デロイト トーマツは1月9日、オンラインでAI規制における日本・海外の最新動向と、同社が開発したAIエージェントを活用した規制対応支援サービス強化に関する記者説明会を開催した。

AI規制の最新動向と企業が直面するリスク

まず、デロイト トーマツ グループ シニアマネジャーの巻口歩翔氏がAI規制をめぐる日本・海外の最新動向と、企業が陥りやすい注意点について解説した。

同氏はAIの性質がデータの特徴を学習する、データが存在するあらゆる領域で活用が可能という特徴から多様なリスクを孕むと指摘。同社ではAIリスクの全体像として「安全性・セキュリティ」「頑健性・信頼性」「アカウンタビリティ」「社会的責任」「プライバシー」「透明性・説明可能性」「公平・公正」の7つを示している。

昨今では、ChatGPTなどに代表される対話型AIサービスの登場により、企業ではビジネスの成長に向けたAI活用の推進のため、AIによる事故や倫理的問題などAIリスクへの対策としてAIガバナンスの体制構築を検討・実施する企業が増加している。

こうした流れの中でAIを取り巻く環境は法規制やガイドラインなど、常に急速に変化しているためAIガバナンスの体制を構築・運用するだけでなく、継続的に改善を行うアジャイルガバナンスを実践することが重要だという。

  • AIガバナンスの体制を構築・運用するだけでなく、継続的に改善を行うアジャイルガバナンスを実践することが重要だという

    AIガバナンスの体制を構築・運用するだけでなく、継続的に改善を行うアジャイルガバナンスを実践することが重要だという

巻口氏は「環境・リスク分析からゴールを設定し、システムデザインに落とし込んで運用し、評価を行い、改善していくサイクルを高速に回していくことがポイントになる。これらは単一部門で実施するのではなく、CoE(Center of Excellence)やリスク管理部門、業務部門をはじめ、組織におけるさまざまなステークホルダーを巻き込みながらガバナンスを整備していくことが求められる」との見解を示す。

しかし、アジャイルガバナンスを実践していくには、各国における規制の動向を常にモニタリングしつつアップデートしていく必要があるものの、規制方針の違いや規制動向の不確実性、関連範囲の広さから困難になっているという。こうしたことから、生成AIやAIエージェントなどの技術を最大限に活用し、サイクルを回すことが有効とのことだ。

  • Aアジャイルガバナンスを実践するうえでの課題

    アジャイルガバナンスを実践するうえでの課題

AIエージェントによる規制調査の自動化と支援サービスの強化

そこで、同社ではAIサービスの関連規制調査を自動化するAIエージェントを開発し、規制対応支援サービスを強化。デロイト トーマツ グループ マネージングディレクターの山本優樹氏は「AIガバナンスの実施事項における規制やガイドライン調査に対して、先進的な技術を使うことで実施できるようにするサービス」と説明する。

同サービスはAIエージェントがインターネット上にあるAI規制の最新情報を自律的に収集・分析し、同社専門家の評価・フィードバックを組み合わせることで、クライアント企業が提供している、もしくは提供を検討しているAI技術や関連サービスに対する規制情報の網羅的な整理と高精度なリスク評価・対応策の提案を行う。あくまでも顧客に提供するサービスではなく、自社で活用することで顧客に対し、現実的な提案をサポートしていくサービスとなる。

  • AIエージェントによるAI関連規制調査の流れ

    AIエージェントによるAI関連規制調査の流れ

AIエージェントにAI関連サービスの機能や内容を入力するだけで、関連する規制対応事項や難易度評価、対応策の提案を自動で取得でき、同社の専門家によるレビューを経て、企業は精度の高いAI規制調査結果や対応策を取得できるという。インターネット上にある各国・地域の規制情報を網羅的に収集するため、サービス適用地域別のリスク評価も可能としている。

  • AIエージェント利用中のイメージ

    AIエージェント利用中のイメージ

独自AIエージェントの仕組みと高精度な規制評価の実現

サービスで活用するAIエージェントは、同社におけるAIガバナンス関連業務の知見を反映したアルゴリズムを搭載。回答の生成には、100回以上にわたる自律的な規制情報の取得、対応すべき事項の特定とレビュー実行のプロセスを経て、対象サービスの機能要素や適用地域などを総合的に考慮し、膨大なAI規制情報の中から関連性の高い規制情報を適切に抽出・整理する。

また、規制間の優先順位付けや重複情報の排除なども行うことで、的確な調査結果を導き出すことが可能。これにより、30分程度で取得可能な規制情報レポート結果の時点で、同社の専門家が従来1週間程度の時間をかけて実施していた評価結果と比較し、約8割相当の精度を実現している。さらに、専門家によるフィードバックログをAIエージェントに与えることで、頻出機能に対する回答精度の強化など、継続的な精度改善も見込まれるという。

  • 出力結果のイメージ

    出力結果のイメージ

ただ、山本氏は「AIエージェントいえども正確性を100%担保することはできないため、人間が正確性を担保するため、当社の専門家が評価を行い、評価した結果をフィードバックログとして蓄積することが重要となる。過去の調査で間違いがあるものであれば、処理の段階で改善のプロンプトになる」と話す。

自動車、医療、IT、製造など幅広い業界におけるAI規制への対応を支援するほか、今後はAI規制に限らず、同社の幅広い専門家と連携し、事業活動に関連する規制対応を支援していく方針だ。