サイボウズが開発・運営するノーコード業務アプリ作成ツール「kintone」は、より便利に使用できるよう、AIとの連携を推進している。その取り組みの一つとして、エンジニア(開発者)向けのAI機能も実装が進んでいる。
本稿では、サイボウズが2025年10月に開催した年次イベント「Cybozu Days 2025」の中から、kintone MCPサーバやDify(ディフィ)マーケットプレイスのkintoneプラグインなど、エンジニア向けのAI機能について紹介されたトークセッションの様子をレポートする。
kintoneやGaroon MCPサーバの活用で生成AIとの連携を実現
まずは、kintoneや法人向けグループウェア「Garoon」において、JavaScript APIやREST APIの開発を手掛ける開発本部の池田朋哉氏が、kintone MCPサーバとGaroon MCPサーバの概要について紹介し、具体的なデモを披露した。
MCP(Model Context Protocol)とは、2024年11月にAnthropicが発表した標準規格。生成AIやAIエージェントが外部サービスと連携するためのプロトコルとして使われる。池田氏はMCPサーバをPC端末とその周辺機器に例えて、次のように説明した。
「PC端末はホストのClaudeやChatGPTに相当し、周辺機器はSlackやGmail、ローカルにあるデータに当てはまる。これらのデータをつなぐのがMCPというプロトコルで、その役割を担うのがMCPサーバである」
サイボウズは2025年8月にkintone MCPサーバの提供を開始、Claude DesktopなどMCPサーバに対応した生成AIツールと組み合わせることで、生成AIやコマンドラインからkintoneを操作できるようになる。これにより、例えば日報や月報の内容を要約するダッシュボードなど、任意のAI機能を作成可能だ。
AnthropicがMCPを発表して以降、LLM(Large Language Models:大規模言語モデル)と外部サービスを連携する手段として、MCPサーバがデファクトスタンダード(事実上の標準)になりつつある。
そうした中で、LLMや生成AIとkintoneが外部サービスと連携することで、従来では実現できなかったユースケースを実現できる期待が高まったことから、kintoneの新たな価値創出にもつながるとして、同社はkintone MCPサーバをリリースしたという。
なお、kintone MCPサーバはOSS(Open Source Software)として公開しているため、コードベースをフォークして自社の要件に合わせてソースコードを変更したり、サイボウズに対してプルリクエストを送ったりできる。
池田氏はデモとして、kintoneにある営業部の案件管理アプリの内容から受注レコードを絞り込み、グラフとして可視化する様子を披露した。
最初にkintone MCPサーバと連携したClaude Desktopから、チャット形式で案件管理アプリの情報を取得する。次に、「2025年の受注レコードを取得してグラフ化して」のように指示を出すと、AIがkintone内のレコードから見事にグラフを生成した。
また、Garoonもkintoneと同様に、MCPサーバを提供している。認証やアクセス方法についても同程度のサポートを提供しているという。そこで、同氏はGaroon MCPサーバとkintone MCPサーバを組み合わせて、Garoonスケジュールにある営業部の商談の予定を調べてkintoneアプリにレコードを登録するデモを披露した。
Claude Desktopに「今週の営業部メンバーの訪問や商談の情報を調べて、kintone営業部スペースの活動報告アプリに、各メンバー分のレコードを作成して」と入力すると、AIがGaroonのスケジュール情報を取得してkintoneに反映されていた。
池田氏は今後の予定について、「引き続きtools(機能群)の拡充を進める。ローカルで動作させるMCPサーバに加えて、リモートで利用してもらえるMCPサーバの検討も進めたい」と示した。
kintoneカスタマイズ / プラグインの開発をサポートするJavaScript API
池田氏は続けて、AIモデルJavaScript APIの提供についても解説した。同社はkintoneのカスタマイズやプラグインの開発に利用できるJavaScript APIとして、「生成AIを利用できるJavaScript API」の提供に向けた準備を進めているそうだ。
kintoneカスタマイズやプラグインの開発者に馴染みのあるインタフェースとして提供することで、生成AIを組み込む作業のハードルを下げ、kintoneを用いたデータ活用の加速を支援する狙いがあるという。
