業務用マッサージチェアでトップシェア 日本メディック・城田裕之の「逆転人生」

市場は小さくても ニッチな業務用すれば…

「あの時の苦しさや悔しさは今も忘れることがない。でも、歯を食いしばって頑張った結果、こうした素晴らしい賞をもらうことができた」

 こう語るのは、日本メディック会長の城田裕之氏。

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 マッサージチェア(管理医療機器)などの健康器具の開発を手掛ける日本メディック。倒産のどん底から這い上がり、起死回生を期して、業務用のマッサージチェアに特化して会社を再生した。現在は累計2万台超の導入実績を誇るトップメーカーへと成長。東京商工会議所が主催する2024年度の『勇気ある経営大賞』総合部門で大賞を受賞。果敢に挑戦する中小企業として顕彰された。

 では、同社の再生はどのようにして成し遂げられたのか。

 1959年生まれの城田氏は現在66歳。20代の時にサラリーマンとして、日本メディックの前身となるトレヴィに入社。コイン式マッサージチェアを販売する代理店の営業マンとして実績を積み、2006年に47歳で社長に就任した。

「マッサージチェアを仕入れるのが大変で、メーカーさんに24回払いでお願いしますと。分割払いにすると、月々の支払いが1台数千円で済む。そこから入ってくるお金で仕入れ資金を捻出でき、そこからどんどん事業を拡大していった」(城田氏)

 ただ、リーマンショックを経て、2010年夏に事態は暗転。仕入れ先メーカーの筆頭株主が投資ファンドに変更。それまで分割だった仕入れ代金を一括で支払うよう通達された。

 親交のあった経営者もいなくなり、もう分割払いは認めてもらえない。資金繰りに窮した城田氏は、2011年1月に民事再生法の適用を申請。倒産の憂き目にあった。

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 この時、城田氏が思ったのは「どんなに嘆いても、いつかは立ち直らなければならない。何万台と販売しなければならない家庭用ではなく、市場は小さくてもニッチな業務用に特化し、独自のメンテナンスやサービスをつくっていくことができれば、お客様から選んでいただけるのではないか」。

 代理店のままでは厳しいことを痛感した城田氏が考えたのは、大手メーカーが家庭用を主軸にする中、当時日本には無かった業務用に特化したマッサージチェアを自らつくること。

 それまでの販売経験から、不特定多数の顧客の使用に耐えうる高耐久性があり、家庭では体験できない大型で豪華なマッサージチェアをつくろう。利用者に「試してみたい」と思わせるものができれば、売れるのではないかと考えたのである。

 ただ、マッサージチェアをつくれるのは医療機器の製造販売許可を持っている企業だけ。城田氏が何社と交渉しても、倒産したばかりで、何の実績もない会社と取引をするのは難しいと断られる日々。そんな中、唯一救いの手を差し伸べてくれたのが、長野県の相生電子だった。

 それでも、相生電子もマッサージチェアの製造は初めて。相生電子の担当者と共に中国の工場を訪ね歩き、「いろいろ試しているうちに背中が痛くなり、最終的には背中の皮が擦り切れてしまった」(城田氏)と苦笑する。

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 家庭用では破れないような背中のシートも、業務用で使えば簡単に破れてしまう。そこで家庭用では一般的に1000時間と言われる耐久テストを、同社では2500時間実施。高い耐久性を追求した他、消耗しやすい部品も簡単に交換できるような設計にし、メンテナンス費用を低減できるようにした。

 また、城田氏が現場視察した際、女性の利用客がタオルで顔を隠しているシーンに遭遇。そこで新型機ではフェイスカバーをつけ、利用者が顔を見られても恥ずかしい思いをしないような工夫もしている。

 こうした努力の甲斐あって、2012年3月に初代『あんま王』を発売して以来、銭湯や健康ランドがメインだった設置場所も、ショッピングセンターや空港、フィットネスクラブ、高齢者施設などに拡大。コロナ禍以降はオフィス回帰の流れを受け、職場の休憩室に設置されるなど、今では累計2万台超の導入実績を誇るトップメーカーへと成長している。

「進取果敢」の精神で諦めず!

 製造元が相生電子、営業は日本メディックが担当という形で再生を果たした同社。その後、相生電子が事業承継の問題を抱えていたこともあり、2021年にアイオイメディックホールディングス(HD)を設立。相生電子、日本メディックをそれぞれ完全子会社化している。

 城田氏本人が言うように、まさに「ジェットコースターのような人生」。それでも「市場はまだまだ可能性がある。マッサージチェアも昔の中高年が使う按摩器というイメージではなく、最近は結構若い女性も使ってくれている。今後も相生電子に助けていただいた時のご恩を一生忘れず、挑戦していきたい」。

 座右の銘は「進取果敢」。倒産しても諦めず、どん底から這い上がった男・城田氏の挑戦は今後も続く。

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