
【特別鼎談】
「日本は何を以って付加価値を生み出し、世界に貢献していくのか。国家としての戦略づくりが必要」
「日本は30年間近く、本当の意味でのイノベーションが起こっていないのではないか」――。科学技術立国を標榜する日本だが、近年はAI(人工知能)や半導体、バイオ医薬などの開発で世界から出遅れているのが現状だ。日本のモノづくりを再興するためには何が必要か。経済同友会で副代表幹事をつとめる鈴木氏と南部氏、そして、経済同友会で南部氏と共に先端科学技術戦略検討委員会の委員長をつとめる湯川氏の3氏による特別鼎談―─。
◎CO2資源化研究所社長 湯川 英明
◎帝人元社長 鈴木 純
◎住友商事副会長 南部 智一
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*今回は誌面の一部にある、若者へのメッセージを掲載します
個々の能力や個性を認めてあげることが大事
─ お三方から若い人に向けたメッセージをもらえますか。
湯川 一言で言えば、あきらめるなということですね。既存の制度なんてぶち壊してやるくらいの気概を持って、自分自身を変え、社会を変えていく勇気が大事だと思います。
この30~40年の間に、世界に冠たる日本の半導体やエレクトロニクス産業は韓国や台湾に一気に抜かれてしまった。それは日本企業が技術者を冷遇したからだと思っています。
わたしの同期や後輩でも、バブル崩壊やリーマンショックなどのあおりを受けてリストラされ、台湾や韓国に引き抜かれていった技術者が沢山います。鈴木さんのように研究所出身で大企業のトップになれる人はほんの一握りで、ほとんどの研究者や技術者はやり甲斐を無くした時期があったと思います。
だから、研究者サイドに立って考えたら、わたしはもっと企業が研究者や技術者を大事にし、どうやって彼らのマインドを維持していくか、ということを改めて考えてほしいと思います。
─ 日本の財産は「人」ですからね。
湯川 やはり、いかに彼らが生き生きと働くことのできる環境をつくってあげるかが経営者の役割だと思いますし、逆に言ったら、どんどん大企業から優秀な人材がベンチャーに移ってもらって、日本全体を活性化してもらいたいなと思いますね。
鈴木 わたしはやはり、好きなことをとことんやってくださいということですね。日本人はどうしても周りを気にしすぎるところがあるので、こんなことを言うと語弊があるかもしれませんが、もっと自分の思うように好き勝手にやってもいいのではないかと思います(笑)。
わたしは、個人がもっと思いっきり挑戦できるような社会にならないと、日本は元気にならないと思います。周りを気にして挑戦しない、日本からも出ない、冒険しないというのでは、日本はこれから国際競争を勝ち残っていくことはできません。
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─ これは個人の問題なのか、それとも教育の問題なのか。
鈴木 教育の問題でしょうね。教育の問題は本当に根深くて、これまで話してきた高度人材の育成は高等教育の問題ですけど、実際には家庭教育や初等教育など、いろいろ問題はあります。
やはり、これからの日本は異能の子を褒めて、育み、伸ばすようにしていかないといけない。もっと個々の能力や個性を認めてあげることが大事だと思います。

南部 わたしも教育は大事だと思います。わたしが一回目の米国駐在をしていた時に、当時小学生だった息子が米国で野球のクラブに入ったんです。
息子はバッティングの際、当初は空振りばかりだったんですが、周りが皆、振っている事だけで「ナイストライ!」と言って褒めてくれるんです。すると段々息子もその気になって、そのうち当たるようになったんですね。
ところが、日本に帰国して息子が日本で同じことをやったら、「君は何をやっているんだ。今のは振るべき球ではないだろう」と言って、単打を狙わせ周りが抑えてしまうんです。それで、われわれ家族は日本にはナイストライ文化が無いということを体感しました。
─ これは考えさせられる日米の文化の違いですね。
南部 要するに、異分子を攻撃したり、失敗をさせないようにするのが日本の文化である一方、成功するために挑戦しようというのが米国の文化です。
これは社会全体の価値観でもあるので、なかなか変えるのは難しいかもしれませんが、若い人たちの活力を解放するためには、もっと社会全体が失敗を許容する文化をつくらないといけない。4つ失敗しても、5つ目が成功すればいいじゃないかという価値観を認めていく必要があると思います。
その上で若い人に言いたいことは、ドライビングチェンジです。今のような変化の激しい世界では変化対応力よりも、自ら変化を起こし、スピード感を持って社会をリードしていくような人材が必要です。その意味で、変革をリードするドライビングチェンジという言葉を送りたいと思います。

