フラップは電動匏、ずなっおいる。それぞれが専甚の制埡甚電子機噚を持ち、そこに飛行制埡コンピュヌタから指什が入るわけだ。

ちなみに、ムヌグずいっおも同名の電子楜噚メヌカヌずは別の䌚瀟だが、創業者が同じ䞀族であるらしい。