前回、紹介した1ページあたりの「行数」と同じように、1行あたりの「文字数」を指定して文書を作成することも可能となっている。こちらは「1字」の単位に影響を及ばす設定項目となる。今回は、「字送り」や「標準の文字サイズ」といった書式も交えながら、「文字数」の指定方法と考え方について説明していこう。

  • 文字数と字送りの設定、標準の文字サイズ

    文字数と字送りの設定、標準の文字サイズ

「文字数」と「標準の文字サイズ」の関係

「ページ設定」ダイアログには、1行あたり「文字数」を指定する項目も用意されている。ただし、文字数を指定するだけ、というほど単純な設定項目ではない。いくつか注意点があるので詳しく解説していこう。

「レイアウト」タブを選択し、「ページ設定」グループにある「小さな四角形」をクリックすると、「ページ設定」ダイアログが開く。この画面をよく見ると、「文字数」は40字、「字送り」は10.5ptに初期設定されていることを確認できる。

  • 「ページ設定」ダイアログの初期値

    「ページ設定」ダイアログの初期値

これらの設定項目を操作して1行あたりの「文字数」を変更することも可能であるが、現時点ではグレーアウトされているため、値を変更することはできない。というのも、Wordは、1行あたりの「文字数」を「標準の文字サイズ」に応じて自動設定する仕組みになっているからだ。

まずは「標準の文字サイズ」を変更するときの操作手順から解説していこう。「ページ設定」ダイアログの右下にある「フォントの設定」ボタンをクリックする。

  • 標準の文字サイズの変更(1)

    標準の文字サイズの変更(1)

すると、以下の図のような設定画面が表示される。この画面で「サイズ」を変更してから「OK」ボタンをクリックすると、「標準の文字サイズ」を変更できる。ここでは「標準の文字サイズ」を9ptに変更した場合の例を紹介していこう。

  • 標準の文字サイズの変更(2)

    標準の文字サイズの変更(2)

「ページ設定」ダイアログに戻ると、「文字数」が47字に増えていることを確認できる。また、「字送り」は「標準の文字サイズ」と同じ9ptに自動変更されている。

  • 新しく設定された「文字数」と「字送り」

    新しく設定された「文字数」と「字送り」

このように、1行あたりの「文字数」は「標準の文字サイズ」に応じて自動的に決定される仕組みになっている。今回の例のように「標準の文字サイズ」を小さくすると、そのぶん1行あたりの「文字数」は増えることになる。逆に「標準の文字サイズ」を大きくすると、そのぶん1行あたりの「文字数」は減ることになる。

実際の紙面の様子も紹介しておこう。「標準の文字サイズ」を9ptに変更した結果、初期設定(40字)よりも7字多い、47字が1行に収まっていることを確認できる。その結果、全体的にバランスの悪いレイアウトになっているが、「文字数」と「標準の文字サイズ」の関係を学ぶための一つの例として捉えて頂ければ幸いだ。

  • 標準の文字サイズを9ptに変更した様子

    標準の文字サイズを9ptに変更した様子

なお、「標準の文字サイズ」を変更すると、「1字」の単位も変化することに注意しなければならない。今回の例では「標準の文字サイズ」を9ptに変更したので、以降は「1字」=9ptと考えるのが基本だ。これがインデントやタブ位置などを指定するときの基準単位となる。

参考までに「3字」のインデントを指定した例を紹介しておこう。「標準の文字サイズ」で3文字分の余白が設けられていることを確認できるだろう。数値で示すと、9pt×3=27ptの余白が設けられたことになる。

  • 3字のインデントを指定した例

    3字のインデントを指定した例

この数値は“段落の文字サイズ”に関係なく一定となる。インデントやタブ位置における「1字」は、あくまで「標準の文字サイズ」を基準にしたもので、“段落の文字サイズ”を基準にしている訳ではない。これについては第10回で詳しく解説しているので、あわせて参照しておくとよいだろう。

「標準の文字サイズ」の変更方法(補足)

先ほど説明した「標準の文字サイズ」とは、「標準」スタイルの文字サイズのことを指している。よって、「標準」スタイルの書式を変更することにより、「標準の文字サイズ」を変更してもよい。この場合は「ホーム」タブにある「標準」スタイルを右クリックし、「変更」を選択する。

  • 「標準」スタイルの書式変更

    「標準」スタイルの書式変更

すると、以下の図のような設定画面が表示されるので、ここで文字サイズの値を変更する。これで「標準の文字サイズ」を変更できる。

  • 「標準」スタイルの文字サイズの変更

    「標準」スタイルの文字サイズの変更

なお、このボックスに数値を直接入力して、一覧には表示されていない文字サイズを指定することも可能だ。ただし、指定可能な数値は0.5pt単位に限定されることに注意しなければならない。9.7のように0.5で割り切れない数値を入力すると、以下の図に示したような警告が表示されてしまう。

  • 文字サイズに指定可能な数値

    文字サイズに指定可能な数値

このため、「標準の文字サイズ」を細かく変更して「文字数」を調整する、といった使い方はできない。この機会に「Wordで指定できる文字サイズは0.5pt刻み」ということも覚えておくとよいだろう。

左右の余白サイズを変更した場合は?

