株価が1年で10倍のキオクシアHD 筆頭株主の米ベインが一部株式を売却へ

米国政府の意向を踏まえ、米国に新工場建設を検討?

 

 半導体大手・キオクシアホールディングスの業績が上向いている。

2025年7-9月期連結決算(国際会計基準)は、一時的な損益を調整した非GAAP営業利益が872億円と、4-6月期に比べ419億円のプラスとなった。データの長期記憶に用いるNAND型フラッシュメモリーの単価が同一製品ベースではスマートフォン、パソコン(PC)、データセンター(DC)向けのいずれも上昇。為替の円安も追い風となった。

 社長の早坂伸夫氏は「フラッシュメモリーは生成AI(人工知能)の成長を牽引するキーデバイスだ。日々の事業を通してAI需要の高まりを強く実感している」と自信を示す。

 株式市場もキオクシアを”AI銘柄”とみなしており、11月11日には同社の株価が年初来高値の1万4405円を記録。昨年12月18日には1440円の最安値をつけており、1年で約10倍伸長したことになる。

 こうした状況を踏まえ、筆頭株主である米投資ファンド・ベインキャピタルも”出口戦略”を意識しているようだ。11月下旬、同社がキオクシア株の持ち分の1割強に当たる3600万株を売却することが分かった。ただ、実質的な筆頭株主の地位は保つ見通しで、企業価値のさらなる向上は可能と判断しているとみられる。

 他方、キオクシアが”望まぬ設備投資”を強いられ、経営のリスクになるとの見方が出ている。半導体の供給網を強化したい米国政府の意向を踏まえ、同社が協業関係にある米サンディスクと共同で、米国にNAND工場を設立する検討を進めているとの観測が浮上したためだ。

 トランプ米大統領が米国内に工場をつくる企業に半導体関税の負担軽減措置を設ける方針を示しているという点で、キオクシアにもメリットはあるものの、AIバブルが弾けた際、過剰な設備が業績に打撃を及ぼすことは避けられない。

 早坂氏は「規律ある設備投資を継続し、収益性を着実に向上させる」と語る。言葉通りに堅実経営を貫くか、それとも大局的な観点で思い切った施策に踏み切るのかに注目だ。

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