
第3の危機を迎えて
肝腎の〝強い日本の経済〟をどう実現していくか─。そうした大事な時に、不祥事も相次ぐ。生成AI(人工知能)の登場は人々を大いに啓発しているが、一方で最新テクノロジーを使ったサイバー攻撃や詐欺行為も多発。
社会には常にプラスとマイナスの現象が並存する。矛盾を抱えながら、一歩一歩前進していくということであろう。
日本は明治維新(1868)以来、150年余を、欧米に追い付き・追い越せでやってきた。欧米に学び、先進国入りを果たしてきたのである。
明治維新、そして、その約80年後の戦後復興期には、国民の間に危機感があった。
欧米の植民地にならないためにはどうすべきかを考え、焦土と化した日本の復興に力を尽くした先人たちがいた。敗戦から80年余が経った今、その危機感が失われ、日本は〝茹でガエル〟状態になっていやしないだろうか。
日本の良さ・長所を踏まえて一歩前に踏み出す時を迎えているのではないか。
共生の思想で
『内は深く、外は広い』という言葉がある。明治の啓蒙家・内村鑑三は『代表的日本人』の中で、二宮尊徳や西郷隆盛、上杉鷹山ら5人を取り上げている。
開墾・開拓者の二宮尊徳、藩財政の立て直しと生活の創意工夫を推進した米沢藩主・上杉鷹山、信仰の世界で救済の思想を説いた日蓮、江戸期に儒学に基づき、人の生き方を説いた中江藤樹、『敬天愛人』の思想で明治維新を成し遂げた西郷隆盛らである。
また、明治初期、札幌農学校(現北海道大学)でクラーク博士に学び、第1次世界大戦期の国際連盟で事務次長を務めた新渡戸稲造は、各国の利害衝突を解決に導くことに奔走。後に、日本の精神規範である『武士道』を著した。
欧米の規範の根底にあるのがキリスト教とするならば、日本には武士道があるとする新渡戸の思想には、相手をリスペクトし、共生の道を探るという考えがあった。
欧米に学ぶ時代から、今は日本が新しい秩序をつくる時に来ているのではないか。
国際人を育てるために設立された国際教養大学(秋田県立)の学長、モンテ・カセムさん(スリランカ出身)は、「日本は寛容の国、赦すという考えのある国」と言われる。欧州やアジアの国々とも連携し、新しい秩序づくりに日本も立ち向かう時を迎えている。