続いては、左右の余白を変更したときの挙動について紹介していこう。「ページ設定」ダイアログを見ると分かるように、用紙の「左」と「右」の余白は30mmに初期設定されている。以下の図は、これらの値を20mmに変更した例だ。

  • 余白サイズの変更

    余白サイズの変更

この状態で「文字数と行数」タブを選択すると、「文字数」が45字に増えていることを確認できる(文字数の初期値は40字)。

  • 自動変更された文字数

    自動変更された文字数

念のため、紙面の様子も紹介しておこう。今回の例では、左右の余白を10mmずつ小さくしたので、「本文の領域」は20mm広がることになる。それに応じて、1行あたりの「文字数」も増えた、という理屈になる。

  • 左右の余白を20mmに変更した様子

    左右の余白を20mmに変更した様子

このように、1行あたりの「文字数」は「左右の余白」とも連動する設定項目となっている。当然といえば当然の話なので、この理屈については自ずと理解できるだろう。

「文字数」を自由に変更するには?

続いては「文字数」を数値で指定する方法を紹介していこう。「ページ設定」ダイアログを開き、「文字数と行数を指定する」を選択する。すると、文字数のグレーアウトが解除され、「文字数」と「字送り」を自由に指定できるようになる。以下の図は「文字数」に25字を指定した場合の例だ。この場合、「字送り」の値が自動的に17ptに変更される。

  • 文字数の変更

    文字数の変更

「字送り」とは、“文字を配置する間隔”を指定する設定項目と考えればよい。上図に示した例の場合、10.5ptの文字を17.5pt間隔で配置していくことにより、1行あたり25字を再現していることになる。

  • 文字数を25字に変更した様子

    文字数を25字に変更した様子

このように「文字数と行数を指定する」を選択した場合は、文字間隔を自動調整することにより「文字数」を再現する仕組みになっている。要は、文字間隔を強引に広くする(または狭くする)という処理が行われることになる。その結果、全体的に間延びした、読みづらい文書になってしまう可能性がある。

また、この場合は「1字」=「標準の文字サイズ」ではなく、「1字」=「字送り」になることにも注意しなければならない。以下の図は、先ほどの例に3字のインデントを指定した例だ。10.5pt×3ではなく、17pt×3の余白が確保されることを確認できるだろう。

  • 3字のインデントを指定した例

    3字のインデントを指定した例

これまで「1字」=「標準の文字サイズ」と説明してきたが、厳密には「1字」=「字送り」と考えなければならない。

通常、Wordでは「字送り」を「標準の文字サイズ」と同じ値にするのが基本となっている。この場合は「1字」=「字送り」=「標準の文字サイズ」という関係が成り立つ。よって、便宜的に「1字」=「標準の文字サイズ」と説明してきた。一方、「字送り」と「標準の文字サイズ」を異なる値にするときは、「1字」=「字送り」と考えなければならない。

少し複雑ではあるが、Wordを理解するうえで「1字」という単位は非常に重要な概念になるので、頭を整理しながら、よく理解しておく必要があるだろう。

「字送り」を維持したまま「文字数」を変更するには?

最後に、「字送り」を維持したまま「文字数」を数値で指定する方法を紹介しておこう。この場合は「文字数と行数を指定する」を選択し、「標準の字送りを使用する」をチェックしてから「文字数」を指定すればよい。

  • 標準の字送りを使用する

    標準の字送りを使用する

この場合は、用紙の右側の余白を自動調整することにより、指定した「文字数」が再現される。「字送り」=「標準の文字サイズ」の関係性は維持されるため、文字間隔が間延びしたり、狭くなりすぎたりする心配はない。

  • 文字数を25字に変更した様子(字送りは標準)

    文字数を25字に変更した様子(字送りは標準)

念のため、「余白のサイズがどのように変更されたか?」を確認しておこう。「ページ設定」対アログを開いて「余白」タブを選択すると、「右」の余白が87.4mmに自動調整されていることを確認できる。

  • 自動変更された余白

    自動変更された余白

この仕組みを応用して、本文を用紙の左右中央に配置することも可能だ。今回の例の場合、「左」の余白は30mm、「右」の余白は87.4mmに設定されている。これらの数値を平均した、(30+87.4)÷2=58.7mmを左右の余白に指定すると、本文を左右中央に配置できる。

  • 余白を左右均等にする場合

    余白を左右均等にする場合

  • 左右の余白を均等にした様子

    左右の余白を均等にした様子

このように、設定方法に応じて“自動調整される書式”が変化する仕組みになっている。これまでの話を以下にまとめておこう。

◆「標準の文字サイズ」を変更した場合

指定した「標準の文字サイズ」に合わせて「文字数」が自動的に決定される。「字送り」=「標準の文字サイズ」は維持されるため、「1字」=「標準の文字サイズ」と考えて構わない。

◆「左右の余白」を変更した場合

変更後の「本文の領域」に合わせて「文字数」が自動的に決定される。「字送り」=「標準の文字サイズ」は維持されるため、「1字」=「標準の文字サイズ」と考えて構わない。

◆「文字数」を数値で指定した場合

指定した「文字数」を再現するために「字送り」が自動調整される。この場合は「字送り」と「標準の文字サイズ」が異なる数値になるため、「1字」=「字送り」と考えなければならない。

◆「文字数」を数値で指定した場合(標準の字送りを使用する)

指定した「文字数」を再現するために「右の余白」が自動調整される。「字送り」=「標準の文字サイズ」は維持されため、「1字」=「標準の文字サイズ」と考えて構わない。

ちなみに、「ページ設定」ダイアログで指定する「文字数」は、“全角文字だけを配置した場合の文字数”となることも覚えておく必要がある。半角文字は、文字ごとに字幅が変化するため、その内容に応じて1行に収まる文字数は変化する。

以上が「文字数」を変更する際に必要となる“Wordの基本知識”となる。少し複雑ではあるが、順を追って考えていけば、その仕組みを理解できると思われる。「1字」の単位について正しく学ぶためにも、必ず押さえておくべきポイントといえるだろう。