第二次トランプ政権の発足から一年が経過し、世界経済は「トランプ関税」という巨大な変動装置に翻弄され続けている。

就任直後から矢継ぎ早に繰り出された関税攻勢は、当初の予測を上回る規模で国際貿易の構造を塗り替えた。この一年の動向を振り返ると、米国第一主義がもたらした光と影が鮮明に浮かび上がる。

同政権は発足当初から、中国への一律追加関税に加え、カナダやメキシコに対しても25%の関税を課すという強硬姿勢を示した。

特に、2025年4月に発動された「相互関税」(Reciprocal Tariff)は、相手国の関税率に合わせて米国の関税を引き上げるという応報的な仕組みであり、これが貿易相手国の激しい反発を招いた。カナダでは対米感情の悪化から政権交代を促す一因となり、欧州やアジアでも報復関税の連鎖が起きた。これにより、自由貿易を基盤としてきたグローバル・サプライチェーンは、政治的リスクを前提とした「ブロック化」への移行を余儀なくされている。

米国内経済に目を向けると、その影響は複雑だ。関税は米政府に莫大な税収をもたらしたが、一方で輸入物価の上昇という形で消費者の家計を直撃した。

2025年後半には、沈静化しつつあったインフレ率が再び頭をもたげ、生活必需品やエネルギー価格の上昇が低所得層の負担を増大させている。製造業においては、関税保護によって国内回帰を果たす企業が現れる一方で、原材料コストの高騰に苦しむ中小メーカーも少なくない。皮肉にも、製造コストの上昇が米製品の国際競争力を削ぐというジレンマが顕在化している。

日本を含む同盟国への影響も深刻だ。相互関税の導入により、日本の実質GDPには最大で1.8%程度の押し下げ圧力がかかったとの試算もある。自動車や鉄鋼といった基幹産業は、対米輸出の維持と第三国への市場開拓という二正面作戦を強いられた。

しかし、こうした摩擦の影でディール(取引)を模索する動きも加速している。トランプ大統領は関税を外交のレバレッジとして活用しており、交渉に応じる国に対しては例外措置をちらつかせることで、自国に有利な譲歩を引き出し続けている。

2026年に入り、過激な関税合戦は「常態化」という新たなフェーズに突入した。企業はもはや一時的な混乱としてではなく、不確実性そのものを経営の前提として組み込んでいる。

トランプ関税の真の評価を下すには、今後始まるUSMCA(米国・メキシコ・カナダ協定)の再交渉や、米中間の新たな合意の成否を待たねばならない。世界は今、予測不能なリーダーが振るう関税というタクトに合わせて、不協和音を奏でながらも新たな経済秩序を模索している最中だ。