米Microsoftは1月13日(現地時間)、AIインフラ投資が急拡大する中で「Community-First AI Infrastructure(コミュニティ優先のAIインフラ)」を掲げ、電力・水・雇用・税収・AI教育と地域支援に関する5つのコミットメントを公表した。コミットメントは住民の電気料金や水資源への負担を避けつつ、雇用・税収・教育機会の拡充で地域メリットを最大化する狙いだ。取り組みは2026年初頭に米ワシントンD.C.で始動し、同年前半には本格化する見込みだ。
Microsoftが提示した5つのコミットメント
昨今、急拡大するAIインフラは電気料金の上昇や水資源の逼ぱくなどが懸念されており、住民にコストを転嫁せず、地域が得る利益が負担を上回る設計が不可欠だという。そこで、同社はこうした課題に対して責任を持って向き合う姿勢を明確化した。以下が同社が掲げた5つのコメットメント。
1. データセンターの電力需要が住民の電気料金を引き上げないよう、必要な費用は自ら負担する。
2. 水使用を最小限に抑え、使用量を上回る水を地域に還元する。
3. 地域住民に雇用を創出する。
4. 地域の病院・学校・公園・図書館を支える税収の増加に貢献する。
5. 地域のAI教育と非営利団体への投資を通じ、コミュニティを強化する。
電力
電力では費用の自己負担、供給拡大、効率化、政策推進の4本を柱とした。住民料金に負担を転嫁しないための料金設計を電力会社・公共委員会に求め、必要な送電・変電設備の増強費用を自ら負担する。また、米中西部の卸電力市場であるMISO(Midcontinent Independent System Operator)で、同社は7.9GW(ギガワット)の新規電源導入を契約しており、現行消費量の2倍超を上回る規模で供給拡大を後押しするという。
さらに、AIやソフト/ハードの最適化でデータセンターの電力効率を継続的に改善し、クリーン電源拡大・送電網近代化・許認可迅速化といった公共政策の推進にも取り組む。すでに、米ワイオミング州やウィスコンシン州では、大口需要家向け料金体系の導入支援により、住民へのコスト転嫁を防ぐモデルが広がり始めているとのこと。
水
水については、2030年までにWUE(Water Usage Effectiveness:水使用効率)を40%改善し、環境条件に応じた空冷・水冷の切り替え、閉ループ冷却の採用で水消費を削減するという。ワシントン州クインシーでは、地下水への負荷を避けるため、市と協働してQuincy Water Reuse Utility(再生水利用施設)を整備し、飲料水ではなく再生水を冷却に使用することに成功。将来のシステム改善も同社が全額負担している。
地域住民が同社の水使用状況を把握できるよう、各データセンターの水使用量と補給状況を定期的に公表することに加え、再生水・産業用再利用水の活用や、透明性基準の明確化、許認可の迅速化などを政府に働きかける考えだ。
雇用
雇用に関しては、NABTU(全米建設労働組合)と新たな枠組みで建設の徒弟制度・技能訓練を強化し、地元労働力の育成・採用を促進。
運用人材はDatacenter Academyを通じて養成し、バージニア州ボイドトンでは、実機を用いた「Critical Environment Training Lab」で電気・機械・冷却の実地研修を提供し、地域のIT・設備運用人材を輩出する。同社は職業教育・徒弟制度の整備を政府に働きかけ、AIインフラ需要に見合う持続的な人材パイプラインの構築を目指す。
税収
税収では、データセンターの固定資産税は地域自治体にとって大きな財源となるため、土地取得時・建設時に税優遇を求めずに「正当な税金を全額支払う」という姿勢を貫き、地域の公共サービスを支援する。
ワシントン州クインシーはデータセンターの進出以降、貧困率が約半減、郡税収は約3倍に増加し、新病院の開設や高校設備の刷新など、公共サービスの質が向上したことから、このモデルを全米のデータセンター地域へ広げ、病院・学校・公園・図書館といったコミュニティの基盤に持続的な財源をもたらす方針だ。
地域支援
地域の子どもから成人、図書館、学校、小規模企業、そして非営利団体まで、包括的なAI教育・支援を提供する。具体的には初等・中等教育から大学まで地域の学校にAIリテラシー教育を無償提供、図書館職員に対するAI研修や、AI学習ハブの整備、無料のAI認定講座を提供する。
また、中小企業に対しては商工会議所と連携し、AIトレーニングと助成でアップスキリングを支援し、非営利団体には社員ボランティア・寄付のマッチング制度に加え、各地域にMicrosoftのリエゾン担当を置き、現場と継続的に協働する。
今後、5つのコミットメントは負担の最小化と便益の最大化を同時に追求するための実装計画であり、2026年前半の米国内展開を皮切りに、各国の事情・文化に合わせた形で広がっていく見込みだ。
