
経済安全保障の観点から 薬の在り方を考えるべき!
─ 25年は原材料高や薬価の引き下げなどがあった製薬業界をアステラス製薬会長の安川健司さんはどう分析しますか。
安川 1つ目は、経済安全保障の観点から生産体制を整えなければ、薬の安定供給を確保することができないということです。
2つ目は薬価が低すぎて製薬会社にとって日本市場の魅力がなくなり、「ドラッグ・ロス(海外で承認されている薬が日本で承認されていない状態)」が生まれているということです。
この2つの問題にしっかりと向き合いながら、国民皆保険制度の在り方を変えなければなりません。これまでのように社会保障費を縮小するだけの政策では限界があります。それができなければ26年の製薬業界はあまり良い方向に向かうとは思えません。
─ 覚悟が求められます。
安川 ええ。例えば、先発品の特許が切れた後に販売される後発医薬品の使用割合は現在、8割以上ですが、そのうち国内で製造された原材料のみで生産される医薬品の比率は約3割です。残りの約7割では海外に依存しています。仮に他国が機嫌を損ねてシャッターを降ろせば、日本の医療は持ちません。ですから、国内製造で完結できるくらいの薬価にしないといけません。
─ 国民皆保険の制度設計も考えねばなりませんね。
安川 そうです。国民健康保険法が起草・策定された1950年代と今とでは、国民の罹る病気も違えば、科学技術や医療技術も違います。しかも、人口構成も当時のピラミッド型が今は逆三角形です。
こうした前提の変化を踏まえると、このままでは公的医療保険制度そのものを持続的に支えることが難しく、時代に合わせた制度改革が必要です。しかし、社会保障費の増加を抑制するために薬価を引き下げ続けているという現状があるのです。
─ このままでは日本での新薬販売が難しくなりますね。
安川 ええ。日本の製薬会社は売上高の約20%を研究開発費に充てています。他の製造業の割合と比べ約4~5倍です。
─ 足元を見直さないといけませんね。25年は日本人のノーベル賞受賞で沸きました。
安川 はい、大変喜ばしいことです。ただ、大学の大きな使命の一つは、産業界が欲する人材を輩出することとも考えられます。産業界は技術革新のスピードが速く、求める人材も絶えず変化しています。しかし、大学教育の中身が変わらないままだと意味がありません。
製薬の分野であれば、従来の低分子医薬品だけではなく、今は抗体医薬や細胞医療、遺伝子治療のような新しい技術が登場しています。医療制度や大学教育などトータルで今後の日本の方向性を考えなければならないと思います。
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