画像の配置も、Wordの初心者が苦手としている操作のひとつといえる。そこで今回は、画像の配置方法を指定する「レイアウト オプション」(文字列の折り返し)について詳しく解説していこう。文書に画像を掲載するときに必須となる書式なので、必ず理解しておきたい。
「行内」として配置された画像
まずは、文書に「画像」を挿入するときの操作手順から解説していこう。画像を挿入する位置へカーソルを移動し、「挿入」タブにある「画像」をクリックする。続いて、画像の挿入元(どこに画像ファイルが保存されているか?)を選択する。パソコンに保存されている画像を指定するときは、画像の挿入元に「このデバイス」を選択すればよい。
あとは画像ファイルを選択して「挿入」ボタンをクリックするだけ。すると、カーソルがあった位置に画像が挿入される。画像の四隅にあるハンドルをドラッグして、画像のサイズを拡大/縮小することも可能だ。この程度の操作手順であれば、Wordの初心者でも知っているだろう。
では、この画像を別の場所へ移動するにはどうしたらよいだろうか? 画像の移動はドラッグ&ドロップで実行できるが、文中に画像を移動すると、以下の図のようにレイアウトが大きく乱れてしまう。
また、画像を用紙の右下へ移動したい場合など、ドラッグ&ドロップ(画像の移動)が思い通りに機能してくれないケースもある。
このように画像の移動が思い通りにならない理由は、画像の配置方法が「行内」に初期設定されているためだ。この場合、画像が「巨大な文字」として扱われる、と考えると状況を把握しやすくなる。
上図のように、文中に「巨大な文字」を入力すると、その文字サイズに応じて“数行分の行間”が自動的に確保される。これがレイアウトを大きく乱す原因となる。
また、上図に示した「画」の文字を移動できる場所は、“すでに本文が入力されている範囲”に限定されることにも注意しなければならない。何もない空間に、いきなり「画」の文字を入力できないのと同様に、画像を移動できる場所も“本文が入力されている範囲”(または改行が入力されている位置)に限定される。これが画像を好きな位置へ移動できない原因となる。
逆に考えると、画像を文字と同じように扱うことも可能という訳だ。以下の図は、空白の段落に画像を挿入し、その段落に「中央揃え」の書式を指定した例だ。画像を「巨大な文字」として考えると、画像が左右中央に配置される理由を理解できるだろう。
もちろん、同じ段落内にふたつの画像を挿入しても構わない。以下の図は、間に「全角スペース」を挿入する形でふたつの画像を配置した例だ。画像を「巨大な文字」として考えると、この段落は(巨大な文字)(全角スペース)(巨大な文字)の3文字が「中央揃え」で配置されている、という構成になる。
このように画像を「巨大な文字」として考えると、画像の配置や移動に関する挙動を理解しやすくなる。HTMLに詳しい人は、「インラインで画像が配置されている」と考えてもよい。これがWordに初期設定されている「行内」の配置方法となる。
「行内」の配置方法は、論文やレポート、ビジネス文書など、「文章」と「画像」を個別に配置していく場合に向いている。その反面、画像の周囲に文章を回り込ませる、画像をアイキャッチ的な要素として配置する、といった用途には向いていない。
レイアウト オプションの指定
画像を本文から独立させて、好きな位置に配置できるようにするには、画像を「行内」以外の配置方法に変更してやる必要がある。この操作は「レイアウト オプション」をクリックし、以下の図に示したアイコンを選択すると実行できる。
Wordには「行内」のほかに、「前面、背面、四角形、上下、狭く、内部」といった計7種類の配置方法が用意されている。続いては、それぞれの配置方法について詳しく紹介していこう。
「前面」や「背面」で配置した画像
画像の配置方法を「前面」や「背面」に変更すると、画像と本文が別々に管理されるようになり、画像をページ内の好きな位置へ移動(ドラッグ&ドロップ)することが可能となる。
配置方法に「前面」を指定すると、本文の上に重ねて画像が配置されるようになる。このため、画像の下に隠れた本文は読めなくなってしまう。
