今回も、Webの本文を音声で読み上げてくれる拡張機能「Read Aloud」と「Speechify Text to Speech Voice Reader」の使い勝手を比較・検証していこう。設定変更により“聞き心地”を改善できるのか、「PDF」や「電子書籍」にも対応しているのか、といった点について紹介していこう。
拡張機能の設定変更と応用的な使い方
前回の連載では「Read Aloud」と「Speechify」の基本的な使い方を紹介した。今回は、それぞれの設定変更について詳しく紹介していこう。また、「PDF」や「電子書籍」を音読させたときの挙動についても紹介する。
「Read Aloud」の設定変更
まずは、「Read Aloud」の設定変更について紹介していこう。前回の連載で“かなり機械っぽい”と評していた音声が、設定変更により改善できるのかを試してみよう。
すでに「Read Aloud」による音声読み上げを実行している場合は、「停止」ボタンをクリックして音声読み上げを中断する。
すると、以下の図のような画面が表示される。ここにある「設定」ボタンをクリックすると、「Read Aloud」の設定画面を呼び出せる。
もしくは、ツールバーにある「Read Aloud」のアイコンを右クリックし、「オプション」を選択してもよい。
「Read Aloud」の設定画面が表示される。最も声質に影響を与えると思われる「音声」の変更から試してみよう。最初は「Auto select」が選択されているので、この部分をクリックする。すると、膨大な数の“音声リスト”が表示される。
より自然な音声にしたい場合は、この中から「GoogleTranslate Japanese」を選択すればよい。すぐ下にも似たような選択肢が表示されているが、こちらはジャワ語(Javanese)なので、間違えないように注意すること。
これで、かなり“聞き心地”を改善することができる。初期設定の音声に比べて、「より人間らしい話し方に改善できた」といえるだろう。といっても、完全に自然な音声とはいえない。「Speechify」と同レベルか、少し劣る、といった印象だ。ちなみに、この音声は“女性の声”となる。
そのほか、音声の一覧には「GoogleStandard Japanese(Anna)」などの選択肢も用意されているが、こちらはGoogleの「Text-to-Speech」を契約している方だけが使用可能な音声になる。また、「プレミアムボイス」に分類されている音声は、「Read Aloud」にサインインしている方だけが使用可能な音声となっている。
さらに「オフラインの声」として4種類の音声も表示されるが、これらの声質は初期設定と同レベルの品質で、あまり“聞き心地”のよい音声ではなかった。
よって、実用面から考えると、音声の選択は「GoogleTranslate Japanese」の一択になると思われる。サインインなしで「Read Aloud」を使用するときは、この音声で読み上げてもらうのが最善の使い方になるだろう。
なお、「Read Aloud」の設定画面には、以下の図のような設定項目も用意されている。ここで読み上げる「スピード」を変更することも可能だ。
「ピッチ」の項目で“声の高さ”も調整できると思ったが、値を変更しても特に変化は感じられなかった。機能していないのか、もしくは“特定の音声”でのみ有効になる設定項目なのかもしれない。
その下にある「ボリューム」は音量の大きさ、「テキストの強調表示」は“現在、読み上げているテキスト”の表示方法(なし/ポップアップ/別ウィンドウ)を指定する設定項目となる。
以上が「Read Aloud」に用意されている設定機能となる。設定変更の操作性は、「いちいち設定画面を呼び出す必要があるのが面倒くさい」というのが正直な印象だ。設定を変更する、音声を試聴する、という作業をそのつど画面を切り替えて行う必要があり、少しまどろっこしく感じてしまう。とはいえ、この作業は“最初の1回”だけで済むので、評価を大きく下げるほどの要因ではない。
「Speechify」の設定変更
続いては、「Speechify」の設定変更について紹介していこう。前回の連載でも紹介したように、音声は以下の図に示したアイコンをクリックすると変更できる。日本語向けに10名分の音声が用意されているが、これらのうち“聞き心地”がよいのは「顔写真のある6名」だけ。その下にある「日本国旗のアイコン」の4名は、まだまだ機械っぽい音声になってしまう。
6名とはいえ、男性/女性を含めて、好きな音声を選べるのは評価できるポイントといえるだろう。あらためて聴きなおすと、やはり「Read Aloud」よりも“人間らしい話し方”になっているようだ。
もちろん、読み上げ速度の変更も可能である。こちらは、以下の図に示したアイコンをクリックすると調整できる。なお、「再生/停止」ボタンのすぐ下にある「<<」や「>>」は、読み上げ位置を“前後の文章”へスキップするためのアイコンとなる。
