
前回、集団指導体制となっても、リーダーが「決める」という行為は無くならないことをお伝えした。今回は、その集団指導体制の構成員であるCxO(経営幹部)を、いかにして育成し、どのように構成していくのかを考えてみたい。肩書きを新たにつけて人を配置しただけで、経営が機能するわけではない。その基盤となるのは、やはり人である。
多くの企業でCxOは、財務、技術、戦略、人材、リスクといった専門性を軸に任命される。それ自体は間違っていないが、集団指導体制において求められるCxOは、単なる専門家ではない。自らの専門領域を経営全体の文脈で捉え直し、CEOと対等に議論できる存在であることが求められる。
さらに重要なのは、どのCxOを置くのかという判断自体が、リーダーの戦略に基づくべきだという点である。成長局面にあるのか、構造転換を迫られているのか、あるいはグローバル展開を加速させたいのか。
経営戦略によって、重視すべき論点は異なる。すべての企業に同じCxOの組み合わせが最適なわけではなく、どの機能を独立させ、誰に担わせるかを決めることも、CEOの重要な仕事だ。
では、CxOとしての資質はどのように磨かれるのか。私は、その核心は「視野を立体化すること」にあると思っている。時間軸、空間軸、価値観の違いを重ね合わせ、部分ではなく全体を構造として捉える力である。この力は、座学だけでは身につかない。知識を学ぶことは必要だが、それだけでは視野は広がらない。
子どもが本物の絵を見ることで、絵を見る力を身につけると言われるが、大人になっても同じことが言えるのではないか。本物を見ること、本物に触れることが、視野を鍛える最短の道だ。
経営における「本物」とは、立体的な視野を持ち、異なる価値観や利害を前提に意思決定をしている人間そのものだと思う。そうした人と出会い、交わり、議論する経験が、CxOとしての視座を引き上げる。実際、ダボス会議など、国際的な場での議論を通じて、経営者としての器が一段大きくなったスタートアップ経営者を、私は何人も見てきた。
企業がCxOを育てるためにできることは、研修を増やすことではなく、立体的な視野を持つ人間と交わる機会を意図的に設計することではないだろうか。集団指導体制とは役割分担だけの話ではなく、異なる視野を持つ人材が補完し合い、意思決定を行う構造である。
だからこそ、その中核となるCxOは、制度ではなく、実体験によって育っていく存在なのだと思う。