日立製作所では2月19日、2026年春季労使交渉(春季交渉)にあたって同社労働組合より、基本給を底上げするベア(ベースアップ)に相当する賃金改善分として、賃上げ月額1万8000円などを求める要求書が企業側に提出された。
ベア要求は13年連続で、満額回答となった場合の平均昇給率は6.5%。要求額は2025年要求額(1万7000円)から1000円引き上げられ、現在の要求方式となった1998年以来最大となった。また年間一時金(賞与)については6.8ヶ月分が要求された。
「人への投資」を企業成長循環につなげる日立
日立は、“人こそが価値の源泉である”との考え方のもとで事業を展開し、2025年に発表された新経営計画「Inspire 2027」においても、引き続き積極的な人への投資を通じた持続的な成長を目指すとしている。また近年では、同社における海外売上比率の増加や社会イノベーション事業の拡大をはじめとする事業環境の急速な変化が続いており、日々職務に従事する多様な人材の一人ひとりが活躍できる環境の整備が重要だとする。
同社が重視する“総合的な人への投資”は、社員のモチベーション向上、職責に対する高い貢献価値の発揮を経て会社の成長へとつながり、そして改めて人への投資へとつながるという「成長の好循環」の実現に向けた取り組みとのこと。実際に同社の業績は近年成長を続けており、2025年3月期通期決算での売上収益は9兆7833億円、親会社株主に帰属する同期利益は6157億円と、前期比で増収増益となっている。日立 執行役常務 Deputy CHROの瀧本晋氏は「これまで行われてきた人への投資は会社の成長に寄与していると考えている」とした上で、今後も積極的に推進していく方針だという。
そして今年も行われる春季交渉については、「総合的な人への投資について労使で“対話”する場」と捉えているとする。2025年までに行われた交渉では、12年連続で賃金水準の改善が行われ、4年連増でベア水準引き上げ要求に対して満額での回答(2022年:3000円、2023年:7000円、2024年度:1万3000円、2025年:1万7000円)となり、2025年の平均昇給率は6.2%となっている。また2022年度・2025年度には管理職の報酬水準が引き上げられ、社員教育への投資や、育児・介護との両立を推進する働きやすい環境の整備が進められるなど、継続的かつ積極的な動きが見られている。
瀧本Deputy CHROは「前向きに賃上げを検討」
瀧本氏によると、今回の交渉で主に議論される項目は“賃金・賞与”と“働きやすい環境”とのこと。このうち賃金に関する検討の要素としては、マクロ経済の情勢・企業業績・社会的責任・従業員のモチベーションの4項目が、賞与については年度企業業績見通し・支払い能力の2項目が挙げられている。なお、物価高が続く直近3年では物価上昇率を上回る昇給が行われてきたが、今年も継続的な処遇改善を実施する方針だといい、「企業業績を踏まえて前向きに賃上げを検討していきたい」と積極的な姿勢を改めて強調した。
また瀧本氏は、日立として2026年度以降も継続して人への投資を行っていく方針を示し、報酬領域を中心としてさらなる制度拡充を行う意向を表明。社員向け株式報酬制度の導入や、持株会における奨励金の引き上げなど、新制度の整備も進めていくとしている。
要求書の提出にあたり、日立労働組合(日立労組) 中央執行委員長の半沢美幸氏は、「日立労組は上部団体の方針を踏まえ、また経済情勢、企業業績を冷静に分析し、組合員の意見や生活実態などを反映した上で要求を立案した」とコメント。
一方で要求書を受け取った瀧本氏は、「会社としては、人への投資を、社員のさらなるモチベーション向上や高い発揮価値につなげ、会社のさらなる成長を促すための議論を深めていきたい」と方針を述べ、「春季交渉を通じて、労使で真摯に議論を行い、日立の将来の事業成長と社員のさらなる成長につなげていきたいと考えている」と答えた。


