【高市政権の成否は速さ】ニッセイ基礎研究所チーフエコノミスト・矢嶋康次

高市政権は高い支持率を維持し、国民の期待も大きい。高市政権が掲げる「高圧経済」による危機管理投資など、官民連携で進める積極的な投資戦略はよく練られている。

 危機管理投資の観点では、副首都構想を軸に、東京の不測事態に備える体制づくりが重要だ。これは連携している維新との文脈に使われる。世界的にも安全保障や経済安保環境は厳しさを増し、政府主導で臨む必要性は高い。また、民間設備投資が低迷したままでは、来る高齢化・人口減少時代への対応が困難になる。アベノミクスが民間主導だったのに対して、今回は国が主導する大型投資が設備投資を押し上げる流れとなる。

 もっとも、高市政権の手法には、財政規律への懸念など反対意見も多くある。しかし課題山積の日本に残された時間は少ない。動き出した以上は成功させてほしい。カギとなるのは、短距離走を走り抜くことである。

 高圧経済は、需要超過と一定のインフレを許容し、人手不足を通じて企業の省力化投資を促し、賃上げと生産性向上を引き起こすことである。これが定着すれば供給力が高まり、需給ギャップは縮小して、物価抑制にもつながっていく。

 問題は、インフレ局面で補正予算を組み、安易なばらまき的対応をしても、国民の不満は決して収まらないことである。政権が支持率を維持し、政策の推進力を確保し続けるためには、インフレを許容する期間を極力短く抑えなければならない。実際、コロナ禍以降の諸外国では、インフレで国民の生活が苦しくなると、時の政権は崩壊してきた。日本でも前政権下では、生活実感の改善が進まず、インフレが政権の重荷となり続けた。

 また、長期金利と名目成長率の関係も重要だ。日本はようやくデフレから脱し、値上げ環境が整ったことで、名目成長率の浮上を期待できるところまで来ている。

 しかし、景気が良くなると経済の体温が上がって、長期金利も上昇してくる。そして、これが名目成長率を上回ると、成長が債務の重みを軽くする財政の好循環が止まってしまう。当社が10月に公表した中期見通しでは、これから5年程度で金利が成長率を逆転し始める。高市政権となって名目成長率は当社の予想よりも上にいくだろうが、長期金利も上にいくのと見るのが自然だ。財政面で自由度はかなり短い。

 高圧経済の下で、危機管理投資と成長戦略投資を進め、日本を再度活性化する高市戦略は、すでに動き出している。あとは「時間」との勝負である。目下最大の関心事は、26年の通常国会にある。石破政権下で作られた予算に、どれだけ高市色が反映できるか。投資が実を結び、生産性向上や賃金に反映されるには年単位の時間が掛かる。高市政権の成否を握る「速さ」に注目だ。