Zendeskは1月28日、「CXトレンドレポート」の2026年版と日本の調査結果を公開した。同調査ではAI、データ、人の理解をリアルタイムに組み合わせる「コンテクスチュアル・インテリジェンス」が、サポートサービスの定義そのものを再構築していることを明らかにした。同日に記者説明会を開催した。

Zendesk CXトレンド調査の概要 - 22カ国1万1000人のグローバル分析

同レポートは、グローバルで1万1000人以上の回答者から得られた知見にもとづいており、2025年6月に22カ国で実施された2件のグローバル調査を統合(回答者の内訳:消費者6182人、CXリーダー、サービスマネージャー、サポート担当者を含む企業関係者5115人)している。

調査対象国はオーストラリア、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、デンマーク、フランス、ドイツ、インド、イタリア、日本、マレーシア、メキシコ、オランダ、フィリピン、シンガポール、韓国、スペイン、スウェーデン、タイ、イギリス、アメリカ。日本を含む世界各国の消費者、CXリーダー、カスタマーサポート担当者への調査結果をもとに、同社の視点からCXの最新動向と今後のトレンドを示している。

Zendesk 代表執行役社長の森太郎氏は、昨今の国内顧客の動向について「CXの業界においてもAIの実装が大きく前進している。当社のAI機能を検証し、導入・稼動させる企業が増加している。また、複雑化している問合せに対してサポート担当者、ユーザー双方が簡潔さを求めており、複数のチャネルやデータにシンプルな画面で対応することが求められているが、AIの機能でサポートできるようになっている」と述べた。

  • Zendesk 代表執行役社長の森太郎氏

    Zendesk 代表執行役社長の森太郎氏

森氏はレポートの結果をふまえ「AI全盛期ともいえる新たなCXの時代をリードするためには、全社的に統合された知識基盤と連携し、自律的に活動可能なAIが必要不可欠ということがわかった。そこで、当社は『コンテクスチュアルインテリジェンス』に注目すべきだと考えている。これこそがCXを新たなフェーズに導く成功の鍵であり、企業の競争力の源泉となることがレポートからも明らかになっている」と話す。

日本のCXリーダーが実感するAI投資効果と5つの主要トレンド

レポートでは、過去1年間におけるカスタマーサービス向けAI投資全体について、日本のCX(カスタマーエクスペリエンス、顧客体験)リーダーの71%(グローバルは90%)が「投資対効果を実感している」と回答し、以下の5つのトレンドが浮き彫りになったという。レポートの解説は、Zendesk CXアドバイザリーの望月智行氏が行った。

  • Zendesk CXアドバイザリーの望月智行氏

    Zendesk CXアドバイザリーの望月智行氏

  1. メモリーリッチAIへの投資が真のパーソナライズを実現する鍵に

  2. AI搭載のセルフサービス型サポートが消費者の即時解決ニーズを拡大

  3. マルチモーダルサポートでチャネルをまたぐ体験をひとつに

  4. プロンプトベース分析が切り拓くAI時代のCX指標と意思決定

  5. AIの判断理由と透明性に対する消費者の要求の高まり

トレンド1:メモリーリッチAIへの投資が真のパーソナライズを実現する鍵に

メモリーリッチAIとは、チャネルなどをまたいで文脈を保持し、過去の行動や対応のタイミングを記憶することで、継続性と関連性を維持した顧客対応を実現し、パーソナライゼーションの水準を引き上げること。

消費者は「途中から自然に再開できる」サービスを求めており、81%(日本:67%)が最初から説明し直すことなく、やり取りしたいと考えているほか、74%(日本:69%)の消費者が同じ情報を繰り返し伝えることにストレスを感じている。

現在では、AIが自分との過去のやり取りを分析できるようになっており、67%(日本:61%)の消費者がパーソナライズされたサービスを期待している。また、CXリーダーの85%(日本:73%)がパーソナライズされたカスタマージャーニーを構築するうえで、メモリーリッチAIは不可欠だと考えており、日本の数値はグローバル平均を下回るものの、同様の傾向を示しているとのこと。

  • トレンド1における日本の状況

    トレンド1における日本の状況

トレンド2:AI搭載のセルフサービス型サポートが消費者の即時解決ニーズを拡大

CXリーダーの85%(日本:81%)は、初回の問い合わせで問題を解決できない企業から顧客は離れていくと回答しており、消費者の86%(日本:82%)も「商品やサービスを選ぶ際に、迅速な対応と正確な問題解決をしてくれる企業を優先する」と回答。

また、AIの普及を背景に74%(日本:71%)の消費者が24時間年中無休のサポートを期待するようになっており、日本と世界平均の全体的な傾向は概ね一致しているが、サポート担当者への「人と話すことと比べて、迅速な問題解決を重視する消費者はどのくらい多いか」という質問では、日本では1.8倍となり、世界平均の1.3倍を上回った。

