米OpenAIがオラクルやソフトバンクグループとともに、米国で巨大なAIデータセンターの建設を開始するなど、2025年はAIとセットでデータセンターが報じられることが多かった。
国内でも、KDDIとソフトバンクがシャープの堺工場跡地にデータセンターを建設している(参考記事:ソフトバンク、シャープと売買契約を締結‐堺工場を大規模AIデータセンターへ、KDDI、「大阪堺データセンター」を2026年1月下旬稼働開始)。
また、NTT-MEはコンテナ型データセンター事業への参入を発表し、データセンター北海道の石狩エリアにコンテナ型データセンターを建設するなど、データセンター市場は活況を呈している。
ガートナージャパン ディレクター アナリスト 山本琢磨氏に、データセンター市場について2025年のトピックと2026年の予測を伺った。
データセンターは足の長いビジネス、急には変わらない
冒頭で、AI需要に伴ってデータセンターの建設が増えていると述べたが、山本氏は「データセンターを建設するには、大きなエネルギーと広い土地が必要。したがって、データセンター事業は足の長いビジネスといえ、急に変わるものではない」と話す。
メディアはハイパースケーラーによるデータセンター関連の大きな発表に飛びつきがちだが、実情は違うようだ。「データセンター事業は投資もリターンも大きいが、負担も大きい。よって、然るべき投資はしつつ、需要を見ながら進めるビジネス」(山本氏)
昨今、データセンターにおける高発熱化・高密度化への対応への対策として、液体冷却が注目を集めているが、山本氏は「国内のデータセンター事業者においてあまり動きはなかったが、意識が上向いてきた」と話す。グローバルのデータセンター事業者の中には液体冷却への対応が済んでいるところもあり、「日本の事業者も準備していく必要がある」とのことだ。
また、北海道は再生可能エネルギーに積極的であり、石狩、千歳、苫小牧でデータセンターの建設が続いている。これらは空港から近いという優位性もある。北海道のデータセンター事業について、山本氏は次のように説明する。
「涼しい北海道はデータセンターの冷却において有利であり、遅延が許される処理には適している。インターネットを介して人が問い合わせの結果を待つといった処理なら、東京や大阪から北海道のデータセンターにアクセスしても体感的な応答に問題はない可能性が高い。ただし、通信先がシステムであるなど、処理時間の要求が厳しい場合は地方のデータセンターは選択肢から外れるかもしれない」
2026年の予測、大きな変化はないがAIの破壊力は大きい
2026年、データセンターの観点で大きく変わるものはないが、継続してAIの活用は進むことが考えられるという。山本氏は「AIの開発や利用のトレンドによっては、コンピューティングリソースがより膨大になる可能性がある」と話す。
また現在、「生成AIをはじめとするAI利用は活発であり、この傾向は継続して進んでいくと考えられるため、新しいデータセンターの建設とそこでの液体冷却の導入は進むと考えられる」と、山本氏は予測する。
そして、「人手不足もあり、さまざまなAIの活用は継続して拡大するため、そのためのコンピューティングリソースの大規模化にともないデータセンターの数や規模の拡大も継続すると考えられる」と山本氏は言う。
加えて、大量の電力を消費し、CO2を排出するデータセンターは省エネルギーや環境負荷の低減も求められる。データセンターに対する環境サステナビリティへの対応は国によってバラツキがあるが、EUがリードしているという。例えば、欧州のクラウドインフラサービスとデータセンターの業界関係者と業界団体が、「Climate Neutral Data Centre Pact」において、再生可能エネルギーの利用やエネルギー効率について目標値を定めている。この指標がグローバル全体に広がってくる可能性があるそうだ。
そのほか、セキュリティ、ソブリン、レスポンスといった観点から、データセンター環境を自社に置いてローカルで使うというニーズが増えてくることも考えられる。そうしたニーズに応えるべく、オラクルやAmazon Web Servicesは自社のデータセンターのインフラを顧客のデータセンターに提供するソリューションを提供している。
AIを活用する企業、何を基準にデータセンターを選ぶべきか
大規模なAI基盤を作る場合、大規模なコンピューティングリソースが必要になるため、データセンターの利用を検討する企業が出てくる可能性がある。その際、AI活用という視点でデータセンターを検討する必要がある。
山本氏は、「データセンター事業者は多くあるが、新技術、特にAI対応への投資意欲が二極化している点に注意が必要」と話す。最新技術に積極的に投資している企業とそうではない企業に分かれるという。
山本氏は、データセンター事業者のAI対応の観点で、高電力供給、液体冷却、環境サステナビリティの準備を終えている、もしくはそれらのロードマップを持っている必要があると語る。
つまり、AI導入の目的でデータセンターを検討する際は、事業者がこうしたデータセンターにおけるAIレディネスを確認することが重要となるわけだ。
AI活用のムーブメントは拡大している。しかし、現状、多くの企業にとってクラウド上でAI開発を行うのが効率的であると考えられる。AI対応されているデータセンターの利用はコスト増を伴うため、企業は費用対効果も含め、AI活用の戦略を策定する必要があるだろう。
