DMM.com(以下、DMM)はこのほど、「なんでもやってるDMMが本気で描く医療の未来とは~医療をもっと身近に、もっと使いやすく~」と題したメディア向けの勉強会を開催した。本稿では、DMMヘルスケアが取り組むオンラインクリニック事業の動向や、離島・へき地における遠隔診療支援などの事例について紹介する。
DMMヘルスケアは3期目で売上100億円を突破
DMMは会長の亀山敬司氏を筆頭とし、社内カンパニー制度のもとにPF(プラットフォーム)カンパニー、イノベーションカンパニー、トレーディングカンパニーを設置し、多角的な経営を進めている。DMMヘルスケアを運営するヘルスケア本部はイノベーションカンパニーに属する。
コロナ禍でオンライン診療の認知度と需要が高まっていた2021年、DMMはこの変化が一過性のブームではなく医療の進化の兆しであると半判断し、オンライン医療事業に参入した。具体的には、動画配信や電子書籍などのオンラインサービスで獲得した技術と会員基盤を活用して、オンライン診療から処方薬の配送までをワンストップで提供している。
この事業では、医療法人と連携しながら、医療機関とユーザーをつなぐプラットフォームサービスを提供し、誰もがアクセスしやすい、QOL(Quality of Life)の向上を目指した医療体験の実現を目指す。
DMMオンラインクリニックは、事業開始から3期目にして売上100億円を超えた。既存事業のさらなる拡大と新規事業の開発により、2030年までにDMMヘルスケアとして売上2000億円を目指すとしている。
オンライン診療、認知度は高いけど利用者は少ない
新型コロナウイルスの流行拡大を受け、国内では2020年4月にオンライン診療に関する要件の緩和が行われた。総務省の調査によると、医療機関における電話・オンライン診療の導入率は、202年4月の9.7%から2021年6月末には15.0%にまで増加した。
こうした背景により、一般生活者からのオンライン診療の認知度は高く、過去5年以内に病院を受診した経験がある人のうち88.3%が、オンライン診療の存在を知っていると回答した。
しかし、実際に利用したことがあるという人はわずか8.4%で、オンライン診療を知っている人の約9割が未経験というギャップも明らかになっている。
医療機関にとっては、オンライン診療を開始する際の経済的負担や、業務の複雑化、需要の不確実性が障壁となっている。一方の生活者は安心・安全に対する不安や、デジタルリテラシーの不足、近隣の医療機関が対応していないことなどが、オンライン診療利用の障壁と考えられる。
こうした課題に対し、DMMヘルスケア本部の坂田直樹氏は「自社開発してきたDMMオンラインクリニックのプラットフォームと、DMMがこれまで動画配信や電子書籍などで獲得した約5000万人の課員基盤を活用し、オンライン診療の認知拡大と利用者の増加を図る」と、方針を語っていた。
そのための具体的な取り組みが、オンライン診療の裾野を広げる「DMMオンラインクリニック」と、医師の偏在といった地域課題を解消する「誰も取りこぼさないオンライン診療」だ。
オンライン診療は多様な年齢層に拡大中
DMMオンラインクリニックは2021年のサービス開始以来、2025年11月までに累計200万件の診察に対応した。これまでに男性AGA(薄毛・抜け毛治療)や女性向けのメディカルアイラッシュなど性別での診療に加え、不眠症や花粉症、二日酔いといった男女共通の診療領域など、自由診療の計16領域の科目を提供しており、24時間対応しているのが特徴だ。
同サービスは2024年10月から2025年9月までの1年間において、前年同期比で164%の成長を記録したという。メディカルスキンケアは196%、男性向けAGA治療は184%、女性向けAGA治療は178%だ。
若年層が中心と思われがちなオンライン診療だが、実際はそうではないという。男性の利用者分布を年代別に見ると、20代以下が16%、30代は26%、40代は31%、50代以上は28%だ。女性も同様に世代間の差は小さく、オンライン診療は中高年層へも拡大していることがうかがえる。
患者のペイシェントジャーニー(患者が体験する一連のプロセス)を想定すると、現状のDMMオンラインクリニックは「診断・治療」に相当する。同社は今後、同じく「診断・治療」領域の保険診療や薬局事業などにも事業を拡大する方針だ。
それと同時に、「健康維持・増進」段階に相当する健康食品やサプリメント、化粧品など、入り薬品以外の領域にも挑戦し、既存患者とのクロスセルも検討するとのことだ。加えて、食事管理や運動アプリなどPHR(Personal Health Record)の取り込みも検討する。
オンライン診療で離島やへき地の医療課題を解決へ
同社はオンライン診療のノウハウを活用して、離島など医師の偏在が課題となっている地域の自治体や医療機関を支援する取り組みを開始している。
具体的には、鹿児島県内の複数の離島を多少に、徳之島病院と連携してオンライン診療の実証実験を実施した。診療科目は精神科。4回の実証実験で約50回の診察を実施したという。
与論島や沖永良部島など離島が散在するこの地域では、徳之島から月に一度ほど医師が巡回診療を行っていた。しかしこの地域は台風も多く、船や飛行機が移動できずに診療が行えない問題が発生していたそうだ。
そこで同社は、島の保健センターと徳之島病院をオンラインでつなぎ、医師が移動せずに診察できる環境を構築した。個人宅ではなく地域の医療拠点を利用することで、ツールの導入やシステム運用のハードルを低減した。
実証実験の結果、離島住民がオンライン診療を体験することで、対面診療と比較した際の不安が払しょくされることが明らかになったという。また、実証前は患者側にITリテラシーやデジタルデバイスの普及が求められるという課題も考えられたが、どちらも問題には至らなかったとのことだ。
坂田氏は「離島の方は離れて暮らす孫など、家族と普段からオンラインでコミュニケーションをしている場合が多い。そのため、当初心配していたよりも高いITリテラシーを持っていることがわかった」と語っていた。