この結果から、日本のサポート環境では、顧客から求められるスピードへのプレッシャーが強いことが示されているという。

  • トレンド2における日本の状況

    トレンド2における日本の状況

トレンド3:マルチモーダルサポートでチャネルをまたぐ体験をひとつに

マルチモーダル(テキスト・画像・音声・動画など複数の異なる種類のデータを統合して処理する技術)サポートに関しては、消費者の76%(日本:64%)が、「テキスト、画像、動画を同じスレッドでやり取りできる企業を選びたい」と回答し、やり取りの内容に応じて最適な手段でコミュニケーションができることを期待している。

同技術の背景では、AIがフォーマットをまたいだ一貫性と効率性を支えていることに加え、日本のサポート担当者の76%がマルチモーダルAIエージェントを「サービス分野における次のAIの波」と認識しており、世界平均(69%)を上回っている。

一方、CXリーダーで「マルチモーダルAIが、テキストのみでは表現しづらい複雑な診断を人間に代わって判断し、自動化できる」と考える割合は、日本では64%にとどまり、世界平均の83%を下回っている。こうした傾向は特に音声AIに顕著であり、音声AIがCXを進化させる段階に達していると考える消費者は日本では58%にとどまり、世界平均83%と比べて大きな差があると指摘。

しかし、音声チャネルの利用率自体は日本では51%と高く、グローバル平均の34%を上回っており、日本の消費者に過去に利用した音声AIの性能が十分でなかった印象が残っていることに加え、日本企業では従来のサポート手段を廃止しないままデジタル化を進めてきた経緯が影響していると考えられるとのこと。

  • トレンド2における日本の状況

    トレンド3における日本の状況

トレンド4:プロンプトベース分析が切り拓くAI時代のCX指標と意思決定

現在、経営層はリアルタイムでインサイトや次の行動につながる情報にアクセスできるようになり、顧客ニーズと社内目標の双方に沿った、迅速でデータに基づく意思決定が可能になっている。ただし、この傾向は日本では全体的にやや弱い結果となっている。

プロンプトベース分析によって「数秒でインサイトを得られる」と回答したリーダーは82%(日本:64%)、「従業員が自らデータを検索できることで意思決定が民主化される」と考える割合は81%(日本:61%)、「AIがすでにデータと分析の改善に寄与している」とする回答は87%(日本:68%)となっている。

また、世界平均では86%のCXリーダーが今後1年以内にプロンプト分析のハブを本番稼働させる予定と回答しているのに対し、日本では58%にとどまっている。これは、日本のカスタマーサポート部門ではアナリスト人材が比較的少なく、分析結果を意思決定に直接結びつける運用が一般的ではないことが影響していると推測している。

  • トレンド4におけるグローバルと日本の比較

    トレンド4におけるグローバルと日本の比較

トレンド5:AIの判断理由と透明性に対する消費者の要求の高まり

昨今の消費者は自動化された判断に対して明確な説明を求めており、AIワークフローに透明性を組み込む企業ほど、信頼とロイヤルティを高めているという。95%(日本:92%)の消費者が「AIによる判断には根拠が必要」と回答し、CXリーダーの80%(日本:75%)も今後2年以内に顧客向けAIには透明性が必須になると考えている。

しかし、日本ではAIの透明性が求められている点はグローバルと共通しているものの「AIが判断理由を示すことが非常に重要/ミッションクリティカルである」と評価するCXリーダーは33%にとどまり、グローバルの65%を大きく下回っている。

まだ日本では、重要な業務判断をAIに全面的に委ねる段階には至っておらず、理想像としての必要性は認識されている一方で、実務レベルでの本格的な実装はこれからであることを示唆している。

  • トレンド5において日本企業は、AIが理由を示すことが重要であると評価するのはグローバルと比べて低い

    トレンド5において日本企業は、AIが理由を示すことが重要であると評価するのはグローバルと比べて低い

望月氏は5つのトレンドを振り返り「AIの業務への活用状況やリーダー層の理解などは、日本と海外ではギャップが存在することが調査では明らかになった。ビジネスや業務を慎重に進めているからこそ、先進的な取り組みやテクノロジーの活用などに対してギャップが生じていると考えられる。しかし、AIをいかに活用して、人間が有意義に働く時間を生み出していくのかということを日常的に考えながら、AIとともに業務を進めていかなければ時代の波を乗りこなすことができなくなりつつある。これまで以上に短いサイクルでの改善をAIを駆使して、どのように実行していくのかを想定しつつビジネスや業務を動かしていくことが求められている」と提言していた。