文書に挿入した画像は、特定の段落に結びつけて管理される仕組みになっている。この仕組みのことを「アンカー」と呼ぶ。今回は、このアンカーの役割について解説していこう。「画像を本文と一緒に移動させるのか、それともページに固定するのか?」を指定できるように、その仕組みを学んでおく必要がある。
本文と画像を分割配置したレイアウト
今回は、以下の図に示した文書を例に「アンカー」の役割について解説していこう。この文書に掲載した画像は本文の内容を補足する図版ではなく、文書を彩るイメージとして利用されている。また、本文と画像の領域を分けて、文書を縦に2分割したレイアウトになっている。
まずは、これまでの“おさらい”も兼ねて、このレイアウトの作成方法から紹介していこう。今回の例では、ページの余白を「やや狭い」に変更することにより、ページ幅を広く使えるように工夫している。
続いて、イメージ画像として4枚の写真を挿入し、それぞれの画像に「四角形」の配置方法を指定する。なお、現時点では4枚の画像をおおざっぱな位置に配置してある。
「図の形式」タブに用意されているコマンドを使って画像の配置を整えていこう。1枚目の画像を選択し、「位置」コマンドで「右上」に配置する。
続いて、4枚の画像を同時に選択し、「オブジェクトの整列」コマンドで「右揃え」と「「上下に整列」を指定する。これで余白を基準に、4枚の画像を右端に揃えて配置できる。
現時点では「本文」と「画像」の間隔が狭すぎるので、この間隔を調整していこう。それぞれの画像に「文字列との間隔」を指定してもよいが、同じ作業を4回も繰り返すのは面倒なので、ここでは「本文の領域」を狭めることにより間隔を調整する。
「ページ設定」ダイアログを開き、「文字数と行数を指定する」を選択する。続いて、「標準の字送りを使用する」をチェックし、「文字数」に適当な値を指定する。今回の例では「文字数」に28字を指定した。
これで「字送り」を維持したまま“本文の幅”を狭くすることができる。その結果、右側の余白が広くなる。この広がった余白部分を“4枚の画像を並べる領域”として利用する。以上が、今回の例で使用するレイアウトのおおまかな作成方法となる。
なお、“本文の幅”を調整する方法は連載第17回で詳しく解説しているので、よく分からない方はあわせて参照しておくとよいだろう。
アンカーの役割
それでは、今回の本題である「アンカー」の役割について解説していこう。以下の図は、本文の途中に改行を挿入した例だ。この操作を行うと、先ほど整列させた画像の間隔がなぜか乱れてしまう。
そのほか、本文を編集したことにより行数の増減があった場合も、同様の乱れが生じる可能性がある。これは、本文と一緒に画像が移動されることが原因だ。詳しく解説していこう。
まずは、位置が移動されていない「1枚目の画像」から解説しよう。この画像をクリックして選択すると、本文の左側に「アンカー」(いかり)のアイコンが表示されるのを確認できる。このアイコンは「画像が所属している段落」を示すものとなる。今回の例の場合、「1枚目の画像」が「スパイスが導く食の冒険」の段落に所属していることを意味している。
「2枚目の画像」を選択したときの様子も紹介していこう。以下の図を見ると、「2枚目の画像」は「特に注目されているのは……」の段落に所属していることを確認できる。この段落は“改行を挿入した位置”よりも下にある。このため、段落の位置は1行分だけ下に移動される。それに合わせて「画像の位置も1行分だけ下に移動された」というのが今回の乱れの原因だ。
このように、画像は単独で存在している訳ではなく、いずれかの段落に所属する仕組みになっている。そして、その段落の位置が上下に移動すると、それに合わせて画像の位置も上下に移動される仕組みになっている。
念のため、今回の例で生じた乱れの原因をまとめおこう。
1枚目の画像
- 所属する段落は“改行を挿入した位置”よりも上にある
- → 段落の位置は移動しない
- → 画像の位置も移動しない
2枚目の画像
- 所属する段落は“改行を挿入した位置”よりも下にある
- → 段落の位置は1行分だけ下へ移動する
- → 画像の位置も1行分だけ下へ移動する
よって、「1枚目の画像」と「2枚目の画像」の間隔が1行分だけ大きくなる。これが乱れの原因となる。なお、「3枚目以降の画像」も段落と一緒に1行分だけ下へ移動されるが、「2枚目の画像」も1行分だけ下へ移動されているため、この部分の間隔は変化しない。
以上が、今回の乱れの原因を論理的に説明したものとなる。ここで覚えておくべきポイントは以下のふたつ。
- 画像は、いずれかの段落に所属している
- 所属している段落の位置が上下に移動すると、それに合わせて画像の位置も上下に移動する
これらを踏まえたうえで、画像の配置を変化させないための対策法を紹介していこう。
画像をページに固定するには?
