
就活WEB試験、内定者の 4人に1人が不正で内定獲得
「自分の周りでもほとんどの人がやっているんではないでしょうか。仕組み上できてしまいますから」─。新卒世代にWEB試験でのカンニング経験を問うと、こう返ってくる。
企業の調査では「オンライン試験でカンニングを行った企業から内定を得たことがありますか?」という質問に対し、62.5%が内定を得たことがあると回答した。(サーティファイ調べ)
今、企業や教育機関の試験におけるカンニングが常習化し、オンライン試験の信頼性が揺らいでいる。コロナ禍以降、オンライン上での試験や面接が増え利便性が高まった一方で、試験での不正のハードルは一気に下がった。実際学生と接する人事担当は、採用面接やエントリーシートで同じような回答を見聞きするようになり、年々違和感を強めている。
この背景にあるのは生成AIの進化。受験者は自身のスマートフォンでChatGPTなどを用いて、自分のプロフィールや企業情報を個別にAIに学習させ、企業ごとに最適化された模範解答を使用していると推測される。
そうした流れの中、採用する側の企業も対策を打ち始めている。昨年末、ロート製薬ではエントリーシートの廃止を決定し、新たな採用プロセスを開始。
ビジネス技能、資格試験などを開発・主催するサーティファイ(NSGグループ)は、オンライン就職活動経験者(2024年卒業~27年卒業予定)に対しアンケート調査を実施したところ、全体の約6割が「面接中に生成AIを利用」していることが判明した。いわゆる面接中に音声を取り込み、即座にAIが書き出した解答をカンニングに使っているのだ。
同社社長の瀧澤茂氏は、「われわれも想定以上のアンケート結果を見て衝撃を受けた。今後社会的な問題になりうる」と危機感を訴える。
現に、アメリカでは面接中に回答や説明をリアルタイムで表示する「Cluely」などのAIサービスが社会問題化している。日本でも、「kanpeAI」など、HP上で堂々と〝カンペ〟を支援するとうたう企業も出てきている。
また、SPIや玉手箱などのWebテストの強力なカンニングAIが、LINEボットで誰でも気軽に利用できてしまう状況にもなっている。出題された問題をLINEのトークにカメラで撮影すると、3秒程度で正解が表示されるといったものだ。
こうしたAIによる不正が多発する時代に対応すべく、創業以来40年にわたり検定試験を手掛けてきたサーティファイでは、2021年、リモート環境下でも公平・公正に試験を実施できる同社独自のオンライン試験システム「スマート入試」(不正監視AI付きオンライン試験サービス)を開発。7つのAIを使用し、WEBテストを行うPCとは別に、受験者のスマートフォンを使って受験者の不正を監視する。
受験者の替え玉防止の本人認証や、離席をしていないか、PCの死角を監視するなどの機能を持ち、本人の視線の動きなどを自動で数値化。動画解析で受験者の不正の可能性を主催者側に知らせる機能を持つ。
このサービスは現在東京大学、東北大学などの教育機関や、企業の採用試験、昇格試験などで活用され、現在約200機関で導入されている。
昨今、人件費や運搬コストなどの諸物価が上がり、試験会場の運用コストも高騰しているが、同システム導入後は、同社においては8割のコスト削減にも成功している。
人材採用が経営リスクに発展
「学校入試であれば不正をして合格した人間が奨学金をもらう、あるいは企業の昇格試験で不正をするような人が昇給するといったことは許されない。特に企業の採用の入り口で不正を働く人が入社するということは、長期的にも企業リスクであり、経営リスクでもある」と瀧澤氏。この問題をどう解決していくか?
「当然カンニングをする人が一番悪いが、AIの発展が急速に進む時代の前提に、不正をさせない仕組みの設計、構造的課題を理解し対策する必要がある」(同)
AIの進化により「人」の重要性が強調される中、企業の最も重要な財産である「人」を、これまでの評価システムでは正しく評価できなくなってきている。不正を働く人間を組織で抱えることは、経営リスクに直結する非常に大きな問題。今後企業は、不正をしない人間をどう評価・選抜するかという視点を評価プロセスに組み込み、アップデートしていく必要がある。
今後同社では、WEBテストの監視だけではなく、顧客の強い要望もあって、次はWEB面接でのカンニング防止策に乗り出す。このWEB面接を監視する「スマート面接」(名称予定)は3月の完成を目指しており、特許も申請中だ。
「人への投資は企業にとって最大の投資であり、経営問題である。当社の仕組みで今起きている社会的な問題を解決できるように持っていきたい。今後は不正を監視するのではなく、正しくやっている人を正しく評価する、あるいはそれを担保する存在になっていきたい」と瀧澤氏。
経営者は採用試験からリスクを背負う時代─。AIが発展していく中で、どこでAIを活用し、どこで人を評価するか。企業はこれまでの評価自体を考え直すべきときにきている。