
2026年は丙午にあたる。60年に一度巡る干支であり、節目の年として語られることも多い。象徴的な意味合いはさておき、テクノロジーの進化、地政学的緊張、人口構造の変化などを踏まえれば、企業経営を取り巻く環境が大きな転換点に差しかかっていることは疑いようがない。新年を迎えるにあたり、経営の「次」をどう考えるかが、これまで以上に問われている。
仕事柄、次世代の経営者候補と呼ばれる人材と、ディスカッションや対話をする機会が多い。研修の場に立ち会うことも少なくない。
候補となるのは、多くの場合、10年後に会社の舵取りを担う世代である。現経営者が講演をし、自身の経験や判断の背景を語る。そうした機会は重要だが、注意すべき点もあるように思う。
それは、候補者たちが実際に経営者となる時、会社の規模や商圏、競争環境がどうなっているかという視点だ。10年後も、企業は今と同じ大きさ、同じ市場で事業を行っているだろうか。
仮に事業規模が数倍、あるいは10倍になっていれば、現在の経営者が担っている役割は、将来においては部門長や本部長クラスの役割に相当する可能性もある。
加えて、AI(人工知能)の位置づけも大きく変わっているだろう。AIは単なる効率化の手段ではなく、意思決定や業務遂行を担う存在として、組織に組み込まれている可能性が高い。
人とAIの役割分担を前提とした組織設計が、経営者の重要な仕事になる。こうした前提に立てば、次世代経営者の育成は、過去や現在の延長線上だけで行うべきものではないとも言える。
現経営者がまだ経験していない領域、いわば「未踏の地」を担ってもらうという視点が必要になる。10倍規模の経営を想定するのであれば、10倍規模の経営者との対話を通じて、思考のスケールを体感させる機会を設けることが重要だ。
さらに、10年先の社会や市場を先取りしているスタートアップ経営者との対話も欠かせない。それらは、小さな組織であっても、将来を前提にした意思決定を日常的に行っている。
既存の枠組みにとらわれない視点に触れることは、次世代経営者にとって有効な刺激となる。
経営者にとって人材育成が重要であることは変わらない。しかし、未来の市場を描くのと同時に、未来の人材像を描けているだろうか。いや、描ききれないことを理解した上で、人材育成に取り組んでいるだろうか。
次世代経営者を育てるとは、次の時代の企業経営を引き受ける覚悟そのものだ。新年にあたり、改めてその問いと向き合いたい。