イメージ用の画像を配置した後に、本文の内容を編集していくケースもあるだろう。このとき、本文の行数が増減すると、それに合わせて画像の位置も移動されてしまう。これでは、せっかくきれいに画像を整列させた意味がなくなってしまう。
このような場合に備えて、画像の位置を固定する方法を覚えておくとよい。設定方法はとても簡単で、「レイアウト オプション」をクリックし、「ページ上の位置を固定」を選択するだけ。これで「段落と一緒に画像が移動される現象」を無効化できる。
設定を変更した後の挙動も紹介していこう。画像をページに固定すると、本文の途中に改行を挿入しても画像は移動されなくなる。もちろん、この設定変更は「2枚目の画像」だけでなく、「3枚目以降の画像」にも施しておく必要がある。
アンカーの移動による対策法
「画像が所属する段落」を変更することにより、画像の位置を固定化する方法もある。続いては、アンカーを移動する対策方法を紹介しておこう。
画像を選択して「アンカー」のアイコンを表示する。その後、「アンカー」のアイコンを一番上までドラッグすると、「画像が所属する段落」を一番上の段落に変更できる。
同様の手順で、3枚目以降の画像についても「画像が所属する段落」を変更していくと、すべての画像が「スパイスが導く食の冒険」の段落に所属するようになる。この段落は本文の編集により位置が移動することはないため、画像の位置も移動しない、ということになる。よって、本文の途中に改行を挿入したり、行数が増減したりしても、画像の配置をそのまま維持できる。
このような対策方法で画像をページに固定することも可能だ。大切なのは「アンカーの役割」を十分に理解しておくこと。これが理解できていれば、画像の配置に関するトラブルを回避できるようになるはずだ。
「レイアウト」ダイアログを使った設定変更
最後に、「レイアウト」ダイアログで設定できる内容について補足しておこう。「レイアウト」ダイアログの「位置」タブには、以下の図に示したようなオプションが用意されている。順番に解説していこう。
「文字列と一緒に移動する」は、段落と一緒に画像を移動させるかを指定する設定項目だ。この項目は「レイアウト オプション」の設定と連動している。この項目をオフにすると、垂直方向の基準が「段落」から「ページ」に変更され、段落の位置に関係なく、画像がページに固定されるようになる。
その他の設定項目についても説明しておこう。「オーバーラップさせる」は、オブジェクト(画像や図形など)を重ねて配置することを許可するかを指定する設定項目となる。この項目はオンに初期設定されているため、通常はオブジェクトを重ねて配置することが可能になっている。この設定項目をオフにすると、オブジェクトを重ねて配置できなくなる。
「アンカーを段落に固定する」は、アンカーの移動を禁止する設定項目だ。この項目をオンにすると、アンカーのアイコン表示に鍵マークが追加され、アンカーを上下にドラッグする操作が実行不可になる。
これらの設定項目は必要に応じてオン/オフを切り替えればよい。
以上が、画像の配置に関連する設定項目となる。一般的な文書ではそれほど気にする設定項目ではないが、画像をイメージとして扱いたいときは、これらの設定項目が重要な役割を果たす。それぞれの設定項目が「何を指定するものか?」を理解しておけば、不可解な挙動に悩まされることなく文書を作成できるようになるだろう。ぜひ、覚えておいてほしい。




