一方、配置方法に「背面」を指定した場合は、本文の下に画像が重ねて配置される。この場合は、画像に重なっている本文を読むことも可能であるが、読みやすくするには“透かし”のように画像の色合いを薄くする、などの工夫が必要となる。
また、本文と画像が重なっている位置をクリックすると、本文内にカーソルが移動するだけで、画像を選択できなくなることにも注意しなければならない。このような場合に備えて、「背面」に配置した画像を選択する方法も覚えておく必要がある。
「ホーム」タブの「選択」をクリックし、「オブジェクトの選択」をオンにする。すると“オブジェクト選択モード”に切り替わり、本文の下に配置されている画像をクリック操作で選択できるようになる。
なお、通常の“文字選択モード”に戻すときは、もういちど「オブジェクトの選択」を選択してオフにしておく必要がある。忘れないように注意すること。
「四角形」や「上下」で配置した画像
続いては、配置方法に「四角形」や「上下」を指定したときの挙動を紹介していこう。画像の周囲に本文を回り込ませて配置するときは、これらの配置方法を指定するとよい。
以下の図は、画像の配置方法に「四角形」を指定した場合の例だ。この場合、画像の周囲に回り込む形で本文が配置されるようになる。
一方、「上下」の配置方法を指定した場合は、上下方向にのみ本文が回り込むようになる。「行内」と同じような配置方法になるが、こちらは画像を好きな位置(※)へ移動できるのが特徴となる。
※左右方向はページ内の好きな位置へ、上下方向は「本文のある範囲内」で好きな位置へ移動できる。
これらの配置方法は、画像と本文の間隔を調整することも可能となっている。念のため、その操作手順を紹介しておこう。
- 「レイアウト オプション」を開いて「詳細表示」をクリックする
- 「レイアウト」ダイアログが表示されるので、「文字列の折り返し」タブを選択する
- 「上、下、左、右」の数値を変更して間隔を調整する
「狭く」で配置した画像
続いては、「狭く」の配置方法について解説していこう。こちらも「四角形」と同様に、画像の周囲に本文を回り込ませる配置方法となるが、画像を回転させたときの挙動が「四角形」とは大きく異なる。
まずは、配置方法に「四角形」を指定した場合の例から紹介していこう。この場合は、画像の周囲を“四角く回り込む”ように本文が配置される。
一方、配置方法に「狭く」を指定した場合は、画像の“形状に合わせて回り込む”ように本文が配置される。
このため、雑誌やポスターの紙面のようにデザイン性に富んだレイアウトに適した配置方法といえる。ただし、上図のように行を分割してしまうと、本文が読みづらくなってしまうことに注意しなければならない。
「内部」の配置方法の使い方
最後に、「内部」の配置方法について解説していこう。この配置方法は、凹型になっている部分にも本文を回り込ませたいときに利用する。通常、画像の形状は四角形になるため、凹型の部分は存在しない。よって、この配置方法は図形に対して指定するのが一般的な使い方となる。
以下の図は、「月」の図形に「内部」の配置方法を指定した例だ。図形の形状に合わせて本文が回り込んでいることを確認できるだろう。
ただし、凹型の部分が上または下になるときは内部が空白になってしまう。このような場合は「折り返し点の編集」を行うと、図形の内部にも本文を回り込ませることが可能となる。図形を選択し、「図形の書式」タブにある「文字列の折り返し」→「折り返し点の編集」を選択する。
すると、本文を回り込ませる位置を自由に編集できるようになる。具体的には、黒い点で表示された「折り返し点」をドラッグして移動する、ライン上をクリックして「折り返し点」を追加する、といった操作を繰り返して「本文」と「図形」の境界線を編集していけばよい。これで図形の内部にも本文を配置できるようになる。
とはいえ、一般的なビジネス文書では滅多に使わない配置方法になるため、余力があれば覚えておく、といった程度の認識で十分だ。
一般的な使用頻度から考えると、「行内」、「前面」、「背面」、「四角形」の4つの配置方法について学んでおけば十分に対応できると思われる。画像の配置が苦手だった方は、この機会に実際に試してみるとよいだろう。


