これらの設定は、音声を聞きながら変更することが可能となっている。一時的に音声が途切れてしまうものの、「Read Aloud」に比べると操作性はよい。
そのほか、「Capture and listen」と呼ばれる機能も用意されている。こちらは、マウスでドラッグした範囲だけを読み上げてくれる機能となる。
このように「音声」や「速度」の設定は、サイドプレイヤーで直に変更する仕様になっている。ちなみに、サイドプレイヤーにある「設定」のアイコンをクリックすると……、
以下の図に示したような設定画面が表示される。ここには、
・読み上げている部分をハイライト表示する
・クリックした部分を読み上げる
・マウスホバーした部分を読み上げる
・自動スクロールする
・サイドプレイヤーを表示する
などの有効/無効を切り替える設定項目が並んでいる。これらの設定はWebサイト(ドメイン)ごとに指定する仕組みになっている。
Webサイト単位ではなく、全体の設定を変更したいときは、左側のタブで項目を選択して、各機能の有効/無効を切り替えればよい。以下の図は「Click to Listen」(クリックした部分を読み上げる)の設定画面を表示した例だ。
これまでの話をまとめると、
・音声読み上げに関する設定は、サイドプレイヤーで変更する
・各種機能の有効/無効は設定画面で切り替える
というインターフェイスになっている。
PDFの音声読み上げ
次は、PDFの音声読み上げについて、それぞれの対応状況を確認していこう。なお、「Read Aloud」や「Speechify」はChromeの拡張機能となるため、Adobe Acrobatなどではなく、ChromeにPDFを表示した状態で使用する必要がある。
まずは「Read Aloud」でPDFを読み上げる場合の例だ。操作手順はWebの読み上げと同じで、「Read Aloud」のアイコンをクリックすればよい。
すると、PDFが再読み込みされ、“現在のタブ”でPDFの読み上げが開始される。Webの読み上げと比べて特に変わった点はなく、PDFにも問題なく対応できるようだ。
続いては、「Speechify」でPDFの読み上げを試してみた例を紹介していこう。サイドプレイヤーにある「再生」ボタンをクリックすると……、
“新しいタブ”にPDFが読み込まれる。ただし、この作業に数十秒ほどの時間を要するようだ。また、すぐに本文の読み上げが開始される訳ではない。本文の読み上げを開始するには、画面下部にある「再生」ボタンをクリックする必要がある。
ここで少しだけ問題になるのが、音声などの設定が引き継がれていないこと。正しく日本語で読み上げてもらうには、音声を「日本語の音声」に設定しなおす必要がある。
このように、両者ともPDFの読み上げには特に問題なく対応している。あえて、差を述べるとすれば、「Speechify」は読み上げ開始までに若干の時間を要するのがマイナス点といえる。なお、音声の品質は、Webの読み上げと基本的に同じである。
電子書籍なとの音声読み上げ
次は、電子書籍の読み上げを試してみよう。今回は、ある電子図書館で配信されていた電子書籍を、それぞれの拡張機能に読み上げさせてみた。
「Read Aloud」の場合は、Google翻訳向けのダミーメッセージが読み上げられるだけで、オーディオブックのように使用することはできなかった。
「Speechify」の場合も上手く動作してくれないようで、書籍のタイトルなどが読み上げられるだけ。こちらもオーディオブックとしては使えないようである。
もちろん、電子書籍の配信方法はサービス(Webサイト)ごとに異なるため、一概には判断できない。もしかしたら使えるサイトもあるかもしれないが、あまり期待しない方がよいだろう。
「Read Aloud」と「Speechify」の比較
最後に、「Read Aloud」と「Speechify」の特徴を簡単に比較しておこう。前回と今回の連載で検証した範囲内での評価となるが、それぞれに以下のような傾向があるようだ。
◆Read Aloud
・アカウント登録なしで手軽に使える
・初期設定のままでは機械音声の印象が強い
・音声を「GoogleTranslate Japanese」に変更することで少し改善される
・実用的な日本語音声は1種類のみ(日本語の場合)
・PDFの読み上げにも対応
◆Speechify
・アカウント登録(サインイン)が必須となる
・初期設定のままでは日本語を正しく読み上げてくれない
(日本語の音声を選択する必要がある)
・「Read Aloud」よりも“人間らしい音声”で読み上げてくれる
・実用的な日本語音声は6種類あり、男性/女性などを選択できる
・PDFの読み上げにも対応(少し時間がかかる)
もっと大雑把に総括すると、アカウント登録なしで気軽に使いたい方は「Read Aloud」、より人間らしい音声で聞きたい方は「Speechify」を選択すればよい、というのが今回の実験で得られた結論だ。参考にしてもらえれば幸いである。