Databricksは2月9日(米国時間)、年間売上高換算54億ドルに達し、第4四半期に前年同期比65%の成長を記録したと発表した。そのうち14億ドル超はAI製品によるものとなる。

AIが変えるSaaSのUIと参入障壁

Databricks 共同創業者兼CEOのAli Ghodsi(アリ・ゴディシ)氏は、この成長率を公表した理由について、AIがSaaS(Software as a Service)ビジネスを殺すのではないかという議論が多いからだと語っている。

同氏は「多くの人が『SaaSはもう終わりじゃないか?これらの企業はどうなる?AIがどう影響する?』と言っている。しかし当社にとっては、単に製品の利用量が増えているだけだ」と述べている。同社が民間市場でAI企業として評価されていることをふまえ、SaaS企業というレッテルから距離を置きたいと読み取れる。

同社は70億ドル超の投資を完了しつつあり、内訳は評価額1340億ドルで約50億ドルの株式調達と、さらに20億ドル規模の追加の負債枠だ。新たな資金により、同社はAIエージェント向けに構築されたサーバーレスのPostgresデータベース「Lakebase」と、あらゆる従業員がデータと対話できる会話型AIアシスタント「Genie」の開発を加速させるという。

Genieは、SaaSのUIを自然言語に置き換えるという。ゴディシ氏は、例えば特定の日に売り上げが急増する理由を尋ねるためにGenieを使っているとのこと。数年前まで、そのような要求には特定の技術的言語でクエリを書くか、特別なレポートを作成する必要があったが、現在ではLLMインタフェースを備えた製品なら誰でも使えると指摘。

ゴディシ氏は「なぜ基幹システムを移行する必要がある?移すのは大変だ」と語っており、AIモデルの提供企業は基幹データベースそのものを提供しているわけではなく、むしろユーザー向けには自然言語のUI、AIエージェント向けにはAPIやプラグインを提供しようとしている。

SaaS企業にとっての脅威とは、SalesforceやServiceNow、SAPなど特定製品のスキルを築く必要がなくなる点だという。ゴディシ氏は「世界中の何百万人がSaaSのUIの使い方を学んできた。それこそが、あのビジネスが持つ最大の参入障壁だった」と述べている。

AIによる自然言語UIの普及は、これまでSaaS企業が築いてきた“UI習熟”という参入障壁を急速に低下させつつある。専門的な操作を覚える必要が薄れ、AIネイティブの企業がより直感的な体験を提供しやすくなる点こそ、本質的な変化だ。2月9日付のTechCrunchが報じている。

大型資金調達の背景とIPOの方針

一方、Databricksは大型調達をクローズしたが、同社は当面追加の資金調達やIPO準備に動く予定はなく、現状では上場に適した時期ではないとしている。同氏は「市場が2022年のように再び悪化した場合に備え、とにかく資本を厚くしておきたかった。十分な資金があれば守りが固くなり、多くの年月を走り続けられる」と話す。当時はゼロ金利が長年続いた後に金利が急上昇したための守りを固める意図があるようだ。

今回の資金調達には、新規および既存の投資家が参加。JPMorgan Chaseは、同社のSecurity and Resiliency Initiative内に新設されたStrategic Investment Groupを通じて投資を拡大。

Series Lラウンドの既存参加者に加え、今回の追加クローズにはGlade Brook Capital、Goldman Sachs AlternativesのGrowth Equity、Microsoft、Morgan Stanley、Neuberger関連ファンド、カタール投資庁(QIA)、UBS関連ファンドなどが参加した。信用供与はJPMorgan Chase Bankが主導し、Barclays、Citi、Goldman Sachs、Morgan Stanleyが続き、その他の主要金融機関やオルタナティブ資産運用会社も加わった。

投資は、Databricksが第4四半期に事業全体で引き続き、強い成長を示したことを受けたものだ。年間売上高換算で54億ドル、AI製品の年間売上高換算が14億ドルを突破したことに加え、過去12カ月でプラスのフリーキャッシュフローとネットリテンションレート140%以上を維持し、年間売上100万ドル超の利用を行う顧客が800社以上、同1000万ドル超の利用を行う顧客が70社以上となっている。

ゴディシ氏は「われわれは2つの新しい市場を狙う次の章に向け、投資家から圧倒的な関心を受けている。この新たな資本により、開発者がAIエージェント向けの運用データベースを構築できるLakebaseの強化に本腰を入れる。同時に、あらゆる従業員がデータと会話し、正確で実用的な洞察を得られるようGenieの投資も拡大する」と述べている。

また、JPMorganChaseのSecurity and Resiliency InitiativeにおけるStrategic Investment Group 責任者のTodd Combs氏は「Databricksは、エンタープライズデータとAIの基盤となる世代を代表する企業であり、重要産業の組織が機会をつかみ、課題を克服するための力となっている。今回の初回投資は、Databricksの安全なプラットフォームの強さを示すものであり、世界中の顧客を支える革新的で大規模運用可能なアプリケーションへの支援を継続する狙いもある」とコメントしている。