旅客機内から、温室効果ガスなどの大気成分を自動観測する実証を始めると、ANAホールディングスなどが発表した。全日空グループの国内線に搭載すれば日本列島を網羅的に観測できる。既に、航路上の大気を直接取り込む手法による“線”の観測例があるのに対し、リモートセンシング(遠隔観測)による地表の“面”の観測が特徴で、定期旅客便で世界初という。
同社は2020年以降、旅客機内から大気成分を観測する技術の研究を、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で「GOBLEU(ゴーブルー)」と称し進めてきた。温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」などの原理を応用し、温室効果ガスの吸収による光の減衰を捉える。機内から窓越しに観測するが、これまでは観測の都度、装置を持ち込み、客席を使ってきた。
昨年11月、新たにボーイング737型1機を改修し、乗客から見えない位置で自動観測できるようにした。今年3月にはさらに1機を改修予定で、今後も需要に応じ改修機体を増やす。独自の手法について特許を申請している。
いぶきなどは、高度600キロあまりを南北に回って広範囲を捉え、地表の同じ場所は3日ごとに観測する。これに対し旅客機は同10キロほどを飛び、1機あたり1日4便ほど運航する。各路線が都市間を結ぶため、都市ごとの大気を頻繁かつ詳細に観測できるという。衛星と旅客機の特徴を併せて活用することで、高精度の観測網の構築を目指す。都市域の温室効果ガス排出削減の検討や効果の評価に役立つデータを提供する。
旅客機を使った大気観測では、日本航空や気象庁気象研究所などが1993年から取り組む「CONTRAIL(コントレイル)」が先行している。ルフトハンザドイツ航空などが参画する欧州主導の例もある。いずれも外気を直接取り込む手法のため、観測は上空の航路上に限られるが、温暖化予測などに役立っているという。
これに対し、GOBLEUでは飛行機の進行方向左側の斜め下、地表での幅50キロにわたり面的に観測する。二酸化炭素や二酸化窒素などを捉え、各地の詳しい排出量や森林による吸収量が分かる。分解能は機体に近い手前で100メートル、遠方で数キロ。観測データは企業への販売も目指す。
ANAホールディングス事業推進部の松本紋子氏は昨年12月16日の会見で「(CONTRAILなどの)上空大気の直接採取はシミュレーションに役立つ。GOBLEUの取り組みはそれとは異なるデータを取得するもので、いずれも重要だ」と説明した。JAXA衛星利用運用センターの須藤洋志ミッションマネージャは「両者は相互補完できる。例えばリモートセンシングと直接観測の結果を比較したり、組み合わせたりすることで、知見がさらに高まっていく」とした。
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