日本語入力環境(IME)を本格的にカスタマイズしていく前に、誰でも手軽に利用できる「コピー&ペースト」に関連するテクニックをいくつか紹介しておこう。コピー&ペーストを上手に活用すれば、タイピングなしで文字入力を済ませることが可能となる。少し邪道のように感じるかもしれないが、要は「文字を高速に入力できればよい」のである。そういう意味では、コピー&ペーストも立派なスキルのひとつと考えられるはずだ。
文字や文章をすばやく選択する
コピー&ペーストを行うには、最初に「コピーする文字」を選択しておく必要がある。まずは、この操作に関連するテクニックから紹介していこう。
通常、文字を選択するときは、その範囲をマウスでドラッグするのが一般的だ。しかし、状況によっては別の方法を使ったほうが便利(高速)なケースもある。そこで、さまざまな「文字の選択方法」を覚えておくとよい。
最も基本的なのは、文字をダブルクリックする方法だ。この場合、単語単位で文字が自動選択される。以下の図は、Webに掲載されている文字をダブルクリックした例だ。ちなみに、ブラウザにはChromeを使用している。
同じ文章が掲載されているWordでも試してみよう。この場合もダブルクリックした位置にある単語が自動選択される。
このように「単語」をコピーしたいときは、ダブルクリックが効果的に活用できる。ただし、単語として自動判別される範囲はアプリによって異なることを覚えておく必要がある。上記に示した例の場合、Chromeは「光学」の2文字、Wordは「光学式」の3文字が単語とみなされている。
ほかにも、「解像度」と「高解像度」、「没入」と「没入感」のように、同じ位置をダブルクリックしても自動選択される文字はアプリによって変化する(前者はChrome、後者はWordの例)。これらの結果を見ると、Wordのほうが長めに文字を自動選択する傾向があるようだ。
文章全体をコピーしたいときは、トリプルクリックも便利に活用できる。この場合は、トリプルクリックした位置にある「段落」が自動選択される。こちらは、ChromeとWordで特に動作の違いはないようだ。
自動選択された範囲に過不足があった場合は、キーボードを使って選択範囲を拡張/削減していけばよい。たとえば、「Shift」+「→」キーで1文字分だけ拡張、「Shift」+「←」キーで1文字分だけ削減、といった操作が可能である。
これらの操作に「Ctrl」キーを追加すると、単語単位で選択範囲の拡張/削減を行えるようになる。そのほか、「↓/↑」キーを使って行単位で選択範囲を拡張/削減する、「Ctrl」キーを追加して段落単位で選択範囲を拡張/削減する、といった操作も可能となっている。
◆「Shift」+「→/←」
選択範囲を1文字ずつ拡張/削減
◆「Ctrl」+「Shift」+「→/←」
選択範囲を単語単位で拡張/削減
◆「Shift」+「↓/↑」
選択範囲を1行ずつ拡張/削減
◆「Ctrl」+「Shift」+「↓/↑」
選択範囲を1段落ずつ拡張/削減
「Shift」+「→」キーなどの操作は知っている方が多いと思われるが、「Ctrl」キーも併用する方法を覚えておくと、より応用範囲が広くなるだろう。特に画面をスクロールさせながら「長い文章」を選択するときは、マウスをドラッグするのではなく、「Ctrl」+「Shift」+「↓」キーを使って文字(文章)を選択したほうが効率的だ。
なお、これらの操作の対応状況はアプリによっても変化する。よくコピー元として使用されるアプリとしては、Word、Chrome(ブラウザ)、Adobe Acrobat(PDFリーダー)などが挙げられると思うが、上記はWordとChromeに限った話となる。
Adobe Acrobatの場合は、以下のような動作になる。
- ダブルクリックは機能しない
- トリプルクリックで1行を選択
- 「Ctrl」+「Shift」+「→/←」が機能するのは欧文(英数字)のみ
- 「Ctrl」+「Shift」+「↓/↑」は機能しない
※「Shift」+「↓/↑」と同じ動作になる
このようにアプリによって動作が異なるのが難点といえるが、文字選択を高速化するテクニックとして覚えておいても損はないだろう。
コピーした文字を「書式なし」で貼り付ける
続いては、コピーした文字を貼り付けるときの操作について紹介していこう。たとえば、以下の図のように表形式で掲載されている文章を選択してコピーしたとしよう。
「Ctrl」+「V」キーを押して、この文章を普通にWordに貼り付けると、以下の図のような結果になる。文字だけでなく、書式も含めた形でコピー&ペーストされるため、かなり編集しづらい状態になってしまう。
このような場合は「Shift」キーを追加して、「Ctrl」+「Shift」+「V」キーで貼り付け操作を行うとよい。すると、書式が無視され、文字だけを貼り付けることが可能となる。こちらのほうが「以降の編集作業を進めやすい」と感じる方が多いだろう。
「文章をひとつずつコピー&ペーストしていく」という方法も考えられるが、何回もコピー&ペーストを繰り返すのは意外と面倒な作業になる。それよりも一気にコピー&ペーストしてしまい、それを後から編集していくほうが効率よく作業を進められる。
