日建設計はこのほど、日建設計 東京オフィス内の共創拠点「PYNT」に「地震体験ポート」を開設したことを発表した。
地震体験ポートは2026年3月から常設が始まり、VRを用いた地震の体験や被災後の復旧を考える場として活用するという。
本稿では、筆者が実際に地震体験ポートの地震体験装置を体験した様子をレポートする。
「壊れない」だけでは足りない、復旧まで見据えた設計へ
日建設計 エンジニアリング部門 構造エンジニアリンググループの福島孝志氏は「大地震発生の切迫性が指摘される一方で、われわれの扱える情報や手段も増えてきた」と説明した。
そのうえで、「壊れないようにすることだけを目指すのではなく、壊れたあとの復旧までを含めて設計することが、これからの社会にとって重要になる」と語る。この考えのもと開設されたのが「地震体験ポート」だ。
この「地震体験ポート」では、VRによって地震の揺れを疑似体験できる「SYNCVR」、地震時の建物被災度の把握を支援する「NSmos」、地震後の建物の早急な復旧に貢献する「ダイレクトモニタリング」という日建設計構造エンジニアリンググループが提案する「レジリエンスサポートサービス」の関連開発技術を体験することができる。
「日本では2011年3月11日の東日本大震災を皮切りに、熊本地震、能登半島地震など震度6を超える地震をいくつも経験してきました。これらの被災の経験から、地震防災・減災において重要なのは『建物の耐震性能の向上』だけではなく、『地震後も速やかに社会活動が再開できる建築・都市の回復力』である『レジリエンスの向上』が求められています」(福島氏)
日建設計は、この社会課題の解決に貢献するために、設計から地震後の構造体復旧までを一貫してサポートする「レジリエンスサポートサービス」を開発・構築している。
このサービスは、地震に備える「計画期」、避難の判断や被災度を判定する「応急期」、早期復旧を目指す「復旧期」という3つのフェーズを一貫して支えるサービスだ。
地震体験ポートは、こうした取り組みを体感しながら議論できる「対話と検討」の場として位置付けられている。
VRで関東大震災を再現、想像以上の揺れ
PYNTに赴き、VRによって地震の揺れを疑似体験できる「SYNCVR」を体験させていただいた。
今回体験したSYNCVRは、VRを利用して地震時の建物の揺れをリアルに疑似体験することで、建物の耐震性能について、実感を持ったコミュニケーションができるようにするシステム。このシステムは、計画地の地盤条件や建物の高さ、平面計画、構造、階数などに応じたVR映像を生成することができることが特徴だ。
例えば、震度7の地震時に、鉄筋コンクリート造10階建ての建物の10階にいた場合、その部屋はどのように揺れ、被害状況はどのようなものか、同じ階数でも耐震・制振・免震といった構造が違えばどのように揺れるかを明らかにする映像を自在に作ることができる。
これにVRゴーグルや地震ザブトンを組み合わせることで、まるで自分が被災しているかのような揺れと被災状況を体験することができるのだ。
今回、「もし関東大震災がいま起きたら?」というテーマで、関東大震災時の震度で日建設計本社がどのくらい揺れるのかを「耐震設計」「免震設計」の2つのパターンで揺れの違いを体験した。
今までは「耐震」「免震」の言葉にそこまで大きな違いを感じていなかったが、揺れや室内のものの散乱具合から来る恐怖心は段違いで、改めて建物の設計について考える機会となった。
この地震体験装置以外にも地震体験ポートでは、NSmosシステムや判定レポートのサンプルの展示、ダイレクトモニタリングを活用して、日建設計東京ビル3階に設置されている「ひずみゲージ(構造部材が受けたダメージを測るセンサ)」などを見ることができる。
日建設計は今後このポートに、事業者や自治体・企業、運用者、研究者などといった、地震防災に関する社会課題の解決に取り組む関係者を招くことで、対話と検討を重ね、レジリエンスサポートサービスの共創と進化に取り組んでいきたい考えだという。



