KDDIは2月6日、2026年3月期第3四半期の業績に関して説明会を開いた。なお、決算資料における業績については、連結子会社における不適切な取引の疑いの影響を考慮した参考値であり、今後修正される可能性があるとのことだ。

同社は1月14日付で、連結子会社であるビッグローブ、およびその子会社であるジー・プランの広告代理事業において、社員による不適切な取引が行われていた疑いがあったことを報告した。本件については特別調査委員会を設置し、調査を継続中。また、これに伴い、第3四半期までの連結決算の発表は延期となる。

業績説明の冒頭、代表取締役社長 CEOの松田浩路氏は「当社グループ全体の信頼を揺るがしかねない重大な事案と認識している。このような事案が生じたこと、未然に防げなかったことに、経営トップとしての責任を痛感している。子会社における不適切な取引の疑いにより、お客様、お取引先様、株主・投資家の皆様、従業員をはじめ多くの関係者に迷惑と心配を掛けたことをお詫び申し上げる」と述べ、謝罪した。

  • KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

    KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

なお、不正な取引の疑いについては、ビッグローブおよびジー・プランの広告代理店業務において発生したものであり、ビッグローブを含め通信サービスの提供には影響がないとのことだ。

  • 特別調査委員会による調査が進行中のため、第3四半期までの決算短信の開示を延期する

    特別調査委員会による調査が進行中のため、第3四半期までの決算短信の開示を延期する

連結子会社の架空取引で2460億円を過大計上、さらに330億円が外部へ

KDDIは1月、ビッグローブおよび同社子会社であるジー・プランの広告代理業務において、社員2人の関与による不適切な取引が行なわれていた疑いが判明したことを報告していた。

架空取引の概要は以下の通りだ。まず、ビッグローブとジー・プランが手掛ける広告代理事業は、上流の広告代理店と下流の広告掲載代理店をつなぐ、広告枠の仲介ビジネスである。事案に関与した疑いのある社員2人は、広告主が存在しないにもかかわらず広告代理事業の架空取引を行い、複数年にわたって売上高を計上した疑いがある。

上流の広告代理店から受注した広告代理業務に対し、下流の掲載代理店を通じて再度上流の広告代理店に還流させることで、実態のない取引を計上するスキームだ。これにより、売上および利益の過大計上と、手数料の外部流出が発生した。

  • 不正取引の概要図

    不正取引の概要図

2025年10月頃より、ビッグローブとジー・プランの広告代理事業の管理体制を強化するため、社内監査役と内部監査部門によって取引の妥当性に関する調査が実施された。しかし、ここでは疑わしい取引の発見には至らなかったという。

2025年12月に一部の広告代理店からの入金が遅延したことをきっかけに、関係者からの証言も得たことで、売上などが過大に計上されていた可能性が認識された。2026年1月14日には外部の公認会計士と弁護士のみで構成される特別調査委員会を設置。現在も調査が進められている。3月末をめどに調査報告書を公表予定だ。

本事案を受け、KDDIはビッグローブとジー・プランの広告代理事業としての過去の売上に相当する計2460億円を、過大計上に相当するとして取り消した。営業利益は約500億円、外部に流出した疑いのある額は約330億円に上る。

なお、これらの額はビッグローブとジー・プランにおける過去の取引がすべて架空取引であると仮定した試算であり、今後の特別調査委員会の調査結果によっては変動する可能性がある。

  • 2460億円の売上計上を取り消した

    KDDIは2460億円の売上計上を取り消した

モバイル事業が成長拡大をけん引

上記事案の影響によりKDDIの決算報告が延期されたため、以下の業績は参考値として記載する。なお、資料中の数値には架空取引に関する修正が反映されている。

第3四半期までの連結業績を見ると、売上高は対前年同期比で3.8%増となる4兆4718億円、営業利益は同2.0%増の8713億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同5.3%増の5540億円だ。

  • 連結業績(参考値)

    連結業績(参考値)

事業セグメント別の営業利益は、モバイル事業が同272億円増、金融・エネルギー・ローソン持分法利益が同182億円増、DX(ビジネスセグメント)が同85億円増、技術構造改革が同129億円増となった。過年度の販促費の影響として289億円のマイナスを計上した。その他を含めると全体で174億円増加している。

