無料ツールによる成功体験でユーザーを取り込む

クライアント管理の自動化ソリューションを提供するKaseyaが、今後どんな展開を考えているのか? 2012年のロードマップと現在取り組んでいる施策について、来日したCMO(Chief Marketing Officer)であるBob Davis氏と、Product Marketing DirectorであるGerald Beaulieu氏に話を聞いた。

Kaseya CMO Bob Davis氏

「Kaseyaは幅広いIT向けソリューションのスイートを用意している。お客様の日々の困ったことをベースに製品作りをしており、業界別のソリューションを構築している。その一例が、Windows 7へのマイグレーションだ。また、個々の悩みに対応するソリューションであるのもポイントで、セキュリティやアプリケーションのアップグレードなどの要求に対応している」とDavis氏はKaseyaの基本姿勢を改めて語った。

そして、幅広い業界へのアプローチとしてKaseyaが用意しているのが、無料のテストツールだ。アクティベーションのための基本情報を登録する必要はあるが、試用期間は定められていない。機能面の制限は、基本機能のみや適用できる台数などいくつか存在するが、しっかりと試用してから本格的な導入を行えるのがポイントだ。無料体験版の提供により、これまでのパートナー経由の販売だけでなく、Webからの直接販売も期待できる。

KaseyaのWebからFree版(英語版)利用の申し込みが可能となっている

「お客様が問題を解決するために検索し、Kaseyaにたどり着き、フリーツールでKaseyaの良さを感じてもらえれば、すぐにWebから購入できる。広くアプローチし、業界別ソリューションへと誘導することで、日本でも広く知ってもらえるようになるだろう」とDavis氏はその狙いを説明する(※日本語版での展開はこれから)。

仮想マシン対応や各種機能強化のロードマップ

2012年のロードマップでは、各種機能の強化とともに、2度のフレームワークのバージョンアップが予定されている。

いくつかある機能強化の中で、特に注目したいのは仮想マシンのマネジメント機能と、Windows 8への対応だ。仮想マシンのマネジメント機能は2012年第2四半期の提供が予定されている。

Kaseya Product Marketing Director Gerald Beaulieu氏

「フレームワークのバージョンアップでは、まず第2四半期にVer.6.3へのアップデートを行い、通知機能の追加などを行う。さらに、第4四半期にはリモートコントロール機能やWindows 8への対応を行ったVer.6.4をリリースする予定だ。またパフォーマンス強化を行い、現在は数万台規模に対応しているところを、数十万台に対応可能にする。これによって大企業への対応力を強化する」とBeaulieu氏は語る。

2012年のKaseyaのロードマップ

Windows 8には即フル対応、日本語にも1カ月でローカライズ

現在、KaseyaはWindows XP等からWindows 7へのマイグレーションを支援するソリューションに注力している。しかし、これはマイグレーションそのものを行う機能を提供しているわけではなく、多数のクライアントを統合管理できるというKaseyaの持つ力を、別の切り口で提供している一例にすぎない。KaseyaではOSの混在環境を管理したり、セキュリティポリシーを守らせるための統合管理などが容易に行えるからだ。

「OSのマイグレーションは、Kaseyaの入口として良いきっかけになる。使ってもらう秘訣は問題解決だ。使ってみたら良かったので使い続けよう、という選び方をしてもらうための入口だ。新しいOSが出るたびにマイグレーションの需要が高まる。Windows 8にもリリース後すぐに対応する予定だ」とBeaulieu氏。日本語対応についても、グローバル版のリリースから1カ月程度で行われる予定だという。

「Windows 7を使わなくてはならないという環境は世界各国で共通した課題だ。その中で日本は、特に組織化してしっかりやろうとしている傾向がある。そのため、マイグレーションには日本の方が成功しているといえるだろう」とDavis氏は、Kaseyaのソリューションが日本の環境に適していると指摘した。

ユーザーの声を聞きながら日本での売上10倍増を目指す

また、モバイル機器がビジネスの場で広がるのに合わせてMDMも強化している。すでにiOSとAndroidの端末については管理対象に含めることが可能で、BlackBerryについても2012年第1四半期から対応が開始されている(※日本語版の展開はこれから)。

「MDMは需要の高いところからスタートした形だ。BlackBerryもサポートしているが、すでに海外でもシェアが急落しつつあるため、初期対応には含めなかった」とBeaulieu氏。市場需要にいち早く応え、需要の少ないところにも後からきちんと対応するという姿勢がうかがえる事例だ。

実際、ロードマップ構築に関してもユーザーのフィードバックを重視し、機能の追加だけでなく使い勝手の改善も小まめに行われているという。

「日本はとても大きなオポチュニティがあり、今のところ大成功している」とDavis氏は評価。日本法人社長である北原氏は、2012年の売上目標を「売上10倍増」と強気に語った。