現在開発中のインタフェースでは、temperatureやmaxTokensなどLLM利用時の一般的なパラメータの指定をサポートする予定。ストリーミングレスポンスでテキストを返却する。
AIモデルJavaScript APIを利用することで、例えばkintoneの議事録要約プラグインなどが作れるようになる。議事録を格納するアプリにこのプラグインを搭載すれば、AIが議事録を自動で要約するAIアプリとして活用できる可能性があるとのことだ。
ノーコードAIアプリ開発の「Dify」ともkintoneは連携可能に
続いて、プラグインやソリューションの企画と開発を担うAPIエコシステム本部のMAX氏が、Difyマーケットプレイスにおけるkintoneプラグインの活用について紹介した。Difyとは、ノーコード・ローコードでAIを活用したデータ分析やチャット、ワークフロー構築などが可能なサービスである。クラウド版とオンプレミス版が提供されている。
サイボウズでは2025年11月に、Difyのマーケットプレイスにkintoneと連携できるプラグインを公開した。これにより、kintoneに蓄積されたデータをDifyが参照し、AIを活用した業務改善が実現できるようになった。
国内でも複数の企業がDifyの活用を進めていること、AIや外部サービスとの連携によりkintoneがさらに便利になると見込めること、AIエコシステムやソリューション開発の選択肢を拡大したいことといった理由から、同社はDifyマーケットプレイスにおけるkintoneプラグインの提供を開始した。
kintoneプラグインを使うことで、レコード(1つ)の取得・更新・追加と、複数レコードの取得が可能となる。接続方法はドメインURL、APIトークン、アプリIDのほか、アクションに応じてレコードIDやレコードオブジェクトに対応する。
Difyにおけるkintoneプラグインのユースケースとして、kintoneのレコードとAIを活用した問い合わせチャットボットの作成や、議事録のAI翻訳などが考えられる。その他、外部サービスとの連携により、メール受信時に内容をAI翻訳してkintoneに保存する業務アプリや、kintone内の問い合わせ履歴を外部サービスにナレッジとして保存する業務アプリなども実現できるという。
OneDriveなどの外部サービスに保存されている請求書に対し、AI-OCRで文字データに変換し、kintoneアプリのレコードに文字データを保存する、といった使い方が期待できるとのことだ。
Cybozu Days限定サービス「歩き方プランナー」にもkintoneのAI連携が活躍
最後に、パートナー企業や顧客の技術支援を行うSC(システムコンサルティング)本部の山本泰弘氏が、Cybozu Daysで見るべきブースを来場者の興味に合わせておすすめする「Cybozu Daysの歩き方プランナー」(以下、歩き方プランナー)について紹介した。
140以上のパートナー企業がブースを出展したCybozu Daysでは、「どこから見ようかな」と迷ってしまう人をサポートするために、興味や関心を入力するとAIがおすすめのブースを選定してくれる歩き方プランナーアプリが提供された。
このアプリは、来場者向けの専用フォームに入力された情報と、パートナー各社のブース情報を参照し、AIがおすすめのプランをPDFとして来場者に送信する仕組みだ。
下図は歩き方プランナーのシステム構成図。来場者が入力する情報はアールスリーインスティテュートのgusuku Everysiteで、企業ブースの情報はトヨクモのFormBridge kViewerで、それぞれ取得する。これらの情報はkintoneに新規レコードとして登録され、Microsoft Azure上でPDFが生成される。最後に、Twilio SendGridでメールが送信される。
このうち、gusuku Everysiteを用いて入力フォームを構築したのは、エンジニアではなくマーケティング部門のメンバーだという。
山本氏は歩き方プランナー開発時の工夫として、「AIはコンテキストの前半部分を取得しやすいので、ブースの偏りが生じないように、ブース情報をシャッフルしてからLLMに渡すようにした。また、フリーテキストの情報も参照し、さまざまなブースが選ばれるよう実装した」と語っていた。
歩き方プランナーアプリが出力するPDFのレイアウトは、AIによって複数のパターンが生成されるそうだ。これは、生成AIがいつも同じ出力をするわけではないという、再現性の低さを逆手に取った工夫とのことだ。何度かAIにリクエストを送ると、毎回違ったレイアウトが楽しめる。
トークセッションのモデレーターを務めた、マーケティング戦略部 部長の山田明日香氏は「エンジニアの皆さんが、問い合わせフォームの自動回答などにAIを活用したいと思ったときなどに、ぜひ本日紹介した取り組みを参考にしてもらえたら」と呼びかけ、セッションを締めくくった。

