  • 営業利益の増減要因(参考値)

    営業利益の増減要因(参考値)

第3四半期単独における事業セグメント別の営業利益では、モバイル事業が同161億円増、金融・エネルギー・ローソン持分法利益が同55億円増、DX(ビジネスセグメント)が同46億円増、技術構造改革が同33億円増となった。過年度の販促費は前期までに収束し、第3四半期は23億円のプラスに転じている。

  • 第3四半期単独での増減要因(参考値)

    第3四半期単独での増減要因(参考値)

ビジネスセグメントは各事業が拡大し成長

連結業績からうかがえるように、KDDIはモバイル事業の収入拡大が好調だ。モバイル収入は2024年3月期を底に回復基調にあり、2026年度3月期は成長を加速させている。前年同期比では299億円の増収だ。

  • モバイル事業の成長が加速している

    モバイル事業の成長が加速している

松田氏はその要因について「過当な販促競争からLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を重視した取り組みへと構造変革を進めており、価値作りによるARPU(Average Revenue Per User:ユーザー当たりの平均売上高)成長と契約率の低下により、筋肉質な事業基盤の構築が進んでいる」と解説した。

  • KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

LTVの最大化に向けては、端末セット販売の推進や、金融・エンタメ・ローソンなどと連携した高付加価値サービスを展開する。また、5Gやau Starlink Directの提供エリア拡大など、"つながる体感"の価値提供に向けた動きも強める。

こうした取り組みの結果、第3四半期単体でUQ mobileからauへのブランド間移行がプラスに反転した。さらに、モバイルARPUは前年同期比で190円上昇している。また、契約が長期化する傾向も見られ、解約率の低下にも寄与しているという。

  • モバイルARPUが向上している

    モバイルARPUが向上している

第2四半期の決算会見において下期以降に取り組みを推進するとしていたDX(ビジネスセグメント)も着実な成長を見せ始めた。モバイル / IoT / データセンターが増益をけん引したほか、課題としていたBPOおよびSI事業は第3四半期に増益に転じた。

ファシリティソリューションやStarlink、ドローンといった新規商材も受注環境は良好であり、松田氏は「なんとかここまで持ち返してきた」とコメントしていた。

  • ビジネスセグメントの業績

    ビジネスセグメントの業績

「AIデジタルベルト構想」で産業競争力強化に貢献

大阪堺データセンターの稼働開始をはじめAI基盤の構築を進める同社だが、今後は通信基盤とAI基盤の両面から国内のデジタル社会を支える方針だ。

「AIがあらゆるシーンに溶け込む中、AI同士の通信を低遅延かつセキュアに処理できる基盤が必要」(松田氏)だとして、同社は「AIデジタルベルト構想」を打ち出した。これは、多摩や小山のデータセンターと、大阪堺データセンター、さらには2月に立ち上げ予定の宮崎通信拠点をAIデータセンターに拡大し、全国規模でAI基盤を整備するという構想だ。

国内の通信網だけでなく、陸揚局と光海底ケーブルを結びハブ化を推進することで、海外のAI需要取り込みにもつなげる。

  • AIデジタルベルト構想を打ち出した

    AIデジタルベルト構想を打ち出した

さらに、KDDIの中間持株会社であるKDDI Digital Divergence Holdingsと、その完全子会社であるアイレットは4月1日に、合併してKDDIアイレットとして始動する。KDDIアイレットは、AIデジタルベルト構想の上でAIの社会実装を担う。

KDDIグループが持つ専門性と技術を集結するだけでなく、本社の営業やコンサル人員を100人規模で統合する。今後は継続的にAIエンジニアの拡大を図り、2028年度には3000人規模の体制を構築するという。

  • KDDIアイレットを設立した

    KDDIアイレットを設立した

説明会の最後に、松田氏は「再発防止とガバナンス強化はもとより、事業成長による強固な経営基盤にしていくことこそが、期待に応え責任を果たす道であると考えている。私自身が先頭に立ち、汗をかきながら歩みを進めていく」と述べていた。

2026年度3月期末の本決算については遅延なく実施予定とのことだ。

  • KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