表形式ではない、通常の文章をコピペするときも「Ctrl」+「Shift」+「V」キーを使用するのがオススメだ。普通に「Ctrl」+「V」キーを押した場合、文字だけが貼り付けられているように見えても、よく見ると「微妙に文字サイズが違う」、「改行が段落内の改行(Shift+Enter)になっている」などの不具合が生じているケースがある。このような不具合を回避するためにも、「Ctrl」+「Shift」+「V」キーで貼り付ける習慣を身に付けておくとよい。
もちろん、Excelでも「Ctrl」+「Shift」+「V」キーを利用することが可能だ。以下の図は、Webに掲載されていた表を普通に「Ctrl」+「V」キーで貼り付けた例だ。
上の見出しが1列分だけ左にズレているなどの問題もあるが、それ以上に「書式が引き継がれていること」が大きな問題といえるだろう。
一方、「Ctrl」+「Shift」+「V」キーでデータを貼り付けた場合は、書式を無視して、文字(数値)だけを貼り付けることが可能となる。こちらのほうが「後の編集作業を進めやすい」と感じられるだろう。
このように「Ctrl」+「Shift」+「V」キーを使って貼り付ける方法を覚えておくと、以降の編集作業を進めやすい形でコピー&ペーストを実行できるようになる。まだ知らなかった方は、この機会にぜひ覚えておくとよい。
なお、アプリによっては「Ctrl」+「Shift」+「V」キーの操作に対応していない場合もある。このような場合は、いちど「メモ帳」などのテキストエディターを経由させると、文字だけをコピー&ペーストすることが可能となる。あわせて覚えておくとよい。
Officeクリップボードの活用
続いては、クリップボードの履歴を活用する方法を紹介していこう。通常、クリップボードにコピーできる内容はひとつだけである。別の文字などを新たにコピーすると、以前にコピーした内容は消えてしまうのが一般的だ。
とはいえ、「過去にコピーした内容を再利用したい」というケースもあるだろう。このような場合は、WordやExcelに標準装備されている「クリップボードの履歴」を活用するとよい。「クリップボード」グループの右下にある「小さい四角形」をクリックし、過去にコピーしたデータの履歴を一覧表示する。
あとは、この一覧から貼り付けたいデータを選択するだけ。すると、カーソル位置に「選択したデータ」を貼り付けることができる。
ただし、この場合はコピー時の書式が引き継がれてしまうことに注意しなければならない。書式を無視したい場合は、「貼り付けのオプション」ボタンをクリックし、以下の図に示したアイコンを選択する必要がある。
すると、書式の情報が削除され、文字(テキスト)だけを貼り付けた状態に修正することができる。
Excelの場合も基本的な操作手順は同じ。「クリップボードの履歴」を表示し、貼り付けたいデータを選択する。その後、「貼り付けのオプション」ボタンをクリックして以下の図に示したアイコンをクリックすると、「書式なし」の状態でデータを貼り付けることが可能となる。
このように、Word/Excel/PowerPointでは「クリップボードの履歴」を手軽に利用できるようになっている。便利な機能であるが、意外と知らない人が多いようなので、この機会にぜひ覚えておくとよいだろう。
Windowsのクリップボード履歴を有効化する
Windowsにも「クリップボードの履歴」を表示する機能が用意されている。ただし、この機能はオフに初期設定されているため、利用するには設定変更が必要となる。
スタートメニューから「設定」を選択し、検索欄に「クリップボード」と入力する。すると、候補の一覧が表示されるので「クリップボード設定」を選択する。
クリップボードの設定画面が表示されるので、「クリップボードの履歴」をオンに設定する。
以上で設定変更は完了。クリップボードの履歴を利用したいときは「Windows」+「V」キーを押せばよい(※1)。もちろん、それぞれの履歴をクリックして、その内容を貼り付けることも可能だ。
(※1)「Windowsのロゴ」が記されたキーと「V」キーを同時に押す。一般的な日本語キーボードの場合、最下段の左から2番目(Fnキーがある場合は左から3番目)に「Windows」キーが配置されている。
コピー時の書式を無視して、文字だけを貼り付ける方法も用意されている。この場合は、各履歴の右上にある「…」をクリックし、以下の図に示したアイコンをクリックすればよい。
そのほか、履歴をピン留めする機能も用意されている。ピン留めした履歴は、パソコンを再起動した後も記憶され続けるため、いつでも好きなときに貼り付けることが可能となる。よく使う単語などをピン留めしておくと便利に活用できるだろう。
このように、コピー&ペーストには応用的な使い方も存在する。もういちど復習しておこう。
- 「Ctrl」+「Shift」+「V」キー
書式を無視して、文字だけを貼り付ける - 「クリップボードの履歴
過去にコピーした内容を選択して貼り付ける
Webなどを引用しながら文書を作成するときは、そのつどコピー&ペーストを行うのではなく、必要になりそうな部分をあらかじめ次々とコピーしておき、その履歴を使って編集作業を進めていったほうが効率よく文書を作成できる。
タイピングを速くすることも重要であるが、「どのように文字入力を進めていくか?」を工夫することで日本語入力を高速化する方法もある。そのためにも、コピー&ペーストを効果的に活用する方法を研究しておくと役に立つだろう。