
上場企業と株主の対話の「質」が向上
─ 日本取引所グループCEOの山道裕己さん、日本企業の業績や株価自体は非常に上向きですが、25年の資本市場を振り返っていかがですか。
山道 25年は海外投資家のネットの買いは1-3月が2兆円の売り越しでしたが、4月のトランプ関税以降、11月の第2週までで8兆円の買い越しとなり、1月からトータルで6兆円の買い越しとなりました。この要因の1つはデフレからの脱却です。
デフレの間は「キャッシュ・イズ・キング」で、銀行にキャッシュを置いておけば価値が上がるため、企業も家計も同じ状況でしたが、どちらも利益を生む形にしないと、インフレヘッジができない時代となりました。
もう1つ大きいのは海外投資家の動向です。3年前ぐらいから海外投資家から日本株が再注目され始め、米中間の緊張の高まりなどで中国に向かっていたマネーが日本へ流入してきました。また、米国に集中していたマネーが分散を始め、その対象国の1つが日本になりました。
さらに、14年にNISAが始まって以降、個人投資家の資金が65兆円入ってきていますが、そのうち31兆円は24年の年初からなんです。しかも、その4割、約12兆円は直接日本株に入っています。
残り6割は投資信託になりますが、その10~15%が日本に回ってきており、トータルで約50%の資金が日本に来ているんです。海外投資家、日本の個人投資家ともに、日本に対する注目度は上がっています。
─ 日本取引所は、「資本コストや株価を意識した経営」を訴えてきましたね。
山道 コーポレートガバナンス改革の一環として、取締役会で資本コストと株価の現状の分析と把握、改善プランの立案と開示、そのプランの実行と投資家との対話を通じたブラッシュアップ、という3つをお願いしてきました。
現在までにプライム上場企業の92%が開示し、そのうち71%は開示内容の改訂をしてくれるなど企業の意識は高まっています。
我々取引所は舞台装置を提供している立場で、舞台で主役を演じるのは企業と株主です。その両者の対話の質を上げるようなツールを提供するのが、我々の役割だと思っています。上場企業と株主が直接対話することで、その質を上げて欲しいと思います。
─ 「物言う株主」の存在をどう捉えていますか。
山道 私は「エンゲージメントファンド」と呼んでいますが、私も意見交換をしています。彼らに限らず、株主提案が来たとき、それが合理性のあるものだったら真摯に対話すればいいでしょうし、そうでなければ従う必要はないと思います。そして、直接対話することを恐れないことが大事です。