ソフトバンクは、6G時代を見据え、新たな構成の基地局アンテナ「機能性ビーム成形レンズアンテナ」をAGCと共同開発し、屋外での実証実験に成功したと3月19日に発表。両社が保有する技術を組み合わせて開発したもので、アンテナ構成の簡素化により、従来比で最大8分の1に省電力化した点を特徴とする。

  • 「機能性ビーム成形レンズアンテナ」の試作品

    「機能性ビーム成形レンズアンテナ」の試作品

今回実施した実証実験により、このアンテナは従来の「Massive MIMOアンテナ」と同程度の通信エリアと通信品質を維持できることも確認。将来的には同アンテナを活用することで、高周波数帯(6GHz以上)の基地局の設置や運用の負担軽減につながることが期待されるとしている。

  • 通機能性ビーム成形レンズアンテナ(右)と、従来のMassive MIMOアンテナ(左)の比較イメージ

    通機能性ビーム成形レンズアンテナ(右)と、従来のMassive MIMOアンテナ(左)の比較イメージ

AI(人工知能)サービスが普及し、モバイル通信のトラフィックのさらなる増加が見込まれるなか、そうした需要に応えるには、広帯域かつ高速・大容量な通信を実現する、高周波数帯の電波の有効利用が欠かせない。

高周波数帯の電波は伝搬損失が大きく、広域なエリアを形成しづらいという特性があることから、特定の方向に指向性を高められるMassive MIMOアンテナが活用されている。従来のアンテナ構成ではユーザー(端末)の移動に合わせて水平・垂直の両方向でビームフォーミング(アレーアンテナからの電波を合成し、特定の方向に集中させて放射すること)を行うため、多数の制御用ICが必要で、消費電力も高くつく。このため、ヒートシンクなど放熱機構の大型化で設置や運用の負担が増えるといった課題があった。

そこで、ソフトバンクはAGCと共同で、基地局アンテナの簡素化・省電力化を可能にする機能性ビーム成形レンズアンテナを新たに開発。6G(第6世代移動通信システム)時代における持続可能な通信インフラの実現に向けて、基地局への適用をめざしている。

機能性ビーム成形レンズアンテナの構成

今回、両社が共同開発した機能性ビーム成形レンズアンテナは、ソフトバンクの通信エリア設計技術やアンテナビーム設計技術と、AGCのメタサーフェスレンズ(薄い基板上に微細な構造を並べることで、電波の進行方向や広がりを自在に調整できる技術)を組み合わせている点が特徴。

メタサーフェスレンズを採用することで、垂直方向のビーム成形に必要なアンテナ素子数を従来比で8分の1以下に低減。制御用ICや関連部材を削減し、ヒートシンクも小型化・軽量化、消費電力を従来比最大8分の1に低減できるとしている。

垂直方向のビームについては、ソフトバンクが持つ前出の技術に基づき、基地局と端末間の距離にかかわらず通信品質を一定に保てるという「コセカント2乗ビーム」特性を採用。安定した通信を追求した。

さらに水平方向のビームについては、メタサーフェスレンズが水平方向のビームフォーミングを阻害しないよう微細構造の設計を工夫。これにより、アレーアンテナからの電波放射と、動的なビーム制御を維持するようにしている。

実証実験の概要

ソフトバンクは、中心周波数29.7GHzのミリ波を利用して、新開発のアンテナの有用性を評価する実証実験を東京・港区で実施した。

この実験では、基地局を想定して地上約8mに設置した機能性ビーム成形レンズアンテナと、ユーザー(端末)を想定して測定台車に搭載したダイポールアンテナの間の距離を変えながら、5G信号を伝送(帯域幅:100MHz)。

SNR(信号対雑音比)を測定して通信エリアの形成を確認するとともに、16QAM(信号の振幅と位相を変化させることで16通りの状態を作り、それぞれにデータを対応させて伝送する方式)の受信信号分布により、通信品質を評価した。

その結果、アンテナ間の距離にかかわらず、測定したほぼ全ての場所で15dB以上の安定したSNRが得られることを確認。また、受信信号分布も乱れることなく16個の位置を明確に区別でき、通信が安定していることを確認したという。

ソフトバンクでは「機能性ビーム成形レンズアンテナを用いることで、従来のMassive MIMOアンテナと同程度の品質で安定した通信エリアを形成できる」と説明している。

  • 「機能性ビーム成形レンズアンテナ」を使用した場合のSNRと受信信号分布

    「機能性ビーム成形レンズアンテナ」を使用した場合のSNRと受信信号分布