マネーフォワードは4月7日、自然言語による対話を通じて、AIが自律的にバックオフィス業務を遂行する新サービス「マネーフォワード AI Cowork」を7月から提供を開始すると発表した。同日には「マネーフォワード AI Vision 2026」と題したイベントを開催し、同社代表取締役社長 グループCEOの辻庸介氏らが説明に立った。
ARR150億円以上を目指す、マネーフォワードのAI戦略
新サービスは、従来のユーザーによる業務遂行を補助する役割のほか、AIがユーザーの同僚(Coworker)として経理・労務・法務などの多岐にわたる業務を自律的に処理。「マネーフォワード クラウド」のサービスラインアップの1つとして提供されるAIサービスとなり、バックオフィス業務の遂行に特化し、マネーフォワード クラウドとの連携が標準設定されている。
ユーザーはMCP(Model Context Protocol)サーバの導入や運用・保守などは一切不要で、専門知識がなくても利用できることに加え、そのほかのAIサービスの契約を行わなくてもマネーフォワード AI Coworkのみで、自律的なバックオフィス業務を体験できるという。
辻氏は、AIの進化に関して「直近1年の進化が早く、特にAnthropicの進化には驚きを隠せない。AIエージェントが自律的に動く仕組みになり、マルチモーダルの進化でさまざまな形式のデータにも対応できるようなった。さらに、モデルの進化で処理能力が爆発的に向上し、ソフトウェアだけでなく、リアルな世界におけるフィジカルAIが注目を集めている」と述べた。
昨今におけるAIの進化の中で、まず同社が取り組んだことが自社のSaaS(Software as a Service)に生成AIを組み合わせ、次のステップとしてAIエージェントの活用だという。同氏によると、ユーザーでもあるフリーランスデザイナーは年末年始に6日間を要していた確定申告を3時間で終わらせたという。
また、3月末にはクラウド型会計ソフト「マネーフォワード クラウド会計」でAIエージェントを通じて会計業務を実行する、リモートMCPサーバを全プランで提供を開始。ユーザーは自前での環境構築なしにAIエージェントを活用できるようになった。先行利用ユーザーのセブンリッチ会計事務所は、顧問先5社における月次の計算表作成をほぼ自動化し、1社あたり平均4時間を要していた作業を最終レビューのみの24分に短縮したとのことだ。
辻氏は「AIエージェントの進化により、できる範囲が広がってきている。当社は自動化されたバックオフィスを目指していくためにも、新サービスを発表する。これは、AIエージェントが同僚としてオフィスを支え、自動化されたバックオフィスを実現していく。利用場面としては、自社におけるバックオフィス業務の直接指示・自動化と、士業事務所での代行業務やアドバイザリーの効率化、自動化を想定している。2030年度までにAI関連でARR(Annual Recurring Revenue:年間経常収益)150億円以上の創出を目指す」と、意気込みを示している。
さらに、SaaS is Dead(SaaSは死んだ)への懸念について同氏は「当社は幸運なことに10年以上、SaaSを提供しており、44万社の顧客を抱えている。そのため業務データもロジックもあることから、そこが強みになるのであればSaaS is Deadは回避できると考えている。AIカンパニーに進化していく」と説明した。
AIが“同僚”として動く「AI Cowork」
マネーフォワード AI Coworkの解説を行った、マネーフォワード 執行役員 ビジネスセグメント CPO(最高製品責任者)の廣原亜樹氏は「新サービスを一言で表すと、企業で業務をするために使うAIエージェントクライアントというような製品。特徴としては、ChatGPTやClaude Codeなどと同様の操作感で自然言語でさまざまな業務が可能であり、業務に最適化されたUX(ユーザー体験)、安心して導入できるガバナンスの3つ挙げられる」と語る。
1つ目の自然言語では複数のAIエージェントが連携し、業務を完結するという。たとえば「今月の経理業務をまとめて処理して」など、曖昧な指示でもAIがユーザーの意図を高度に解釈する。請求書発行、支払依頼、入金消込、資金繰り予測など、複数のAIエージェントが並列・自律的に連携し、業務を完了まで導くとのこと。なお、ユーザー自身で利用するAIエージェントを選択することも可能となっている。
2つ目の最適化されたUXは、チャット形式以外に定型業務を「エージェントリスト」から選択して即座に開始できるなど、業務効率を最大化するUXを採用。AIエージェントから今すべき業務を提案するプッシュ型機能や、社内のナレッジに回答するAIヘルプデスク機能も搭載している。
3つ目のガバナンス機能では、AIが常に正しい社内ルールに従って動くためのガードレール機能を搭載。また、AIが作成した下書きを人間が確認・承認する「Draft & Approve」プロセスやAI監査ログを備える。中堅・エンタープライズ企業でも安心して導入できるガバナンス体制を構築し、AIエージェントをコントロール可能にするエージェントハーネスを有している。
そのほか、同社が開発・提供する「マネーフォワード AIエージェント」に加え、開発パートナーが提供するAIエージェント、ユーザー自作の「マイエージェント」を組み合わせての利用が可能。オーケストレーターエージェントがユーザーの指示から意図を理解し、複数のAIエージェントに業務を振り分けることを可能としている。
加えて、マネーフォワード クラウドの各プロダクトの情報を参照・更新ができる。MCPサーバなどの複雑な初期設定なしで、請求書発行や債務管理、経費精算、会計仕訳などの経理業務、入退社手続や勤怠管理、給与計算、年末調整といった労務業務、そのほか法務業務まで、広範な業務の自律化をすぐに開始できるとのことだ。
新サービスは、AnthropicのClaudeを搭載した高性能な自律型AIエージェントを少ないコード量で構築・組み込みできるフレームワーク「Claude Agent SDK」と「Claude API」を組み込むことで、高度な指示にも対応できる業務品質を備えている。
また、MCPを活用することで、外部ツールやデータとの連携を効率的に実現している。これにより、ユーザーは専門的な設定や複雑な準備を行うことなく、高度なAI機能を円滑に利用することを可能としている。






