トレンドマイクロ取締役副社長・大三川 彰彦が警鐘を鳴らす「サイバーリスクがどう経営リスクにつながるか。 日本企業の認識は甘い」

サイバー攻撃から企業を守る

 ─ AIの進化でDX化が進み、非常に便利になっている反面、組織へのサイバー攻撃が非常に大きな問題になっていますね。

 この混沌とした状況下で、トレンドマイクロの役割、使命は何ですか。

 大三川 「デジタルインフォメーションを安全に交換できる世界の実現」が、われわれのビジョンです。簡単に言えばサイバー攻撃からパソコンを守るということですが、サーバー、デバイス、ネットワーク系をすべて網羅して事業を展開しています。今AIが出てきたということで、実はこのITの技術の進歩とともに、われわれと対峙するサイバー犯罪者が、新しいテクノロジーを駆使してどんどん攻めてくる。そういった犯罪者たちと日々闘わなければいけません。

 ─ サイバー犯罪に関して警察とも連携されていますが、最近の犯罪傾向で感じることはどういったことですか。

 大三川 昔のような愉快犯というよりも、今は完全に金銭目的もしくは、政治問題が背景というふうになってきています。

 サイバー犯罪者からいかに皆さまを守っていくか。これがわれわれのミッションなので、新しいテクノロジーが発展していくデジタル社会、DXが進む中で、皆さまが安心安全に、仕事に専念できる、もしくはそれを享受して楽しむことができるように、裏方で支える存在です。

 日本に本社があり、全世界でサイバーセキュリティのトップ企業として走っているのは当社だけです。昨今経済安全保障やデータ主権などが問題になっていますが、日本本社であるトレンドマイクロだからこそ日本企業を守れると自負しています。そこもトレンドマイクロの使命として、重要だと考えています。

 ─ 最近伸びている市場はどこですか。

 大三川 中東やヨーロッパ、アジアですね。今は経済安全保障やリスクの面で世界中が同じ流れにあります。国や地域の特性などを鑑みたサイバーセキュリティが必要になってきています。

 そういう中でわれわれのような日本企業を採用しようという海外からの動きがあります。

セキュリティをどう高めていくか?

 ─ さて、近年アサヒグループやアスクルなど企業のシステムにランサムウェアの被害が出ていますが、日本のサイバーセキュリティに関する今の体制、課題をどう考えますか。

 大三川 誤解を恐れずに言いますと、日本は経営者のサイバーセキュリティに対する見識が、欧米などに比べると低いと感じます。ヨーロッパやアメリカは、最新のテクノロジーに対する反応や、セキュリティに対する考え方も、国としてコンプライアンス、レギュレーションが明確になってきています。

 海外では犯罪を犯した際の大きなペナルティや、EU域内の個人データ保護法もあり、意識は非常に高いです。

 海外のシステム部門立ち上げに関しても、日本とのスピード感が違うので、日本のグローバル企業も海外にシステム責任者を置いているところも多いです。

 日本は利便性を高めるとか、仕事の効率化という考え方が強く、トップ自らがセキュリティに関しては関与せず任せてしまう傾向もあります。

 しかし、任されたIT部門の方は経営者ではありませんから、会社のリスクがどこに潜んでいるかを知らないのです。

 経営者であれば、当然会社の継続性や株主のことを考えなければいけませんので、もしものときに経営視点で優先順位をつけて判断ができます。

 日本企業はサイバーリスクがどう経営リスクに繋がるかを考える必要があります。

 また、エンドポイント、ネットワーク、クラウドなどから上がってくるデータは、メーカー、ベンダーによってみんな表現が違う。言うなれば色んな方言でシステム責任者に情報が集まってくる状態になっているのです。

 こういったものを1つのプラットフォームで統合的に監視していくという要望も高まっており、当社ではサイバーセキュリティのプラットフォームとしてTrend Vision Oneというソリューションを提供しています。

 ─ 経営者がサイバー攻撃に対して備えておくべきことはどういったことがありますか。

 大三川 1つは危機管理で、起こってしまったときに、会社の継続性に対してどういう守りをしていたのかがポイントです。

 情報セキュリティの担当者が経営陣と常日頃から、会社のリスクは何か、何の業務が止まると致命傷となるのか、どのデータを取られてはいけないのか、そういうことをきちんと理解し合っていると、サイバー攻撃があった時、どこから守るべきか、迅速に対応できます。

 これから日本も欧米並みに、それこそ完全に経営者が責任を負わなければならなくなると思いますので、経営者はしっかり前もって準備しなければいけません。ただこれは、どんなに準備していても、絶対大丈夫という保証は無いんです。

 ただ、もしもの時に、どんな準備をどのようにしてきたか、具体的に経営リスクに対するどんな対策をしてきたか、株主の皆さまなどに対して説明ができるかが経営者の視点では重要になると思います。