
2025年の訪日外国人旅行客数が初めて4000万人を突破する勢いを見せる中、急速な日中関係の悪化により好調なインバウンド(訪日客)に暗雲が漂っている。過去には沖縄県・尖閣諸島を巡る問題で中国人旅行客が減少。政治問題の長期化に伴い、需要が伸び悩めば、国内消費の冷え込みにもつながりかねない。
首相・高市早苗氏の台湾有事に関する発言を受け、中国は11月14日、日本への渡航を自粛する呼び掛けを実施。香港でも市民に注意喚起がなされた。中国航空大手が日本行き航空券を手数料無料で払い戻す対応を取るなど影響はすぐに表面化した。
インバウンドで中国の存在感は別格だ。25年10月までの外国人旅行者数は前年同期比17.7%増の3554万7200人で、国・地域別のトップは中国の820万3100人。香港からは201万8600人が訪れた。
1人当たり旅行支出額は欧州旅行者の方が高額だが、韓国や台湾、米国も含めた上位5カ国・地域の旅行者数と消費額で他を引き離している。小売関係者は「実際に中国旅行者が減少すれば売り上げに響く」と憂慮する。1~9月のインバウンド消費総額6兆9156億円のうち中国・香港の合計で3割を占めた。
国土交通相の金子恭之氏は11月18日の閣議後会見で「中国訪日客は圧倒的に多いが、それ以外の国からの観光客数も増えている。訪日客需要を喚起するような政策をとりながら中国観光客に対して注視したい」と述べた。同氏はさらに「一喜一憂し、大変だ、大変だと大慌てすることではない」とも語ったが、先行きは不透明だ。
金子恭之・国土交通相
一方、インバウンド絡みでは、地域住民の暮らしに悪影響をもたらすオーバーツーリズム(観光公害)の問題がかねてから指摘されている。「中国人だけの問題ではないが、観光客が減ると、オーバーツーリズムが改善するかもしれない」(関係者)との声も。
中国マネー頼みの事業者からはすでに悲鳴が出ているが、観光立国の在り方を議論する機会にもなりそうだ。
