【厚生労働省】予算案審議は急ピッチ 高額療養費引き上げが再び火種に?

高市早苗首相率いる与党が大勝した衆院選が終わり、国会では2026年度予算案の審議が急ピッチで進むことになる。年金や医療といった社会保障関係費は前年度比2.1%増の34兆7088億円で過去最大を更新。これでも医療費の制度改革で歳出改革を行い、社会保障費の伸びを抑えた結果だ。

 この改革には高額な医療費の支払いを抑える「高額療養費制度」の負担上限引き上げによる国費300億円の削減も反映されている。重症や難病の患者負担を増やすため、「政府側の説明が不十分で患者団体や野党が反発した場合、昨年度の予算審議に引き続き大きな火種になる可能性がある」(政府関係者)という。

 厚生労働省は医療費を抑制する狙いで、24年末に高額療養費の負担上限額を引き上げる案をまとめたが、長期治療患者なども含めて全面的に負担増となる内容だったため、患者団体や野党が反発し、いったん凍結。26年度予算編成では「上げ幅を抑え、長期治療患者や低所得者の負担を軽減した案に見直した」(同省幹部)。

 見直し案では、所得に応じた月ごとの自己負担上限額を7~38%程度の引き上げを26年8月から2段階で実施する。負担軽減策として、長期治療患者に配慮して年間上限額も新設し、年収約200万~770万円の層は53万円となる。

 月の上限額を直近12カ月で3回超えた場合に4回目から上限額を下げる「多数回該当」の仕組みは、長期治療患者に配慮し、現行水準を維持する。さらに年収200万円未満は27年8月から4回目以降の上限額を現行の4万4400円から3万4500円に引き下げる。

 先の厚労省幹部は「患者団体の意見を丁寧に反映した改革案だ」と胸を張るが、政府内には同省側の説明力に不安を抱く向きもある。

 冒頭の政府関係者は「厚労省の医療費を抑えたいという思いが先走りして、患者らの怒りを買うような失言をするのではないか」と不安視している。

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